著者
大岡 貴史 拝野 俊之 弘中 祥司 向井 美恵
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.88-94, 2008-04-30 (Released:2018-03-30)
参考文献数
28
被引用文献数
17

口腔機能は,摂食・嚥下機能や構音機能など,生活の質の維持・向上,コミュニケーションをはじめとした社会生活を営むうえで重要な役割を担っている.本研究では,在宅高齢者の機能減退に伴う摂食・嚥下機能および構音機能の低下に対して,機能低下の進行を予防するために高齢者自身が行える口腔機能向上における新たな介護予防システムを構築することを目的に,口腔体操が口腔機能の向上に与える効果を検討した.特定高齢者および要支援高齢者計23名(男性4名,女性19名,平均年齢77.9±6.5歳)を対象として,器具を用いない口腔体操および口腔ケアを含む口腔機能向上プログラムを自宅にて約3ヵ月継続して実施した.この介入前後に摂食・嚥下機能および構音機能の改善効果について評価を行い,口腔機能の変化について検討を行った.その結果,口唇閉鎖力および音節交互反復運動の回数に著明な改善がみられた.また,反復唾液嚥下テスト(RSST)においては,介入前の評価で3回の嚥下が行えなかった対象者で明らかな嚥下回数の向上が認められ,初回嚥下までの時間も有意に短縮された.これらより,特定高齢者および要支援高齢者が自宅にて日常的に行える簡便な口腔体操の実践により,摂食・嚥下機能,構音機能をはじめとした口腔機能の向上が得られる可能性が示唆された.
著者
山口 麻子 日山 邦枝 上杉 雄大 野末 真司 丸岡 靖史 佐藤 裕二 弘中 祥司 高橋 浩二
出版者
一般社団法人 日本老年歯科医学会
雑誌
老年歯科医学 (ISSN:09143866)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.8-16, 2017-06-30 (Released:2017-07-26)
参考文献数
24
被引用文献数
1

日本の肺炎による死亡者の97.3%,窒息死亡者の85.7%を65歳以上が占め,肺炎の多くは誤嚥の関与ありとする報告がある。今回,病識欠如が認められる入院患者に対して多職種による患者教育,栄養管理,口腔機能管理を行った結果,口腔と食の環境を整える意識の生起,窒息・誤嚥性肺炎の再発予防に成果が得られた症例を経験したので報告する。患者は急性期病棟入院患者,65歳男性,現病歴は双極性感情障害,アルコール性精神病,パン食の可否,誤嚥・窒息のリスク評価を目的として歯科を受診した。全身所見,口腔内所見,摂食嚥下機能,精神状態,服用薬剤を総合的に判断し,口腔衛生管理の意識低下による咀嚼障害,精神状態と薬原性錐体外路症状による摂食嚥下障害と診断した。パン食禁止,誤嚥・窒息ハイリスクとした。食形態は全粥とゼリー菜食,水分はトロミ付とした。患者に一口量の減量,詰め込み食べの禁止を指導,医師と看護師に注意喚起を依頼した。診断から1カ月後,夕食を詰まらせて窒息,2日後に発熱,内科にて誤嚥性肺炎と診断された。精神状態の改善に伴い患者教育,歯科治療に協力的になり自己管理意識の生起,口腔衛生管理,口腔機能の改善を得た。慢性期病棟で療養中の現在,詰め込み食べはあるが窒息・誤嚥性肺炎の再発はない。口腔と食の環境を整える意識の生起,窒息・誤嚥性肺炎の再発予防には多職種による継続的な支援が重要と考える。
著者
向井 美惠 弘中 祥司
出版者
昭和大学・昭和歯学会
雑誌
Dental Medicine Research (ISSN:18820719)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.31-35, 2008-03-31 (Released:2012-08-20)
参考文献数
13

障害児・者に対する摂食・嚥下機能障害の評価方法には, 成人・高齢患者と異なった対応を行わなければならないことが多くみられる.VF検査やVE検査などは共通しているが, 「指示」嚥下が不可能であることが多い.したがって, 数多くある評価方法の中から複数を組み合わせて診断をより正確に行う必要である.また, 発達期にある患児の場合にはその後の成長を踏まえて歯列不正の予防をも視野に入れた対応が必要となる.今後の歯科医師が行う摂食・嚥下障害患児への対応の一つとして重要であると思われる.