著者
鶴見 太郎
出版者
日本中東学会
雑誌
日本中東学会年報 (ISSN:09137858)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.103-123, 2012-01-05 (Released:2018-03-30)

This research note is an introductory study for an exploration of the historical-sociological and not political origins of the definition of the state of Israel as a “Jewish and democratic state.” It is hypothesized that some of these origins can be found in the Jewish and Zionist experience in the Russian Empire, where a majority of Zionists were born. Even before the emergence of Zionism, some East European Jewish enlighteners believed that the West European concept of civil rights denied nationality (nationhood or peoplehood) of the Jews. At the time of the 1905 Russian Revolution, political issues emerged in which nationality played a significant role. The Zionists then considered that every nationality should be secured by a democratic state, on the grounds that access to one’s nationality should be included in individual rights. The Zionists believed that any democracy should protect the nationality of its citizens. The Zionists also held that the survival of every nation inevitably depends on sociological laws, demographic and socioeconomic conditions in particular. This standpoint would require the nation to have a territory in which the nation constitutes a majority, providing a background for the norm that approves the privilege of the Jewish nationality in Israel.
著者
高尾 千津子 野村 真理 小森 宏美 中嶋 毅 原 暉之 鶴見 太郎 ウルフ デイビッド シュラトフ ヤロスラフ 宮沢 正典
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究はロシア革命後ユーラシアの東西に離散した亡命ロシア人社会と、それに付随して世界に拡散したロシアの「ユダヤ人問題」と反ユダヤ主義の諸相を、満洲、極東に焦点を当てて考察した。特にシベリア出兵期に日本に伝播した反ユダヤ主義、日本統治下満洲における亡命ロシア人社会とロシア・ファシズムの発展、シベリアと満洲におけるシオニズム運動の展開、ホロコースト前夜のユダヤ難民問題における日ソ両国の役割を解明した。
著者
高尾 千津子 鶴見 太郎 野村 真理 武井 彩佳 宮崎 悠 井出 匠 小森 宏美 Wolff David 重松 尚
出版者
東京医科歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

独ソ戦によってナチの支配下におかれた地域のホロコーストの特徴は、ユダヤ人の殺害が現地で執行されたこと、ナチによる占領の初期段階で、現地住民の一部がユダヤ人に対するポグロムに関与したことに求められる。本研究は、ソ連・東欧におけるホロコーストの事例研究に取り組み、現地住民のナチ協力に関しては、新たにソ連の支配下に入ったバルト3国やポーランド東部地域とソ連本国内の東ベラルーシ等とで相違があることを明らかにした。
著者
鶴見 太郎
出版者
ロシア史研究会
雑誌
ロシア史研究 (ISSN:03869229)
巻号頁・発行日
vol.88, pp.78-95, 2011

When Zionists in Late Imperial Russia spoke about Palestine, they did not usually rely on traditional discourses and hardly showed their emotional attachment to Palestine. In fact, many Zionists even had an aversion to any essentialist discourse on nationality. Why, then, did they chose Palestine, a particular land? Especially focusing on the arguments of Daniel Pasmanik, a prominent ideologist of "Synthetic" Zionism, this paper explores an imagery that the Zionists at that time in the Russian Empire had in mind, by which the Zionists considered Palestine necessary for their project. When we read Pasmanik's Wandering Israel (1910) and some other articles by him, it becomes evident that his thoughts were based on an evolutionary perspective, underlining the role of environments that created characteristics of the Jewish people. While he also highlighted people's "will" to life, he considered that without a free social environment, free national creation would be impossible. For him, ancient Palestinian Jews created valuable culture for humanity, proving potential capacity of Jews for creation. He believed that Palestine would be an environment where a part of Jews would resurge to be such people liberating Jews in the Diaspora from the evil influence of the Galut (Exile).
著者
伊達 聖伸 渡辺 優 見原 礼子 木村 護郎クリストフ 渡邊 千秋 小川 浩之 西脇 靖洋 加藤 久子 安達 智史 立田 由紀恵 佐藤 香寿実 江川 純一 増田 一夫 小川 公代 井上 まどか 土屋 和代 鶴見 太郎 浜田 華練 佐藤 清子
出版者
東京大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、加速する時代のなかで西洋社会の「世俗」が新局面に入ったという認識の地平に立ち、多様な地理的文脈を考慮しながら、「世俗的なもの」と「宗教的なもの」の再編の諸相を比較研究するものである。ヨーロッパ大陸とアメリカ大陸の政教体制を規定している歴史的文脈の違いを構造的に踏まえ、いわゆる地理的「欧米」地域における世俗と宗教の関係を正面から扱いつつ、周辺や外部からの視点も重視し、「西洋」のあり方を改めて問う。
著者
梅森 直之 坪井 善明 田中 ひかる 土屋 礼子 小林 聡明 鈴木 恵美 鶴見 太郎 加藤 哲郎 李 成市 野口 真広 毛里 和子 山田 満 若林 正丈 篠田 徹 齋藤 純一 浅野 豊美 安井 清峰 最上 敏樹 土佐 弘之 山崎 眞次 八尾 祥平
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2015-04-01

東アジア諸国間の対話と交流は、歴史に由来する論争により妨げられており、そのため東アジアの歴史和解の試みは「失敗」であると総括されることが多い。しかしながら、東アジアにおける歴史認識には、単に戦争責任だけでなく植民地責任をめぐる問題が主題化されており、世界的に重要な先駆的実践として評価されるべきものがある。東アジアの各地域は、民主化と経済発展を、異なる時期に異なるプロセスとして経験し、そのため現在の歴史に関する国民感情にも、大きなズレが生じている。東アジア諸国がこのズレを認識し、既存の国際法体系の批判的に検討しつつ歴史共同研究を推進することで、東アジアの歴史和解を推進することが可能となる。
著者
鶴見 太郎
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

組織面から見た時、柳田国男の民俗学はしばしば、地方の郷土史家を従属的に扱い、そこから民俗資料を吸収して、独占的にそれらを分析する構造を持っていたと指摘を受けることが多い。しかしながら、同時代の資料、特に『郷土研究』並びに「橋浦泰雄関係文書」などを子細に、かつ長期的な視野のもとで検証すれば、柳田の研究体制とは、その土地々々に自生する郷土研究会の特質を尊重し、全国組織という体裁をとったとしても、それは在来の研究者・研究会を横から繋ぐ、という様式を旨とするものであり、必ずしもトップダウン型の組織運営が目指されたとは言えない。また、大正中期に『郷土研究』に投稿し、柳田と接触を持った郷土史家は、その後、継続的に柳田の主催する郷土・民俗学に関わる雑誌に投稿しており、すすんで長期にわたって柳田と交流を保とうとしたことが分かる。『郷土研究』とほぼ並行して運営された民俗談話会「郷土会」のメンバーが共通して国家主導のもとで郷土を捉えようとする地方改良運動に強い批判を抱いていたことを確認すれば、実証と経験的思考を徹底する柳田民俗学は、その特色を組織の域にまで拡大して援用し、その効果を挙げたといえよう。