著者
川村 喜一郎 金松 敏也 山田 泰広
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.123, no.12, pp.999-1014, 2017-12-15 (Released:2018-03-28)
参考文献数
142
被引用文献数
2 6

本論では,海底地すべりの一般的な特徴,短期および長期の発生メカニズム,海底地すべりによる海洋ハザードについて概説する.海底地すべりは,その形状から,一般的に滑落ドメイン,移動ドメイン,末端ドメインの3つの領域に区画される.滑落ドメインでは開口亀裂,移動ドメインでは剪断変形に起因する非対称変形構造が見られる.末端ドメインでは,圧力隆起部によって特徴づけられる.滑り面は粘土層であると推測されるが,南海トラフで報告されているように非条件下では,砂層も滑り面となる可能性がある.短期的な発生メカニズムは,斜面における荷重の急激な増加や間隙水圧の急激な上昇など,地震に最も関連している.長期的な発生メカニズムは,気候変動によるメタンハイドレートの分解とそれに伴う間隙水圧の増加,長期的な間隙水圧の増加,海山の沈み込み/衝突による地盤の変形,火山活動による斜面勾配の急斜化などがある.
著者
川村 喜一郎 池原 研 藤岡 換太郎
出版者
一般社団法人 日本地質学会
雑誌
地質学雑誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.113, no.5, pp.184-192, 2007 (Released:2007-12-28)
参考文献数
22
被引用文献数
1

堆積システムの急激な変化が中部沖縄トラフの3 mと5 m長の2本のコアに記録されていた.構成される石英粒子の中央粒径は,7325年前の年代のK-Ah層で下位から上位に向けて急激に減少した.その中央粒径の減少は,約20 μmの粗粒粒子の除去による結果である.K-Ah層の年代で生じたこの変化は,1)海水準上昇で沖縄トラフと堆積物供給源である中国大陸とが離れたこと,2)トラフ内で8000~7000年前に黒潮の堆積物供給バリアが形成され,大陸からの堆積物のほとんどが強い海流により掃きとばされたことによって生じたと推測される.さらに,微細組織がその下位での水平配列から上位でのランダム配列へ変化する.その水平配列は,高堆積速度条件下で生じた無生物擾乱からの結果であると判断できる.このように,中部沖縄トラフでは,今日のような堆積システムが約7300年前に形成されて,現在までにそれが持続していると考えられる.