著者
枡 良充 内山 靖 恩幣 伸子 山田 美加子 榎本 香織 軍司 晃
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.13, no.2, pp.67-72, 1998 (Released:2007-03-29)
参考文献数
13

階段昇降時の動作特性を明らかにする事を目的として,F-SCANを用い足圧中心の移動軌跡を健常人・患者25名に対して測定し,以下の結果を得た。健常人の階段昇降動作での足圧中心の移動軌跡は,前足部から踵方向へ移動後,再び前方へ移動する戻り型(Aタイプ)と,平地歩行と類似したの前方向型(Bタイプ)に大別された。健常人の降段動作での足圧中心の軌跡は全てAタイプで,昇段に比較して左右への変位を認めた(p<0.01)。一方,昇段ではA・Bの両タイプがみられた。患者では,降段動作の障害がより顕著で,機能改善とともに健常人の足圧中心の軌跡波形に近付く傾向が観察された。また,杖は立脚期を安定化させる役割があることが客観的に示された。階段昇降時の動的足圧を測定する事により,降段動作の姿勢制御の複雑さの一端が明らかとなった。
著者
武井 圭一 杉本 諭 桒原 慶太 恩幣 伸子 潮見 泰蔵
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.B0094, 2006 (Released:2006-04-29)

【目的】脳卒中患者は、運動機能障害や高次脳機能障害などの後遺症により、ADL自立度が低下することが多い。脳卒中患者にとって、「ベッドと車椅子間の移乗」を早期に獲得することはADLの自立度を高めるために重要であり、理学療法分野においても移乗動作の介助量軽減を目標とした介入を展開する必要があると考えられる。そこで、本研究では脳卒中患者を対象に機能障害および移乗動作を構成する各要素的動作に着目し、これらのどのような因子が移乗動作にどの程度影響しているかについて分析した。【方法】対象は、病院および老人保健施設にてリハビリテーションを受けている脳卒中者で、本研究に同意が得られた58名(平均年齢72.7±8.7歳)である。尚、両側片麻痺者と現在下肢に骨関節疾患を有する者は対象から除外した。移乗動作能力は、車椅子とプラットフォームベッド間の遂行能力により自立、介助に分けた。車椅子の操作、準備は評価に含まなかった。測定項目は、機能障害要因として麻痺側運動機能、筋緊張、感覚、関節可動域、疼痛、体幹機能、半側空間失認、言語機能(SIAS)、認知機能(MMSE)、非麻痺側筋力(握力、膝伸展筋力)。構成要素動作の要因として起き上がり、座位保持、立ち上がり(MAS)、立位保持、立位方向転換(FMS)とした。これらの評価結果をもとに、対象者を移乗動作能力により自立群、介助群の2群に分類し、各測定項目について単変量的に分析した。次に単変量分析で有意差のみられた項目を独立変数、移乗動作能力を従属変数とし、機能障害および構成要素動作要因のそれぞれについてstep wise法による判別分析を行った。尚、多重共線性を避けるため独立変数の内部相関をあらかじめ確認した。統計解析にはSPSS ver11.5を用い、危険率5%で分析した。【結果および考察】単変量解析の結果、機能障害要因では下肢近位麻痺(股)、下肢遠位麻痺(膝)、腹筋力、体幹垂直性、認知機能において自立群が介助群よりも有意に良好であった。また、構成要素動作要因では全5項目において自立群が有意に良好であった。内部相関分析より、下肢近位麻痺と遠位麻痺の間で強い相関を認めたため後者を除外して判別分析を行った。その結果、機能障害要因では「腹筋力」のみが最終選択され、判別率は79.3%であった。このことから、運動麻痺や認知障害が重度であっても体幹の動的機能がある程度残存していれば移乗動作が自力で遂行できる可能性が示唆された。構成要素動作要因では、「立ち上がり」、「立位方向転換」、「起き上がり」が最終選択され、判別率は91.4%であった。また最終選択された項目のうち、標準正準判別関数係数が高かったのは「立ち上がり」、「立位方向転換」であった。このことから、移乗動作能力の改善には、姿勢保持の影響は少なく、その一連の動作を構成する課題の獲得が重要であると考えられた。