著者
後藤 啓介
出版者
慶應義塾大学大学院法務研究科
雑誌
慶應法学 (ISSN:18800750)
巻号頁・発行日
no.24, pp.163-233, 2012-10

一 はじめに─問題の所在二 ドイツにおける正犯論の状況(一) 正犯論に関するドイツの判例─主観説?(二) 正犯論に関するドイツの学説─行為支配論(三) 間接正犯論をめぐるドイツの基礎的議論─「答責原理」と「正犯の背後の正犯」三 ドイツの判例における間接正犯の発展─猫王事件とDDR国家防衛評議会事件(一) 猫王事件(二) DDR国家防衛評議会事件四 ロクシンの「組織支配に基づく間接正犯」とシュレーダーの「行為決意性」(一) 組織支配に基づく間接正犯の生成(二) 組織支配に基づく間接正犯の4つの要件1 命令権─上下関係のある組織の存在2 法乖離性3 直接実行者の代替可能性4 直接実行者の高められた機動性(三) ロクシン説とBGHの見解との違い─組織支配を利用した間接正犯は企業犯罪に適用されうるか五 組織支配に基づく間接正犯の現在─ロクシン説からの乖離と判例の発展(一) ロクシン説からの乖離─BGHSt 40, 218後の判例独自の展開(二) 「組織支配に基づく間接正犯」の拡大─BGHによる企業犯罪への適用1 廃棄物処理事件2 支払能力がない場合の詐欺事件3 間接正犯による詐欺の場合の罪数(1)4 獣医師事件5 投資詐欺事件6 間接正犯による詐欺の場合の罪数(2)7 ブレーマー・ヴルカン造船所事件8 企業犯罪以外で間接正犯が適用された事例(三) 通常の経過を利用した間接正犯─判例独自の理論六 批判と異論─ロクシン説と判例がそれぞれに抱える問題点(一) 組織支配に基づく間接正犯それ自体を否定し共同正犯ないし教唆犯とする見解1 共同正犯説2 教唆犯説(二) 法乖離性および代替性要件に対する批判1 法乖離性に対する批判2 代替性に対する批判(三) 判例に対する批判─間接正犯の「堕落」か(四) 最近の新たな問題─間接共同正犯ないし共同間接正犯という概念はありうるか七 BGHで組織支配に基づく間接正犯が認められず共同正犯とされた事例八 おわりに─ドイツ刑法の現状が日本刑法に示唆するもの論説