著者
河田 寿子 成瀬 妙子 能勢 義介 安藤 麻子 猪子 英俊
出版者
日本組織適合性学会
雑誌
日本組織適合性学会誌 (ISSN:21869995)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.10-15, 1995 (Released:2017-03-31)
参考文献数
9

HLA-DM遺伝子は, HLA-DQ,DP間に存在することが報告された新しいクラスII遺伝子であり, クラスII分子による抗原提示の過程, すなわち外来抗原ペプチドとの結合に重要な機能を担っていることが示唆されている. 本論文では, 日本人のDMB遺伝子の多型性の解析と, 他のクラスII抗原遺伝子との相関について検討した結果, 日本人においてDMB* 0101, * 0102, * 0103が確認され, さらに新対立遺伝子595newが存在することが明らかとなった. また, PCR-RFLP法での日本人一般集団の解析において, 白人とは異なる遺伝子頻度が観察された. また, 他のクラスII遺伝子との相関解析より, DMB* 0101とDPB1* 0402およびDRB1* 1502に連鎖不平衡が認められた. DMB遺伝子多型性解析は, クラスII分子が細胞膜上に発現して賦与される, いわゆる抗原提示能の解析に有用であると考えられ, また, 今後の移植医療や, HLAに相関する疾患のさらなる発症機構の究明に役立つものと期待される. HLA-DQ,DP間に存在の報告された新しいクラスII遺伝子であるHLA-DM遺伝子は, 他のクラスII遺伝子と同様にα鎖, β鎖のヘテロダイマーより形成され, mRNAでの発現は認められているものの, タンパクレベルでの同定がなされておらず, その機能は不明であった(1). しかしながら最近, DM遺伝子の欠損により, クラスII分子による抗原提示能の低下した突然変異細胞にDM遺伝子を導入すると, 抗原提示能が回復したという報告から, DM遺伝子それ自身が他のクラスII分子による抗原提示に重要な機能を担っていることが明らかにされた(2,3). DM遺伝子の多型性は, 他のクラスII遺伝子と異なり, DMA,DMB遺伝子ともに主として第3エキソンに存在する. 白人の解析ではDMA*0101〜串0104, DMB* 0101〜* 0104のそれぞれ4種の対立遺伝子の存在が報告されているが(4), 日本人での解析は行われていない. そこで我々は, 日本人HLA-DMB遺伝子について, その多型性の解析と, 他のクラスII抗原遺伝子との相関を検討したので報告する.
著者
吉川 枝里 宮原 詞子 成瀬 妙子 島田 和典 東 史啓 原 啓高 猪子 英俊
出版者
日本組織適合性学会
雑誌
日本組織適合性学会誌 (ISSN:21869995)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.21-31, 2003 (Released:2017-03-30)
参考文献数
4
被引用文献数
2 2

蛍光ビーズを用いたLuminex法は, 簡便, 正確かつ短時間で多検体処理が可能(high-throughput)な新しい遺伝子多型判別法である. このLuminex法を用いて, HLA-A, HLA-BおよびHLA-DRB1遺伝子に関して, 日本人を対象とする4桁DNAタイピングを検討した. HLA-Aで33種類, HLA-Bで46種類, HLA-DRB1で44種類のプローブを1ウェルに混合し, 日本人集団で遺伝子頻度が0. 1%以上みられる対立遺伝子(allele)が4桁レベルで判別可能な方法を構築した. 遺伝子型が既知の138検体で検討した結果, HLA-AとHLA-Bで各々1検体, 増幅不良による判定不能があったもの以外は4桁の判定が可能であった. 本法は, HLA-AとHLA-Bについて1ウェル, HLA-DRB1について1ウェルの, 計2ウェルでタイピングが可能な, 迅速な方法であり, 計47検体について約5時間でHLA-A, -Bおよび-DRB1遺伝子の4桁レベルのタイピングが1名の検査員で行える. 特に, 大量検体を短時間で行うHLA検査方法として有用であると考えられる.