著者
成瀬 元
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.129, no.1, pp.441-452, 2023-08-09 (Released:2023-08-09)
参考文献数
32

このワークショップでは,堆積地質学で用いられるモデル実験を体験し,その意義について議論する.まず,小型の水路を使って沖積河川を模した実験を行う.この実験では沖積河川を流れる土砂の流量や粒度を変化させ,河川地形に与える影響を検討する.水路の下流端に堰を設け,海や湖・ダムへそそぐ河川の地形発達作用を観察する.次に,簡便な数値モデルを用いて2種類の数値実験を行う.一つ目の実験は土砂流量を変化させることで起こる河川地形変化を再現する.二つ目の実験は水平2次元格子モデルによるベッドフォームの形成実験である.計算領域の格子間で土砂を流入・流出させ,ベッドフォームが発達し移動する様子を観察する.これらの実験を通じて,モデル化により複雑な自然現象の本質を抽出することの楽しみが参加者に伝わることを主催者は期待している.
著者
山下 翔大 中条 武司 西田 尚央 成瀬 元
出版者
The Sedimentological Society of Japan
雑誌
堆積学研究 (ISSN:1342310X)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.81-92, 2011-12-26 (Released:2012-03-07)
参考文献数
23
被引用文献数
1 3

2009年10月に三重県伊勢湾に襲来した台風18号により,伊勢湾に流入する櫛田川では出水イベントが発生した.それに伴って櫛田川河口に発達する干潟環境において発生した大規模な地形および底質の変化を観察するとともに,洪水起源堆積物の特徴,堆積様式および保存ポテンシャルについて検討した.櫛田川河口干潟では,分岐流路の氾濫によって砂嘴が破壊される,大量の陸源有機物および泥質堆積物が砂質潮汐低地上に堆積するといった大規模な地形および底質の変化が生じた.また,洪水起源堆積物の試料を採取し,肉眼観察および走査型電子顕微鏡(SEM)による観察を行ったところ,砂質な破堤堆積物(堆積相1)および泥質なfluid mud堆積物(堆積相2)の2つが識別できた.特に堆積相2は,砂州のトラフ部などの地形的閉鎖域に厚く堆積しており,2010年4月の事後調査においても残留している様子が観察できた.さらに,砂質潮汐低地地下の堆積物を観察すると,過去の洪水に起因すると考えられるfluid mud堆積物がレンズ状に多数存在していることが明らかとなった.これらことは,砂州のトラフ部などの地形的閉鎖域に堆積した洪水起源fluid mud堆積物は再サスペンジョンによる流出を免れ,河口干潟の地層中に保存されることを意味している.
著者
成瀬元三郎 記
出版者
英蘭堂
巻号頁・発行日
vol.第1段(漢洋医弁), 1883