著者
清水 賢二 酒井 浩 木村 匡男 田後 裕之 髙橋 守正
出版者
一般社団法人 日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.495-502, 2020-08-15 (Released:2020-08-15)
参考文献数
13

要旨:聴覚失認とは,聴覚による言語や環境音の認知が困難になる状態であり,横側頭回や聴放線の損傷によって生じるとされている.今回,聴覚失認を呈した60歳代の症例を経験した.もともと社交的な本症例であったが,聞き取りの困難さから周囲との交流を避けるようになっていった.作業療法において読話を用いた視覚的代償戦略を用いることで,聴覚失認の症状自体は変化を得られないなかでもコミュニケーションの困難さを克服しだし,周囲との交流を取り戻し始めた.コミュニケーションの障害を言語機能障害ととらえず,生活障害としてとらえて,作業療法士も積極的に介入していく必要がある.
著者
村山 憲弘 前川 育央 後 裕之 芝田 隼次 宇田川 悦郎
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.176-182, 2012-05-20 (Released:2012-05-20)
参考文献数
22
被引用文献数
5 5

製鉄所から排出される製鋼スラグを原料に用いて,陰イオン交換体の一つである層状複水酸化物(Layered Double Hydroxide, LDH)の合成を行った.LDHの金属イオン源となる成分をスラグから溶解するために,スラグの塩酸浸出を行った.スラグ浸出液からさまざまなpHで共沈法により合成した生成物に対して,結晶構造,熱重量変化などの物性や化学組成を調べた.水溶液中に存在するAs(III),B,Cr(VI)およびSe(IV)に対する生成物の除去能を検討した.2.0 mol/dm3 HClを用いて2.5 g/100 cm3の固液比にてスラグを浸出するのが適当であった.スラグの塩酸浸出液から得られる生成物はMg–Al系LDHとCa–Al系LDHを含み,pH 11以下ではMg–Al系LDHが,pH 12以上ではMg–Al系LDHとCa–Al系LDHの混合物がそれぞれ生成した.合成pHの調整によって反応液中のMgとCaの沈殿率を制御することが,浸出液から合成されるLDHの種類を決めるための重要な因子である.LDHによる有害陰イオン種の除去率は,Cr(VI)>Se(IV)>As(III)>Bの順に大きく,Feを多く含むスラグ由来の生成物はAs(III)に対する除去能が向上した.合成pHの違いによってスラグ由来生成物の陰イオン除去能は顕著に変化し,pH 10.5で合成した生成物の陰イオン除去能が最も高かった.スラグから陰イオン除去能をもつ層状複水酸化物が得られることがわかった.