著者
杉田 隆 張 音実 高島 昌子
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.J77-J81, 2017 (Released:2017-08-31)
参考文献数
14
被引用文献数
4

ゲノム情報が大量に蓄積されてきた今日では,この情報を用いて真菌の新しい分類体系が再構築されつつある.加えて,新しい命名規約である“国際藻類・菌類・植物命名規約”が2013年1月1日に発効し,1F=1Nの作業も行われている.クリプトコックス症の起因菌であるCryptococcus neoformans とCryptococcus gattii は,それぞれ2菌種(C. neoformans, Cryptococcus deneoformans)と5菌種(C. gattii, Cryptococcus bacillisporus, Cryptococcus deuterogattii, Cryptococcus tetragattii, Cryptococcus decagattii)への再分類が提案されている.Trichosporon 属は5属に再分類され,トリコスポロン症の起因菌であるTrichosporon asahii はTrichosporon 属に,歴史的に重要なTrichosporon cutaneum はCutaneotrichosporon 属に移行した.
著者
張 音実
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.53, no.5, pp.472, 2017 (Released:2017-05-01)
参考文献数
3

ヒトの腸管,皮膚,口腔あるいは膣などの様々な部位には,多種多様な微生物(細菌と真菌)が常在している.これは“微生物叢(microbiota)”と呼ばれ,いわば微生物の集団社会である.この微生物叢は宿主と絶妙な相互作用を示しながら,宿主の健康維持や感染防御などに寄与している.しかしながら,微生物叢の構成バランスが破綻すると疾患へ進展することがある.例えば,炎症性腸疾患,大腸がん,尋常性乾癬,アトピー性皮膚炎,気管支喘息,糖尿病や歯周病では,患者と健常人ではその微生物叢は大きく異なることが示されている.乳がんは,乳管や小葉上皮から発生し,その発生には女性ホルモンであるエストロゲンが関与すると考えられているが,不明な点も多い.Urbaniakらはヒトの乳房組織にも微生物が存在し,乳がん患者と健常人では異なる微生物叢が形成されていることを発見した.これは,乳がんの発症には特定の微生物が関与している可能性を示唆するものである.本稿では,乳房組織の微生物叢と乳がん発症の関連性に関する論文を紹介する.なお,本稿は下記の文献に基づいて,その研究成果を紹介するものである.1) Muszer M. et al., Arch. Immunol. Ther. Exp., 63, 287-298(2015).2) Urbaniak C. et al., Appl. Environ. Microbiol.,82, 5039-5048(2016).3) Hieken T. J. et al., Sci. Rep., 6, 30751(2016).