著者
鈴木 暁世
出版者
日本近代文学会
雑誌
日本近代文学 (ISSN:05493749)
巻号頁・発行日
vol.92, pp.1-16, 2015 (Released:2016-08-02)

郡虎彦は、一九一一年に「鉄輪」を『スバル』に発表した後、一九一三年に改作して『白樺』に掲載し、さらに一九一七年のロンドン上演のために自己翻訳した。本稿は、郡が「鉄輪」をどのように改作・自己翻訳したのかという問題を、ロンドンにおける「鉄輪」上演に関わる資料を用いて考察することを目的としている。「鉄輪」を上演したパイオニア・プレイアーズと演出家イーディス・クレイグは女性参政権運動と関わっており、同作は「精神的な柔術」として評価された。「鉄輪」上演と評価の背景には、英国における日本へのイメージと女性参政権運動と柔術の結びつきがあったことを指摘し、郡が「鉄輪」を改作・自己翻訳していく過程が、当時のイギリスの社会運動や思潮と響きあっていたことを明らかにしたい。
著者
青木 拓也 廣江 圭史 鈴木 暁 平賀 篤 上出 直人
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0934, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】脳卒中のリハビリテーションにおいて,患者教育は科学的にも意義が認められている(日本脳卒中学会,2015)。実際,脳卒中患者に対して教育的介入を行うことで,患者の生活の質が向上することが認められている(Karla, et al., 2004)。しかし,脳卒中患者に対する教育的介入の方法論は明確にされていない点がある。本研究の目的は,脳卒中患者に対する教育的介入の具体的方法論を構築するための基礎情報を得るため,自宅退院前の脳卒中患者が抱く在宅生活への考えや不安について,質的研究手法を用いて明らかにすることとした。【方法】対象は,回復期病棟入院中の脳卒中患者男性5名,女性4名とした。自宅退院直前に,自宅退院に際して抱いている生活への考え方や不安について半構造化面接を行い,面接内容をICレコーダーで録音した。録音内容は逐語録としてテキスト化しテキストマイニングを行った。具体的な方法として,まず分析用ソフトウェアKH coderにてテキストを単語に分解し,各単語の出現頻度を分析した。次に,各単語の出現頻度から階層的クラスター分析を行い,単語をクラスターに分類した。クラスターに分類した単語について,その単語が含まれる文脈からクラスターの名称と内容を,共同研究者と協議しながら決定した。なお,患者が抱く不安や考えには,性差が生じる可能性が高いため,分析は男女別に実施した。さらに,患者の基礎情報として,Function Independence Measure(FIM)を調査した。【結果】対象者の年齢は男性65.2±13.2歳,女性60.3±16.3歳,調査時FIMは男性118.8±12.9点,女性114.0±14.2点であった。クラスター分析の結果から,在宅生活への考え方や不安について,男性では「退院後の社会復帰に対する不安」,「退院後の生活習慣の見直し」,「障がいとともに生活をしていくという心構え」,「活動範囲の拡大への不安」,「入院生活からの解放感」,の5つのクラスターが得られた。一方女性では,「家族の協力に対する不安」,「入院生活からの解放感と不安」,「活動範囲の拡大への不安」,「食習慣の見直し」,の4つのクラスターが得られた。【結論】男女共通の考えや不安として,制限された入院生活から解放されることへの期待感や活動範囲が病院内から院外へ広がることへの不安が認められた。男性固有の考えや不安としては,社会復帰へは不安を持つ一方で,生活習慣の見直しや生活の心構えなど,前向きな考えを持つことが認められた。一方女性では,家族の協力に対する不安や食生活などの生活変化による自覚と不安など,これからの生活への不安を男性よりも抱えていた。脳卒中患者への教育介入では,患者が抱く生活への不安や考えを明確化したうえで,それらに応じた内容を実施することが重要である。
著者
鈴木 暁子 惠 明子 安村 明
出版者
熊本大学大学院社会文化科学教育部
雑誌
熊本大学社会文化研究 (ISSN:1348530X)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.65-74, 2020-03-24

Heuristics used in human decision-making are usually instinctually determined and can result in cognitive bias. People with developmental disorders are known to be particularly vulnerable to such cognitive biases. However, the relationship between these biases and developmental disorders in children has not yet been sufficiently established. Here, we created scenario tests with cognitive bias designed for children and sought to clarify the relationship between cognitive bias and autistic traits in children. Biased scenario tests designed for children were created and 25 6th graders (standard classes only) were asked to respond to scenario questions. We then examined the relationship between their responses and the Autism-Spectrum Quotient (AQ). Results showed that there was a relationship between specific cognitive biases and autistic traits. Specifically, total number of correct responses on the biased scenario test and severity of communication skill impairment were negatively correlated in both males and females, total number of correct responses on the biased scenario test and severity of social skill impairment were negatively correlated in males, and total number of correct responses cognitive reflection and imagination were positively correlated in females. These results show that autistic traits can be quantitatively evaluated using the cognitive bias scenarios we created.
著者
鈴木 暁世 橋本 順光
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011-04-28

20世紀初頭の英語圏で上演された日本を題材にした戯曲の中でも、菊池寛と郡虎彦の作品は、日本語で執筆された作品が英語に翻訳・上演される過程での、文化・言語圏の移動による変容が見られる。アイルランド、イギリス、日本における資料調査と専門家との研究情報交換を行い、新資料を発掘・整理した。その研究成果を公開するために、研究分担者と共にシンポジウム及びワークショップを計三回開催したほか、国際学術集会や国際ワークショップを含む国内外の学会で研究発表を行った。それらの研究発表における議論の結果を『日本近代文学』『比較文学』等査読付学会誌で発表し、著書『越境する想像力 日本近代文学とアイルランド』にまとめた。