著者
志村 勉 山口 一郎 寺田 宙 温泉川 肇彦 牛山 明
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.160-165, 2021-05-31 (Released:2021-06-25)
参考文献数
34

東京電力福島第一原子力発電所事故の影響は大きく,事故後10年が経過した現在においても多くの課題が残されている.事故からの復興には,専門家,一般市民,政府の間で相互理解や信頼関係を構築して政策を進めることが必要とされている.福島事故により生じた放射性物質を含んだ汚染水の浄化処理が進められているが,処理後も除去できない放射性トリチウムなどの扱いが国内だけでなく世界から注目されている.本稿では,放射線影響研究から明らかにされたトリチウムの生物影響と飲食品中のトリチウムの安全管理に関する知見を整理し紹介する.さらに,福島事故後の低線量放射線被ばくによる健康リスクに関する放射線の専門家の取り組みを紹介する.科学的知見は低線量放射線リスクを考える上での根拠となり,放射線のリスクコミュニケーションに活用することが期待される.放射線の健康不安対策として,適切な情報発信をつづけることが重要である.
著者
山口 一郎 浅見 真理 寺田 宙 志村 勉 杉山 英男 欅田 尚樹
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.69, no.5, pp.471-486, 2020-12-25 (Released:2021-01-23)
参考文献数
48

原子力災害は社会に対して広範なリスク管理を求める事態をもたらす.このリスク管理において混乱も生じた.このうち飲料水の安全は生活の根幹を支えるものであり,明確な説明が求められる.そこで,飲料水中の放射性物質に関する国内外の指標について根拠となる考え方の整理を試みた.緊急時及び平常時について,国内の各種指標と国外の指標(国際機関,欧州連合,米国)について検討を行った.東日本大震災時に発生した原子力発電所事故後に日本で用いられた指標は,国際的な考え方に基づき導入された.それぞれの指標値は,その性格や前提が異なり,値だけを比較することは適切ではなく,それぞれの指標の根拠を踏まえることが重要である.