- 著者
-
後藤 信行
- 出版者
- 日本物理教育学会
- 雑誌
- 物理教育
- 巻号頁・発行日
- vol.37, no.2, pp.80-83, 1989
月は一年間に数cmの割合で地球から遠ざかっている。その理由について,啓蒙書,天体力学の教科書及び科学辞典の記述をみると,月が潮汐摩擦によって加速されるためであるという。月の公転運動が速くなり,遠心力が増して,月は遠ざかるという説明は,直感的には,もっともらしく思えるが,それには,力学的に重大な誤りがある。正しくは,潮汐摩擦のため,月の公転の速度も角速度も,逆に減少しているのである。月の運動に関する,このような誤解は,何故起きたのだろうか。月の公転運動と地球の自転運動との間での,角運動量と力学的エネルギーの受け渡しの機構について考察する。