- 著者
-
杜 雨軒
張 宇星
- 出版者
- 経営哲学学会
- 雑誌
- 経営哲学 (ISSN:18843476)
- 巻号頁・発行日
- vol.17, no.2, pp.17-41, 2020-10-31 (Released:2021-06-08)
- 参考文献数
- 43
- 被引用文献数
-
1
「CSR・消費者」を手がかりとして行われてきたこれまでの先行研究では、様々な分野の優れた研究者が実りある研究成果を収めている。しかも近年では、科学計量学や計算機科学が進むにつれ、マクロ的視点に立ってCSR、消費者それぞれをキーワードとする計量書誌学的分析が年々増えてきた。そこで本研究は「CSR・消費者」両方に着眼し、可視化ツールCiteSpaceの活用によって1997年から2019年に至るまで当該分野における英語論文情報を俯瞰・抽出し、972本のサンプル文献における研究者や、研究機関、国家、論文自体、キーワード・名詞句間の共起表現を時間・空間的および内容的な知識マップによって捉えてみた。その上、キーワード・名詞句にバーストを検出し、サンプル文献のうち151本の高頻度被引用論文を掲載年度別・内容分類別的に解読・整理したことにより、該当分野における国内外の研究トピックス、萌芽的論点の発見とその変遷の可視化を成し遂げた。結果的には、「CSR・消費者」に関するテーマを取り扱っているのは、Pérezやdel Bosque、Peloza、Wang等の研究者、およびカンタブリア大学やペンシルベニア州立大学、フロリダ大学等の研究機関であり、主にスペイン、アメリカ、中国等に集中していることが分かった。そして共起分析やバースト検知によって選別された中心性の高い頻出語としては、Business Ethics、Stakeholder Theory、Citizenship、Product Response等の研究トピックスがあげられ、Credibility、Green、Communication、Disclosure等が当分野の先端的課題となっていることが判明した。また、当分野の研究は従来の財・サービス及びブランド、慈善活動等社会貢献についての考察から、ステークホルダー全体に及ぶCSRの諸側面についての横断的考察へと移行しつつあることが伺えた。一方、ここ数年、企業マネジメント自体、および消費者の認知的・心理的・行動的メカニズムに着眼する量的考察が逐年増えてきたことも分かった。伝統的な文献研究法とは異なり、本研究は文献レビューを大規模学術論文データに基づく計量書誌学的な頻出分析・ワード分析と結びつけ、「CSR・消費者」研究の有用性と客観性を考えようとしたものであり、これまでにない新規性と学問的意義を持っている。