著者
菊地 翁輝 齋藤 大祐 池崎 修 三井 達也 三浦 みき 櫻庭 彰人 林田 真理 徳永 健吾 小山 元一 森 秀明 久松 理一 高橋 信一
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
雑誌
Progress of Digestive Endoscopy (ISSN:13489844)
巻号頁・発行日
vol.88, no.1, pp.69-72, 2016-06-11 (Released:2016-07-01)
参考文献数
8
被引用文献数
1

症例は60歳代女性.卵巣癌stageⅢcの診断にてパクリタキセルとカルボプラチンの投与による化学療法(TC療法)が施行されたが,投与10日後より腹痛・下痢が出現し,投与12日後に入院となった.入院時に施行した造影CT検査では全結腸の拡張および腸液の貯留を認め,大腸内視鏡検査では横行結腸から下行結腸にかけて縦走する潰瘍性病変が散見され,虚血性大腸炎と診断した.成因としてパクリタキセルによる血流障害が疑われ,絶食および抗癌剤再投与中止により症状は改善した.発症機序として,薬剤による上皮細胞の分裂・増殖停止に伴う粘膜障害や,血管平滑筋細胞の増殖・遊走・新生内膜集積の阻害に伴う血管障害の関与が考慮されている.タキサン系抗癌剤を含む化学療法の導入後に出現した腹部症状においては,虚血性大腸炎の発症に留意し診断を行う必要がある.
著者
高橋 信一 田中 昭文 徳永 健吾
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.107, no.8, pp.1273-1282, 2010 (Released:2010-08-05)
参考文献数
46
被引用文献数
2

2009年,日本ヘリコバクター学会から改訂ガイドラインが発表され,そこではすべてのH. pylori感染者に対し除菌を行うよう強く勧められるとされた.H. pylori胃炎を背景として,さまざまな上部消化管疾患や消化管以外の疾患が発症するが,除菌により組織学的胃炎の改善とその後発症する疾患の予防に結びつくことが期待されている.世界の標準除菌治療は,プロトンポンプ阻害剤(PPI)+クラリスロマイシン(CAM)+アモキシシリン(AMPC)もしくはメトロニダゾールによるものだが,CAM耐性菌による除菌率の低下が問題であり,近年,連続療法やラクトフェリンなどによる除菌率上乗せ効果が注目されている.