著者
杉本 諭 古山 つや子 関根 直哉
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.237-243, 2020 (Released:2020-04-20)
参考文献数
19

〔目的〕Short Physical Performance Battery(SPPB)が要介護高齢者に対するパフォーマンステストとして利用 できるかを検討すること.〔対象と方法〕要介護高齢者90名の身体能力をSPPBとBerg Balance Scale(BBS)で評価し, BBS得点により対象を高身体能力群と低身体能力群に分け,両項目間の相関分析を行った.〔結果〕高身体能力群では, SPPBとBBSの間に相関係数ρ=0.793の強い相関を認めたが,低身体能力群では,相関係数ρ=0.625と中等度の 相関にとどまった.〔結語〕身体能力が比較的良好な場合には,要介護高齢者のパフォーマンステストとしてSPPB が利用できることが推察された.
著者
杉本 諭 三品 礼子 佐久間 博子 町田 明子 前田 晃宏 伊勢﨑 嘉則 丸谷 康平 工藤 紗希 室岡 修 大隈 統 小林 正宏 加藤 美香 小島 慎一郎
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.E3P1189, 2009

【目的】後出しジャンケンはレクリエーション活動において、しばしば行なわれる課題の1つである.先行研究において我々は、後出しジャンケンの成績がMini Mental State Examination(MMSE)や転倒経験の有無と関連していることを報告した.本研究の目的は、週2回の後出しジャンケンの介入効果について検討することである.【対象および方法】当院の通所リハサービス利用者および介護老人保健施設の通所・入所者のうち、本研究に同意の得られた高齢者42名を対象とした.性別は女性29名、男性13名、平均年齢は81.3歳であった.後出しジャンケンは、検者が刺激としてランダムに提示した「グー」・「チョキ」・「パー」に対し、指示に従って「あいこ」・「勝ち」・「負け」の何れかに該当するものを素早く出すという課題である.測定では30秒間の遂行回数を求め、「あいこ」→「勝ち」→「負け」→「負け」→「勝ち」→「あいこ」の順に2セットずつ施行し、2セットのうちの最大値をそれぞれの測定値とした.初回測定を行った後、ランダムに16名を選択して介入を行った.介入群に対しては、指示に従って該当するものを素早く出す練習を、5分間を1セットとして休憩をはさんで2セット行い、週2回1ヶ月間施行した.また、後出しジャンケンの遂行回数に加え、MMSE、Kohs立方体組み合わせテストを測定した.介入終了直後に対象全員に対して再測定を行い、介入前後の変化を介入群16名および対照群26名のそれぞれについて、対応のあるt検定を用いて分析した.【結果】介入群における介入前後の後出しジャンケン遂行回数は、「あいこ」は29.5回→30.6回、「勝ち」は18.3回→21.7回、「負け」は10.1回→13.0回と、「勝ち」および「負け」において介入後に有意に遂行回数が増加した.一方対照群では、「あいこ」は30.8回→31.2回、「勝ち」は20.0回→19.7回、「負け」は12.8回→12.4回と、何れにおいても有意な変化は見られなかった.MMSEおよびKohs立方体組み合わせテストについては、介入群ではMMSEが23.6点→23.8点、Kohsが57.6点→61.1点、対照群ではMMSEが25.5点→25.2点、Kohsが62.9点→64.9点と、何れの群においても有意な変化は見られなかった.【考察】以上の結果より、後出しジャンケン練習は、「勝ち」および「負け」すなわち提示された刺激を単に真似るのではなく、ジャンケンに対する既知概念に基づいて、刺激に対して適切に反応するような課題において介入効果が見られた.今回は短期間の介入であったためジャンケンの遂行回数にのみ変化が見られたが、今後更なる持続的介入を行い、他の異なる検査やADLなどへの影響について検討したい.
著者
工藤 紗希 小島 慎一郎 佐久間 博子 町田 明子 杉本 諭 丸谷 康平 伊勢崎 嘉則 室岡 修 大隈 統 加藤 美香 小林 正宏 三品 礼子
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.E3P2246, 2009

【目的】<BR> 近年では在院日数の短縮化に伴い、介護老人保健施設(老健)を経て在宅復帰されるケースが増加している.一方在宅復帰した者の中には、機能低下により在宅生活が困難となり、施設入所となることも多い.従って通所者の在宅生活の継続、入所者の在宅復帰を目標とした際に、在宅生活に必要なADL能力及びバランス能力を把握することは、理学療法を進める上で重要であると考えられる.本研究の目的は、通所・入所者のADL自立度の違いを明らかにし、その違いをバランス能力に焦点を当てて分析することである.<BR>【対象と方法】<BR> 対象は通所リハサービス利用者及び老健施設入所者のうち本研究に同意の得られた高齢者247名(男性75名、女性172名、平均年齢79.1±8.8歳)で、通所者188名、入所者59名であった.疾患の内訳は、脳血管疾患95名、神経疾患20名、整形疾患87名、内部障害27名、その他18名であった.ADL自立度の評価にはFIMの運動項目を、バランス能力の評価にはBerg Balance Scale(BBS)を用いた.なおFIM下位項目のうちの階段昇降は、運動能力の違いに関わらず使用している者が少ないため、階段を除く12項目の合計(FIM12項目合計点)及び各下位項目の素点を用いた.BBSは合計点及び14の下位項目を用いた.分析方法は、まず通所者と入所者のFIM12項目合計点及び下位12項目の得点の違いをMann-Whitney検定を用いて分析し、有意差のみられた下位項目の分布と臨床的意味合いをもとに、各下位項目を良好・不良の2段階に分類した.次に抽出されたFIM下位項目を独立変数、利用状況(通所・入所)を従属変数として、Stepwise法による判別分析を行った.更に判別分析により最終選択された下位項目を従属変数、BBS下位項目を独立変数とし、Stepwise法による重回帰分析を行い、バランス能力との関連について分析した.<BR>【結果および考察】<BR>FIM12項目合計点の中央値は通所者78点、入所者61点、BBSは通所者44点、入所者27点であった.Mann-Whitney検定の結果、FIM12項目合計点、FIM下位12項目のうち食事と移動を除く10項目に有意差がみられ、判別分析ではトイレ動作と浴槽への移乗が最終選択された.この2項目が良好と判断される境界点は、トイレ動作は6点、浴槽への移乗は5点であった.重回帰分析によるBBS下位項目との分析では、トイレ動作では着座、リーチ、起立、浴槽への移乗では一回転、リーチ、タンデム立位、車いすへの移乗が最終選択された.以上より、在宅復帰の可否にはトイレ動作が修正自立、浴槽への移乗が見守りで可能であることが関連し、このような動作の獲得には、着座、起立、リーチ、一回転、タンデム立位、移乗動作のようなバランス能力の向上が重要であることが示唆された.
著者
能登 真一 毛利 史子 網本 和 杉本 諭 二木 淑子
出版者
日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.126-133, 1999-04

半側空間無視症例に対し,右手使用の木琴を用いた訓練を考察し,訓練効果をシングルケースデザインで検討した.木琴療法は180度回転させて設置した木琴を演奏するものである.ABAB法を用いて訓練効果を検討した結果,ベース期と介入期,除去期と再介入期の間に半側空間無視の成績の有為な改善を認めた.半側空間無視の改善は,左方向への音階の探索により左方向への運動意図が高まったことと,音楽の利用により右半球が活性化されたためと考えられた.
著者
武井 圭一 杉本 諭 桒原 慶太 恩幣 伸子 潮見 泰蔵
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.B0094, 2006 (Released:2006-04-29)

【目的】脳卒中患者は、運動機能障害や高次脳機能障害などの後遺症により、ADL自立度が低下することが多い。脳卒中患者にとって、「ベッドと車椅子間の移乗」を早期に獲得することはADLの自立度を高めるために重要であり、理学療法分野においても移乗動作の介助量軽減を目標とした介入を展開する必要があると考えられる。そこで、本研究では脳卒中患者を対象に機能障害および移乗動作を構成する各要素的動作に着目し、これらのどのような因子が移乗動作にどの程度影響しているかについて分析した。【方法】対象は、病院および老人保健施設にてリハビリテーションを受けている脳卒中者で、本研究に同意が得られた58名(平均年齢72.7±8.7歳)である。尚、両側片麻痺者と現在下肢に骨関節疾患を有する者は対象から除外した。移乗動作能力は、車椅子とプラットフォームベッド間の遂行能力により自立、介助に分けた。車椅子の操作、準備は評価に含まなかった。測定項目は、機能障害要因として麻痺側運動機能、筋緊張、感覚、関節可動域、疼痛、体幹機能、半側空間失認、言語機能(SIAS)、認知機能(MMSE)、非麻痺側筋力(握力、膝伸展筋力)。構成要素動作の要因として起き上がり、座位保持、立ち上がり(MAS)、立位保持、立位方向転換(FMS)とした。これらの評価結果をもとに、対象者を移乗動作能力により自立群、介助群の2群に分類し、各測定項目について単変量的に分析した。次に単変量分析で有意差のみられた項目を独立変数、移乗動作能力を従属変数とし、機能障害および構成要素動作要因のそれぞれについてstep wise法による判別分析を行った。尚、多重共線性を避けるため独立変数の内部相関をあらかじめ確認した。統計解析にはSPSS ver11.5を用い、危険率5%で分析した。【結果および考察】単変量解析の結果、機能障害要因では下肢近位麻痺(股)、下肢遠位麻痺(膝)、腹筋力、体幹垂直性、認知機能において自立群が介助群よりも有意に良好であった。また、構成要素動作要因では全5項目において自立群が有意に良好であった。内部相関分析より、下肢近位麻痺と遠位麻痺の間で強い相関を認めたため後者を除外して判別分析を行った。その結果、機能障害要因では「腹筋力」のみが最終選択され、判別率は79.3%であった。このことから、運動麻痺や認知障害が重度であっても体幹の動的機能がある程度残存していれば移乗動作が自力で遂行できる可能性が示唆された。構成要素動作要因では、「立ち上がり」、「立位方向転換」、「起き上がり」が最終選択され、判別率は91.4%であった。また最終選択された項目のうち、標準正準判別関数係数が高かったのは「立ち上がり」、「立位方向転換」であった。このことから、移乗動作能力の改善には、姿勢保持の影響は少なく、その一連の動作を構成する課題の獲得が重要であると考えられた。
著者
網本 和 杉本 諭 高橋 哲也 後藤 恵子 牧田 光代 小松 みゆき 三好 邦達 青木 治人
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.205-209, 1992-03-15

Ⅰ.緒言 脳損傷例における高次脳機能障害と重度な麻痺の存在はきわめて重篤な障害を構成し,そのリハビリテーションは著しく困難であることが知られている.このような例に対してどのような治療的接近が可能であるかを検討することは重要である.これまでにも早期歩行に関する幾つかの報告1~5)があるが,いずれも早期から歩行しなかった群,すなわち対照群と比較しての検討は行なわれていなかった.今回われわれは,1988年5月からこのような重症例に対して,早期から長下肢装具を用いて積極的に誘発歩行訓練を施行し,その臨床効果について従来の訓練方法を施行した群と比較検討したので報告する.
著者
高橋 信明 杉本 諭 岡田 益男 本間 基文
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌A(基礎・材料・共通部門誌) (ISSN:03854205)
巻号頁・発行日
vol.113, no.4, pp.251-260, 1993
被引用文献数
1 6

Present work describes the magnetic properties of Nd-Fe-B melt-spun ribbons which have lower Nd content than the Nd<sub>2</sub>Fe<sub>14</sub>B compound. The studied alloys were (1) Nd<sub>x</sub>Fe<sub>94-x</sub>B<sub>6</sub>, (2) (Fe<sub>3</sub>B)<sub>1-x</sub>-(Nd<sub>2</sub>Fe<sub>14</sub>B)<sub>x</sub> and (3) Fe<sub>1-x</sub>-(Nd<sub>2</sub>Fe<sub>14</sub>B)<sub>x</sub>. The grain refinement were underwent by studying the conditions of annealing for crystallization. It results in disappearing noticeable knicks in the demagnetization curves, which is attributed to precipitations of &alpha;-Fe and Fe<sub>3</sub>B phases. The Nd<sub>8</sub>Fe<sub>86</sub>B<sub>6</sub> melt-spun ribbon annealed at 650&deg;C for 30 min exhibits the highest (<i>BH</i>)<sub>max</sub> of 126kJm<sup>-3</sup>(15.8MGOe). The V addition is effective for improving the coercivity.
著者
能登 真一 毛利 史子 網本 和 杉本 諭 二木 淑子
出版者
日本作業療法士協会
雑誌
作業療法 (ISSN:02894920)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.126-133, 1999-04-15

要旨:半側空間無視症例に対し,右手使用の木琴を用いた訓練を考察し,訓練効果をシングルケースデザインで検討した.木琴療法は180度回転させて設置した木琴を演奏するものである.ABAB法を用いて訓練効果を検討した結果,べース期と介入期,除去期と再介入期の間に半側空間無視の成績の有為な改善を認めた.半側空間無視の改善は,左方向への音階の探索により左方向への運動意図が高まったことと,音楽の利用により右半球が活性化されたためと考えられた.
著者
杉本 諭 籠谷 登志夫 前田 徹
出版者
一般社団法人 粉体粉末冶金協会
雑誌
粉体および粉末冶金 (ISSN:05328799)
巻号頁・発行日
vol.53, no.3, pp.251-257, 2006 (Released:2006-08-18)
参考文献数
16
被引用文献数
1 2

Recently, the use of microwaves in the GHz range has increased because of the demand for large data transmission. However, the problem of electromagnetic interference (EMI) has become serious, and much attention has been paid to microwave absorption materials. We have investigated magnetic loss of permanent magnet materials at natural resonance frequency, and have succeeded in the development of microwave absorbers using M-type (or W-type ferrite) and RE-Fe-B (RE: rare earth) compounds. The resonance frequency can be controlled by substitution of Fe3+ ion with other metal ion in the M-type or W-type ferrite. The resin composite of M-type ferrite shows wide bandwidth, in which the reflection loss (R.L.) is less than −20 dB. In the RE-Fe-B compounds, the substitution of RE with Sm or the fabrication of nanocomposite with a soft magnetic phase is effective method for controlling their resonance phenomena and functional frequency as microwave absorbers. The powder with fine α-Fe structure, which is produced by the disproportionation reaction of RE-Fe compounds, is useful for the filler of resin composite microwave absorbers in several GHz range.
著者
杉本 諭
出版者
The Society of Physical Therapy Science
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.155-161, 1997-08-20

半側無視の有無や重症度を検査するための方法が数多く報告されている。しかし検査場面の成績が,無視現象全てを反映しているとは限らず,検査場面と日常生活及び訓練場面での成績が解離する場合がある。したがって検査場面だけではなく,日常生活や訓練場面における行動観察が必要である。また半側無視は視覚情報や電気刺激,体幹回旋など様々なモダリティーにより影響を受ける可能性があるため,同じ検査であっても使用するモダリティーの違いにより成績が異なる場合が多い。したがって半側無視に対する理学療法を行う際には,どのようなモダリティーが無視の改善に有効であるかを評価し検討していくことが重要でる。