著者
駒田 陽子 廣瀬 一浩 白川 修一郎
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.87-94, 2002
被引用文献数
2

妊娠随伴睡眠障害は睡眠障害国際分類によれば,妊娠中に生じる不眠あるいは過眠と定義され,一般に過眠で始まり重度の不眠へ進展することが多いとされる.本研究では,妊婦の睡眠習慣,睡眠健康や睡眠障害の可能性についての実態を把握することを目的として,研究内容を十分に説明し同意の得られた,妊娠初期,中期,末期の妊婦364名(29.7±4.2歳)および同一地域に居住する非妊婦194名(34.0±4.2歳)を対象とした探索的調査を行った.睡眠習慣に関しては,就床時刻には妊婦と非妊婦で差はみられなかったが,起床時刻は妊婦の方が,どの妊娠期においても非妊婦に比べて有意に遅延していた.また睡眠時間も同様に妊婦で有意に延長していた.睡眠健康に関しては,妊婦は睡眠維持が悪化しており入眠困難性を有していた.むずむず脚症候群・周期性四肢運動障害の可能性のある者は妊娠中期で発生頻度が9.0%と高かったが,海外での報告と比べかなりの低値であった.睡眠時歯ぎしりは妊娠初期で発生頻度が高く,夜間下肢こむらがえりは妊娠各期で発生頻度が対照群に比して高かった.悪阻の症状が重度の者は睡眠維持,入眠困難性,起床困難性が悪化していた.本研究から,心理的不安の強い妊娠初期に,悪阻などにより睡眠が障害され,また妊娠期を通じてむずむず脚症候群や周期性四肢運動障害など入眠を障害する睡眠随伴疾患が発生している可能性のあることが判明した.