- 著者
-
張 耀丹
阿部 康久
- 出版者
- 日本都市地理学会
- 雑誌
- 都市地理学 (ISSN:18809499)
- 巻号頁・発行日
- vol.15, pp.152-162, 2020-03-15 (Released:2021-08-15)
- 参考文献数
- 24
日本国外に居住する中国人の個人投資家を対象としたインタビュー調査に基づいて,住宅購入の動機や購入する住宅の形態・購入地域について検討した.研究手法として日本で住宅を購入した中国人海外不動産投資家 21 人にインタビュー調査を実施した.調査対象者が日本の住宅を購入した動機や背景として,①他の国・地域と比較検討した上で日本での住宅購入を選択した「投資効率重視型」と,②最初から何らかの理由で日本に対して関心があり,日本の住宅に絞って購入を検討した「日本指向型」の2 つのパターンがみられる.また,調査対象者が購入した住宅の選定基準としては,賃貸収入の利回りや将来的な安定性といった資産価値を重視しながら住宅を選定した人が多いといえる.購入した住宅の類型として,資産価値が下がりにくいと考えられている中古マンションを選択した人が多く,賃貸収入を得て運用することを前提として住宅を購入した人が多いといえる.購入した地区の地理的な特徴として,中心市街地や商業施設への利便性が高い地域が好まれ,特に住宅の資産価値が高く,将来的にも資産価値を維持しやすいとみられる大阪市と東京都を中心に住宅を購入した調査対象者が多い.とりわけ,大都市の中でも,大阪市の住宅への投資が人気化している可能性がある.その理由として,「大阪市の知名度の高さ」と「将来の発展性への期待感」に加えて,「東京に比べると住宅価格が低い点」を評価して購入した点が指摘できる.