著者
愼 蒼健
出版者
東京理科大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2012-04-01

日本宣教医療について考える場合には、朝鮮の農民たちが「総督府主導の植民地医学」/西洋医学から放逐され、西洋医学の経験を獲得しておらず、伝統医たちも存在しない中で生活をしていたという社会的背景を考慮しなければならない。そのうえで、(1)天理教と朝鮮総督府の関係は、「緊張と協力」の間にあった。(2)天理教の医療者は、非天理教の医師や看護婦と異なる医学・医療体系を身に付けていたのではなく、見捨てられた患者を懸命に看病・介護する「態度」の違いとして表現された。(3)天理教の医療伝道論と医学観には、中国大陸に漢方医学の普及を求めた日本漢方医学者に通じる点があった。