著者
山口 真一 彌永 浩太郎 坂口 洋英
出版者
公益財団法人 情報通信学会
雑誌
情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.37-46, 2019 (Released:2019-07-22)
参考文献数
27

本研究では、インターネット上の口コミ投稿行動の分析を行う。分析の結果、口コミ投稿経験者は約32%にとどまった。また、回帰分析による属性検証では、投稿経験に対し、年齢が有意に負で、大卒・新聞購読・インターネット利用時間が有意に正となった。また、動機としては利他的な動機が多いという結果となった。さらに、虚偽の口コミについては、口コミ投稿経験者の約5.7%が経験しており、属性分析では年齢が有意に負で、既婚、男性が有意に正となった。また、投稿動機が「投稿自体が楽しいから」「見返りがあるから」等の利己的な人は、虚偽の口コミを投稿しやすいことが分かった。以上のことから、口コミを投稿している人はインターネット利用者の約3分の1に過ぎず、その口コミも、ある特定の属性を持った人々が投稿しやすい傾向がある。そして、虚偽の口コミは少なからずあり、特に、若い人、既婚者、男性を対象とするような製品・サービスではその傾向が強まるといえる。
著者
山口 真一 坂口 洋英 彌永 浩太郎 田中 辰雄
出版者
公益財団法人 情報通信学会
雑誌
情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.69-79, 2016 (Released:2017-02-06)
参考文献数
13

情報通信産業の新しいビジネスモデルとして、基本機能を無料で提供し、付加機能を有料で提供する、いわゆるフリーミアムがある。フリーミアムを採用しているサービスは急増しているが、特にその中でも、非定額型のデジタル財課金のビジネスモデルであるモバイルゲームは、高収益・高成長率を達成している。しかしその一方で、実証研究は少なく、ビジネスモデルの確立途上にある部分も多い。そこで本研究では、モバイルゲームのパネルデータを用いて実証分析を行い、消費者の支払行動と長期売上高の関係を統計的に検証する。推定の結果、前期の有料ユーザ 1 人当たりの平均支払額(ARPPU)は、今期の売上高に非線形で有意な影響を与えていた。また、その極大値は約 11,754 円であった。このことから、長期売上高最大化という観点からは、ARPPU が約 11,754 円になるようにイベントやガチャの頻度、アイテムの価格を調整することが最適であることが示唆された。また、フリーミアムを採用しているサービスの大半がマネタイズに失敗し、サービス終了となっている現在、非定額型フリーミアムは成功手法として着目されている。本研究の結果はモバイルゲーム以外にもいえる可能性がある。
著者
田中 辰雄 山口 真一 彌永 浩太郎
出版者
特定非営利活動法人 組織学会
雑誌
組織科学 (ISSN:02869713)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.47-56, 2019-03-20 (Released:2019-06-16)
参考文献数
13
被引用文献数
1

本研究ではフリーミアム型コンテンツ産業の例としてモバイルゲームをとりあげ,そこでは多数の製品を出す分散型と,一つの製品に集中する集中型の二つの戦略が存在することを示した.当たり外れの多いコンテンツ産業において一つの製品に集中する戦略は異例であり,ネットワーク効果が働くフリーミアムならではの新しい戦略と考えられる.
著者
坂口 洋英 山口 真一 彌永 浩太郎 田中 辰雄
出版者
公益財団法人 情報通信学会
雑誌
情報通信学会誌 (ISSN:02894513)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.143-153, 2017

<p>ネットワーク効果は情報通信産業の発展の重要なファクターであり、様々な研究がなされてきた。しかしながら、先行研究ではネットワークの大きさは財・サービスの総ユーザーとされており、ネットワークの構成ユーザーへの注目がない。そこで本研究では、ネットワーク効果がその構成ユーザーにより異なるあり方をする可能性に注目し、モバイルゲームを対象に有料ユーザー数と無料ユーザー数が支払額にそれぞれ別の影響をもたらすモデルを構築し、分析を行った。</p><p>分析の結果、有料ユーザー数が有意に支払額に正の影響をもたらし、有料ユーザーが1%増加すると支払額は0.06%増加することがわかった。一方、無料ユーザー数は影響を与えているとはいえない結果となった。このことから、ネットワーク効果はその構成ユーザーにより異なり、無料ユーザーのもつネットワーク効果は限定的であるという示唆が得られた。</p>