著者
渡邉 英徳 庭田 杏珠
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.317-323, 2019-06-24 (Released:2019-08-30)
参考文献数
12

本稿では、デジタルアーカイブ/社会に“ストック”されていた白黒写真をAI技術でカラー化し、ソーシャルメディア/実空間に“フロー”を生成する活動について報告する。被写体が備えていたはずの色彩を可視化することによって、白黒写真の凍りついた印象が解かされ、鑑賞者は、写し込まれているできごとをイメージしやすくなる。このことは、過去のできごとと現在の日常との心理的な距離を近づけ、対話を誘発する。こうして生成された“フロー”においては、活発なコミュニケーションが創発し、情報の価値が高められる。この方法は、貴重な資料とできごとの記憶を、未来に継承するための一助となり得る。
著者
大井 将生 渡邉 英徳
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.7, no.3, pp.e24-e32, 2023 (Released:2023-07-03)
参考文献数
34

本稿ではデジタルアーカイブ資料の活用を促進する二次利用条件のあり方を提示する。まず、ジャパンサーチとADEACを対象として資料の二次利用条件を調査する。その結果、それぞれ38.9%、57.9%のアーカイブで活用の阻害要因となる条件が設定されていることが確認された。この課題をふまえ、資料公開機関と教員による教材化ワークショップを実践する。その結果、酒田市の事例では、学校利用が制限なく可能な条件に変更された。以上より、1. 多くのアーカイブで活用の阻害要因となる二次利用条件が設定されていること、2. 資料公開機関とユーザが活用を基盤とした連携を行うことで資料のオープン化を推進できる可能性が示唆された。
著者
渡邉 英徳
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.12-16, 2020-01-01 (Released:2020-01-01)

私たちは,社会に“ストック”されている1964年大会の資料を“フロー”化するデジタルアース・コンテンツ「東京五輪アーカイブ1964-2020」を制作した。本稿で説明した情報デザインによって,ばらばらの粒子のように“ストック”され,固化していたデータが結び付けられ,液体のように一体となって流れる“フロー”となる。この“フロー”をさまざまなデバイスを通して生み出すことにより,資料についてのコミュニケーションが創発し,情報の価値が高まる。その結果として,55年前・1年後の五輪が,ひとつの流れのなかに位置付けられ,過去に学び・未来に活かす「継承」の機運を生み出せると,私たちは考えている。
著者
原田 真喜子 高田 百合奈 太田 裕介 蜂谷 聖未 佐々木 遥子 朴 婉寧 松田 曜子 山田 泰久 渡邉 英徳
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.J66-J74, 2015 (Released:2015-01-26)
参考文献数
15

本研究の目的は,災害資料の集合的記憶化に関与するアーカイブコミュニティの拡大である.既存のディジタルアーカイブコンテンツは,資料の掲載をアーカイブコンテンツ内に制限している.そのため,ユーザの資料閲覧の機会を低下させ,アーカイブコミュニティの拡大を妨げていた.そこで,著者らはソーシャルメディアを用いて,資料の共有から伝播に至るユーザアクティビティを活性化させるアーカイブ発信を行った.著者らの提案する発信手法は,アーカイブ資料をソーシャルメディアTwitter内に直接掲載することで,ソーシャルメディアとアーカイブの境をなくし,ユーザ間の情報共有と資料閲覧を同時に行うことを可能にした.実装例による情報伝播について分析した結果,ユーザアクティビティの連鎖的な伝播によって,コミュニティの参加者数は増加し続けていた.このことから,実装例によってアーカイブコミュニティの形成が促されることがわかった.本稿では,実装例の解説を通して著者らのアーカイブの発信手法について述べる.
著者
原田 真喜子 渡邉 英徳
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.J78-J86, 2014 (Released:2014-01-24)
参考文献数
21
被引用文献数
1

The purpose of this study is to show ordinary people the meaning of words on the web. To achieve this purpose, we use cross-search results. The keywords extracted from the sentences constitute nodes. The results are visualized as a tree, the color of which reflects the emotions of the twitter results. To show the effectiveness of our work, we analyze the web traffic of our site, users' comments, a questionnaire about interface design and the results of an experiment comparing our approach with the existing searching way. From these studies, we believe that people will find our work useful as a way to show relationships between words in different linguistic corpora on the web.
著者
大井 将生 宮田 諭志 大野 健人 大向 一輝 渡邉 英徳
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.e1-e9, 2023 (Released:2022-11-25)
参考文献数
36

本研究の目的は、探究学習における生徒の「問い」と「資料」の接続を支援する学習モデルを開発することである。その手法として、生徒自身の「問い」を起点とした「キュレーション学習」を提案する。また、分野横断型検索プラットフォーム「ジャパンサーチ」の検索機能と協働キュレーション機能を「キュレーション学習」における協働的な資料収集と「問い」の構造化を支援する空間として活用する。この手法を用いて、中学校において継続的な授業実践を行ない、生徒のリテラシー変容を分析する。その結果、学習成果物に対する評価点が有意に上昇し、生徒の「問い」に基づいて「資料」を収集する力や「資料」をもとに考察する力が向上したことが示唆された。このことから、提案手法の効果が確認され、探究学習における生徒の「問い」と「資料」の接続を支援する学習モデルを開発することができたと考える。
著者
渡邉 英徳
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.157-162, 2009-06-30 (Released:2017-02-01)
参考文献数
15

We propose a new design methodology for 3Di (3D Internet). The designer should pay attention to 1. the visibility, 2. direct accessibility, and 3. spatialization of the target object. We have applied this methodology for producing and designing plenty of architectural and artistic space in 3Di. This paper explains the concept and concrete design methodology thorough applied artworks.
著者
渡邉 英徳 小林 正明
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.250-255, 2020-07-01 (Released:2020-08-24)
参考文献数
6

私たちは、社会に“ストック”されている1964年大会の資料を“フロー”化するコンテンツ「東京五輪アーカイブ1964~2020」を制作した。デジタルアースを用いて過去と現在の風景を重ね合わせることによって、ばらばらの粒子のように“ストック”され、固化していたデータが結び付けられ、液体のように一体となって流れる“フロー”となる。この“フロー”をさまざまなデバイスを通して生み出すことにより、資料についてのコミュニケーションが創発し、情報の価値が高まる。その結果として、56年前・1年後の五輪が、ひとつの流れのなかに位置付けられ、過去に学び・未来に活かす「継承」の機運を生み出せると、私たちは考えている。
著者
渡邉 英徳
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.1211-1216, 2013-11-15

筆者らは,戦史や災害をテーマとしたディジタルアーカイブズ・シリーズを作成してきた.これらのアーカイブズは,多元的な資料を一元化し,俯瞰する視点をユーザに対して提供する.ユーザは,複数の資料を互いに関連付けながら捉え,できごとの実相について,より深く知ることができる.さらに筆者らはこの手法を応用し,震災ビッグデータを利用した災害状況の可視化を行った.これは現代の災害記録を未来に残すアーカイブズ構築の試みでもある.本稿では,筆者らが作成したコンテンツのうち「沖縄平和学習アーカイブ」と「放射性ヨウ素シミュレーションのマッシュアップ」を取り上げ,それらのビジュアライゼーション手法について述べる.
著者
有本 昂平 渡邉 英徳
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.2-7, 2018-01-31 (Released:2018-04-27)
参考文献数
12

本論文では3次元デジタルアース上に取引クラスタをグラフを用いて可視化し、描画するエッジの始点と終点の高度を変化させることで階層を表現した。またタイムスライダを用いて時系列で存在する取引クラスタの可視化を動的なアプリケーションとして構築し、各エッジの取引量の変化に応じて描画するエッジの色を変化させた。本提案手法によって取引クラスタにおける始点と終点のノードの位置情報、各ノードの階層、時系列の4つの要素を同時に把握することが可能となり、同一条件で抽出した取引クラスタは時系列で変化することを把握できたことから、頂点企業の戦略により企業の取引が刻一刻と変化していることがわかった。したがって、本提案手法はデータ分析スキルの高低に関わらず企業間取引ネットワークから取引構造や時系列変化についての知見を得ることが可能な手法である。
著者
渡邉 英徳
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.138-142, 2022-08-01 (Released:2022-10-05)
参考文献数
6

ここまでに解説してきた「Beyond Book」は、2017年から2021年に掛けて活動した、東京大学大学院情報学環における「DNP学術電子コンテンツ研究寄付講座」の成果である。この講座は、2022年度より「講談社・メディアドゥ新しい本寄付講座」としてリブートした。新講座では、これまでに得られた成果を活かしつつ、未来社会における“新たな読書体験”を提供する「新しい本」を開発し、社会実装することを目指す。そこで、「SFプロトタイピング」「アート思考」「デザイン思考」「ロジックモデル」「センスメイキング」など、ボトムアップかつバックキャスティング的な手法を取り入れた活動を開始している。本稿では「新しい本」プロジェクトの狙いと取り入れる手法・現在の状況について説明する。
著者
大井 将生 渡邉 英徳
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.4, pp.352-359, 2020-10-01 (Released:2020-11-16)
参考文献数
12

情報化の進展を背景に、学習指導要領では調査や諸資料から様々な情報を調べてまとめる技能や、多面的・多角的に考察する力の育成が教育目標として記されている。この実現のためにMLA資料の活用が推奨されているが、その学習デザインについては十分に議論されていない。そこで本研究では、ジャパンサーチを活用した探究的キュレーション授業を開発し、小学校・中学校・高等学校で授業実践を行なった。これにより、児童生徒が自ら立てた問いに基づいて学びを展開することで多面的・多角的な視座を育む契機を創出する学習デザインの一例を示すことができた。一方で実践を通して、ジャパンサーチの教育活用を進展する上での課題も明らかになった。
著者
渡邉 英徳 坂田 晃一 北原 和也 鳥巣 智行 大瀬良 亮 阿久津 由美 中丸 由貴 草野 史興
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.497-505, 2011-09-30 (Released:2017-02-01)
参考文献数
18
被引用文献数
4

We defined the approval requirements and established the design method for information architecture "Plural digital archives" that supplemented existing digital archives' weak point. A digital archive that urges multipronged, overall understanding about archived event can be achieved by this design method. And more, we produced an implementation example "Nagasaki Archive" and verified the validity of the design method through the analysis of behavior and comments of users and the access log of the website.
著者
田村 賢哉 秦 那実 井上 洋希 渡邉 英徳
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.370-375, 2018-10-01 (Released:2018-11-20)
参考文献数
14

「デジタルアーカイブ」の多様化により、これまで利用側であった非専門家である市民が積極的にアーカイブズに取り組む可能性を有している。そうした背景から本稿では、デジタルアーカイブにおける市民参加の新しいアプローチとして、ヒロシマ・アーカイブなどの「多元的デジタルアーカイブズ」の複数の活動の特徴を述べ、それらの有機的な制作環境の実態について言及した。そうした実践からデジタルアーカイブの社会に及ぼす影響について考察を行い、デジタルアーカイブの新しい研究領域として「参加型デジタルアーカイブズ」を述べている。
著者
渡邉 英徳
出版者
首都大学東京
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

研究成果により5つのデジタルアーカイブを公開し、査読付き雑誌掲載論文2編、受賞9件、学会発表14件などの成果を挙げた。また研究成果は沖縄県、長崎県の事業に採用され、朝日新聞社およびグーグルとの産学連携も行なっている。これらのことから、研究目的は達成されたと言える。
著者
大井 将生 渡邉 英徳
出版者
デジタルアーカイブ学会
雑誌
デジタルアーカイブ学会誌 (ISSN:24329762)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.207-210, 2020 (Released:2020-04-25)
参考文献数
4

新学習指要領では「多面的・多角的に考える力」「膨大な情報から必要なことを判断し、自ら問いを立てる力」等が重要であるとされ、そうした力を育むために図書館・博物館等の活用が推奨されている。しかし、図書館・博物館等の教育利用は深化していない。そこで本研究では、教育現場とMLAアーカイブ群の狭間にある問題を明らかにし、多面的・多角的な視座を育むためのデジタルアーカイブ資料群の教育利用を推進する学習環境をデザインする。そのための手法としてジャパンサーチを活用し、小・中・高校で授業実践を行い児童生徒の認識変容を分析する。ジャパンサーチの活用を通して、児童・生徒自らが探求的に資料を集め、複数の資料から問いを立てることで、多面的・多角的な考え方ができるようになると予想する。長期的には通年カリキュラムに合わせたジャパンサーチ活用実践を断続的に行い、教育に特化したメタデータを付与したアーカイブ構築を目指す。
著者
渡邉 英徳
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.157-162, 2009
参考文献数
15

We propose a new design methodology for 3Di (3D Internet). The designer should pay attention to 1. the visibility, 2. direct accessibility, and 3. spatialization of the target object. We have applied this methodology for producing and designing plenty of architectural and artistic space in 3Di. This paper explains the concept and concrete design methodology thorough applied artworks.
著者
有本 昂平 渡邉 英徳
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会誌 (ISSN:13426907)
巻号頁・発行日
vol.70, no.4, pp.J88-J93, 2016 (Released:2016-03-25)
参考文献数
8

本研究の目的は,国内企業の取引ネットワークの可視化である.そこで,取引ネットワークにおける階層ごとにアイコンの高度を段階的に変化させ,デジタルアース上にプロットする.さらに,地域内・地域間における取引をそれぞれ別の色で表現する.このビジュアライゼーションから,日本国内における企業間取引のあらましを読み取り,産業集積の度合を観察することができた.したがって,著者らの手法により,取引ネットワークの可視化ができることがわかった.