著者
福榮 太郎 福榮 みか 石束 嘉和
出版者
一般社団法人 日本総合病院精神医学会
雑誌
総合病院精神医学 (ISSN:09155872)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.55-62, 2013-01-15 (Released:2016-08-31)
参考文献数
21

Japanese Adult Reading Test(JART)は,認知機能障害のある被験者の病前の推定IQを測定する標準化された認知機能検査である。しかし臨床現場でJARTを使用していると,認知機能障害の進行とともにJARTの算出する推定IQも低下する印象を受ける。そこで本研究では,認知機能障害の程度と短縮版であるJART25の値との関連について検討する。またJART25と認知機能検査の下位項目について検討を行い,JART25と関連のある認知機能について検討を行う。もの忘れ外来を受診した828名を対象に,MMSEおよびHDS-RとJARTの関連を検討したところ,MMSEおよびHDS-Rの低値とJARTの低値に関連がみられた。またMMSE,HDS-Rの下位項目とJARTとの関連を検討した。その結果,JART25は,見当識,記憶,理解,遂行機能といった認知機能とは関連が弱く,注意,言語機能,数概念といった認知機能と強い関連を示した。以上の結果から,JART25の解釈に関しては一定の注意が必要であることが示唆された。
著者
石束 嘉和 碓井 章 石束 嘉和
出版者
山梨医科大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

月経時に出現する睡眠障害の詳細を調べた。平成8年度は主に実態調査を中心とした研究を行い、月経に関連して多くの女性が睡眠の変動を自覚していることが明らかになった。またその際に、月経に関連して、主に過眠症状が出現することが明らかになり、月経随伴睡眠障害は月経随伴「過眠」障害と言い得ることがわかった。平成9年度と10年度は、主にこの月経随伴「過眠」障害の対処法の検討を行った。この睡眠障害を呈するものは主に妊娠と関係する年齢層の女性であることから、催奇形性を懸念することが多い。そこで薬物療法以外の対処法の可能性について検討した。平成9年度は高照度光照射療法の有効性についての検討を行った。方法としては、日常的に月経時に眠気が増強する以外は問題のない成人女性を対象とし、高照度光を、就床前の2時間、あるいは起床後の1時間半に照射した。非月経時、月経時(光なし)、月経時(就床前の光)、月経時(起床後の光)の4つの時期で、諸検査の結果を比較した。測定したいずれの指標でも劇的な変化は見られなかったが、OSA睡眠調査票で途中覚醒を反映する因子が、非月経時に比較して月経(光なし)で悪化し、光照射で改善した。また、24時間中の睡眠時間が、非月経時に比較して月経(光なし)で延長し、光照射で非月経時のレベルに戻った。しかもその変化は夜間睡眠でではなく、昼間睡眠でのものだった。このようなことから、高照度光照射療法は、月経随伴睡眠障害の過眠症状に多少なりとも効果があると結論した。平成10年度は、同じく過眠症状に対する日中の仮眠の効果について検討した。方法は、先の高照度光と同様の被検者に、日中30分の仮眠をとらせた。非月経時、月経時(仮眠なし)、月経時(仮眠あり)の3つの時期で諸検査の結果を比較した。その結果、仮眠をとったあとの自覚的眠気尺度が仮眠をとらないときに比較して低下することがわかり、月経時の眠気に対しては積極的に仮眠をとることが推奨される。