著者
Eri Kikkawa Masafumi Tanaka Tomi T. Tsuda Koichi Murata Taeko K. Naruse Akinori Kimura
出版者
Japanese Society for Histocompatibility and Immunogenetics
雑誌
日本組織適合性学会誌 (ISSN:21869995)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.195-203, 2019 (Released:2019-12-27)
参考文献数
34

Endangered penguins are in need of the genetic management to estimate the risk for loss of genetic diversity from populations resulting from habitat fragmentation or inbreeding. However, as for genome diversity in penguin species, there are limited reports and it is insufficient to give useful and appropriate information. In the present study, we obtained the full length sequence of the MHC class II gene, which is expected to be a useful genetic marker for biodiversity in conservation genetics. The 4.4 kb genome region containing two novel genes was determined for nucleotide sequences using genomic DNA extracted from Humboldt penguin, by using the inverse PCR method. Homology analysis of MHC class II genes with those from other birds suggested that the novel two genes were alpha and beta genes. In addition, phylogenetic analysis suggested that the beta gene of penguins was clustered with the beta genes from waterfowl. These observations provide basic information on the structure of MHC class II locus to relieve the genetic diversity of penguin species.
著者
今西 規
出版者
日本組織適合性学会
雑誌
日本組織適合性学会誌 (ISSN:21869995)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.130-134, 1994 (Released:2017-03-31)
参考文献数
10

HLAは多重遺伝子族を構成し, しかも各遺伝子座が多数の対立遺伝子を持つ. この遺伝的多型は世界のどの集団にもみられるが, その対立遺伝子の構成は集団ごとに異なる. ここでは, HLAの対立遺伝子が世界の民族の中でどのように分布しているかを示し, 対立遺伝子頻度の統計学的解析を通して, ヒトの進化の歴史について論じる. 1. HLAの遺伝的多型 ヒトの主要組織適合性複合体(MHC)であるHLAは, 免疫機構の中で非自己抗原の認識を担当する分子である. HLAの遺伝子には多数の対立遺伝子があり, 個体ごとに異なるタイプの遺伝子を持つ場合が多い(1). このような遺伝的多型は, HLAに限らず他の多くのタンパク質をコードする遺伝子でも観察される現象である. しかし, HLAの遺伝的多型は他の遺伝子とは異なり, 対立遺伝子の種類が極端に多い. 実際に, HLAは, ヒトの遺伝子の中でもっとも変異に富む遺伝子であるかもしれない. そして, この遺伝子の変異を比較研究することによって, さまざまなヒトの集団の間の進化的系統関係を探ることができるのである.
著者
中岡 博史 細道 一善 光永 滋樹 猪子 英俊 井ノ上 逸朗
出版者
日本組織適合性学会
雑誌
日本組織適合性学会誌 (ISSN:21869995)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.37-44, 2014-04-20 (Released:2014-04-20)
参考文献数
28

HLA領域の遺伝的多型は医学分野のみならず,人類の移住,混合,自然選択や遺伝的適応といった進化過程を推測する集団遺伝学においても重要なツールとして用いられている。日本人の起源については諸説あるが,約30,000年前の後期旧石器時代に日本列島へと移住してきた狩猟採集民である縄文人と,紀元前1,000年から西暦300年頃に朝鮮半島から日本列島へと移住してきた弥生人の祖先が混血して,現在の日本人集団の起源になったとする“混合モデル”が有力であると考えられている。本稿では,日本人集団の混合的起源を支持する遺伝的知見について概説するとともに,HLA遺伝子多型から日本人の祖先集団を推測する遺伝的痕跡の探索について,最新の研究を紹介したい。
著者
盛山 芳恵 加藤 和江 村 徹 十字 猛夫
出版者
日本組織適合性学会
雑誌
日本組織適合性学会誌 (ISSN:21869995)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.183-201, 2006 (Released:2017-03-30)
参考文献数
7
被引用文献数
10 11

日本骨髄バンク登録ドナー(以下ドナーとする)として登録された人々のHLA型から, HLA-A, -B, -DRの3座位のHLA抗原の遺伝子頻度およびHLA-A, -B, -DRの3座のHLA抗原のハプロタイプ頻度の算出を行い, さらにドナーが登録した骨髄データセンターの都道府県をそのドナーの出身地と仮定して, HLAハプロタイプの都道府県別頻度の計算を行った. ドナー全体のハプロタイプ頻度と韓国, 台湾, 中国, 中国東北部のハプロタイプ頻度との比較も行った. 11th International Histcompatibility Workshop(以下11th IHWとする)の日本のHLA遺伝子頻度結果は, 全検体数が少なかったために検出できなかった日本人には比較的稀であるとされてきたHLA型が, 今回のドナー全体での調査では, いくつか検出された. これは大きな集団を解析することによって初めて可能になった貴重なデータである. 都道府県別ハプロタイプ頻度を較べてみると, ハプロタイプの分布に多少の差異があることが示された. 東北アジアの近隣の国々(韓国, 台湾, 中国, 中国東北部)との比較では, 日本は韓国と多くのHLA抗原ハプロタイプを共有している事が示され, 人類学的に近い関係にあることが推測された.
著者
高田 雄三 的場 洋平 浅川 満彦
出版者
日本組織適合性学会
雑誌
日本組織適合性学会誌 (ISSN:21869995)
巻号頁・発行日
vol.14, no.2, pp.163-175, 2007 (Released:2017-03-31)
参考文献数
23
被引用文献数
1

輸送技術の発展や生活の豊かさの向上などから移入し野生化した生物, すなわち移入種が近年問題となっている. 移入種による経済被害や生態系の撹乱, 感染症媒介による健康被害への懸念が深刻化するなか, 全国レベルでの移入種問題に対する調査と対策が進められている. その一環としてアライグマのDNA分析による捕獲個体調査が実施されている. 現在まで12道府県で約4,000個体のサンプルからミトコンドリアDNA多型を決定し, 母系の動態調査を行ってきた. さらに, 移入種の起源や詳細な動態調査を行うためMHC遺伝子分析より得られた結果は, 遺伝的多様性, 個体群の遺伝的独立性や遺伝子流動の評価を可能とした. このことはMHCがアライグマの捕獲駆除や遺伝的保全, 生態系保全において有効利用できるアイテムであるといえる. 「はじめに」輸送技術の発展や生活の豊かさの向上などから, 生物の国内外への移動が活発化している. 生物は自己の能力を超えて本来生息していなかった地域へ生物の意志に関わらず人為的に導入されている.

3 0 0 0 OA HLAの基礎知識2

著者
小川 公明
出版者
日本組織適合性学会
雑誌
日本組織適合性学会誌 (ISSN:21869995)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.185-192, 2016 (Released:2016-12-29)
参考文献数
9
被引用文献数
2

HLAアリルの表記法とHLA抗原(HLA型)との関係についての理解は重要です。HLAにはヒト遺伝子の中でも最も著名な遺伝的多型性が認められますが,人種や民族によってHLA対立遺伝子(アリル)の頻度が異なっています。また,HLAは親から子へと遺伝し,遺伝形質がそのまま表現形質となる共優性を特徴とします。さらに,複数のHLA遺伝子座のアリル間に強い連鎖不平衡が認められることがあり,これらがひとつながりのハプロタイプを形成し,人種あるいは民族に特徴的なハプロタイプとして維持されています。一方,自己免疫疾患や慢性炎症性疾患では特定のHLAアリルとの関連が認められることがありますが,これはHLAが疾患の感受性や抵抗性を遺伝的に制御していることを示唆します。

3 0 0 0 OA 日本人のHLA

著者
赤座 達也
出版者
日本組織適合性学会
雑誌
日本組織適合性学会誌 (ISSN:21869995)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.18-22, 1998 (Released:2017-03-31)
参考文献数
2

ある集団のHLA遺伝子頻度をだすためには, ランダムで, 血縁関係のない健常人の集団を必要とし, また, 実施されたHLAのタイピングの水準が同一であることが求められる. この条件に該当するのが, 共通の抗血清を使用して, 大量の検体のHLAタイピングデータが集められる組織適合性ワークショップ(HWS)である. HLA遺伝子頻度はその時にダイビングできるHLA型により微妙に異なってくる, また頻度の信頼性は計算に用いた集団の大きさにかかっている. HLAタイピングは, 臨床的には疾患感受性, 親子鑑定などにも使われているが, 現在では, 移植ペアの適合性を決めるために, もっとも多く用いられていると思われる. 特に骨髄バンクのためのタイピングは, 世界的規模で膨大な数が行われている. 国際的にHLA型の適合したドナーを見つけるために設立された, 骨髄提供ドナーのHLA型を登録する機構である, BMDW(Bone Marrow World Wide)に登録されているHLA型タイピング済みドナーは478万人を越えており, データはインターネットで見ることができる. 日本も本年の4月よりデータを提供することになった. このホームページの中の, HLA型適合の検索は契約者でないと見られないが, 各骨髄バンクの登録者数と登録されているHLA-A,B,DRの遺伝子頻度は誰でも見ることができる. 各骨髄バンクごとのデータなので, 民族別には整理されてはいないが, 2座, 3座のハプロタイプ頻度もバンクによっては公開されている. これらの情報からある程度のHLA型適合の予測は可能であるし, さらにハプロタイプ頻度とバンクの規模から, 計算によって適合率の計算が可能である. この稿では, 日本人のHLA頻度を過去の資料を参照しながら振り返るとともに, 信頼性について検討したものをまとめた.

3 0 0 0 OA HLAの基礎知識1

著者
小川 公明
出版者
日本組織適合性学会
雑誌
日本組織適合性学会誌 (ISSN:21869995)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.115-122, 2016 (Released:2016-09-17)
参考文献数
8
被引用文献数
2

HLAは,ヒトの主要組織適合遺伝子複合体(MHC)として,1900年代中ごろに発見されましたが,免疫応答を制御する重要な要素でありヒトの遺伝子の中で最も多型に富むことが知られています。今回はHLA抗原の多型性および,HLA抗原と遺伝子の解説を行います。
著者
今西 規
出版者
日本組織適合性学会
雑誌
日本組織適合性学会誌 (ISSN:21869995)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.130-134, 1994

<p> HLAは多重遺伝子族を構成し, しかも各遺伝子座が多数の対立遺伝子を持つ. この遺伝的多型は世界のどの集団にもみられるが, その対立遺伝子の構成は集団ごとに異なる. ここでは, HLAの対立遺伝子が世界の民族の中でどのように分布しているかを示し, 対立遺伝子頻度の統計学的解析を通して, ヒトの進化の歴史について論じる. 1. HLAの遺伝的多型 ヒトの主要組織適合性複合体(MHC)であるHLAは, 免疫機構の中で非自己抗原の認識を担当する分子である. HLAの遺伝子には多数の対立遺伝子があり, 個体ごとに異なるタイプの遺伝子を持つ場合が多い(1). このような遺伝的多型は, HLAに限らず他の多くのタンパク質をコードする遺伝子でも観察される現象である. しかし, HLAの遺伝的多型は他の遺伝子とは異なり, 対立遺伝子の種類が極端に多い. 実際に, HLAは, ヒトの遺伝子の中でもっとも変異に富む遺伝子であるかもしれない. そして, この遺伝子の変異を比較研究することによって, さまざまなヒトの集団の間の進化的系統関係を探ることができるのである.</p>
著者
徳永 勝士
出版者
日本組織適合性学会
雑誌
日本組織適合性学会誌 (ISSN:21869995)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.87-95, 2014 (Released:2014-08-11)
参考文献数
4

最高度の遺伝的多型性を示すHLA遺伝子群は,輸血・移植領域にとどまらず,人類進化,親子鑑定・個人識別,疾患感受性,薬剤過敏症など幅広い分野で有効に活用されている。ここでは,日本人を含むアジア系集団の起源と形成,ナルコレプシー,B型肝炎関連疾患などへの感受性と抵抗性,Stevens-Johnson症候群などを例に取り上げ,我々の経験を中心に紹介する。
著者
黒木 喜美子 喜多 俊介 前仲 勝実
出版者
日本組織適合性学会
雑誌
日本組織適合性学会誌 (ISSN:21869995)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.80-95, 2016 (Released:2016-09-17)
参考文献数
19
被引用文献数
1

HLAは非常に遺伝子多型性が高く,多数の遺伝子ファミリーを形成することによって多重性も獲得し,自己・非自己認識を担っている糖タンパク質である。通常,幅広い抗原由来のペプチドをT細胞へ提示するが,さらに,様々な免疫制御受容体との相互作用を介して免疫応答を多面的に調節し,個体の恒常性を維持していることが明らかになってきた。このようなHLAが持つ多面的機能の理解には,X線結晶構造解析による立体構造の決定や物理化学的な相互作用解析が大きな貢献を果たしてきた。本稿では,HLAの分子構造から特にHLAクラスIと受容体群との分子認識機構に着目し,どのようにHLAが免疫反応を制御しているかを概説するとともに,疾患との関連を考察する。
著者
一戸 辰夫
出版者
日本組織適合性学会
雑誌
日本組織適合性学会誌 (ISSN:21869995)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.101-107, 2013-08-10 (Released:2013-08-22)
参考文献数
5

現在,わが国において実施されている同種造血幹細胞移植の約30%程度は,非血縁者間さい帯血移植(unrelated cord blood transplantation, UCBT)である。従来より,UCBTにおいてはHLA適合性と移植成績との関連が明確ではなかったが,最近では十分な移植経験の蓄積に伴い,さい帯血ユニットの選択指針を提示し得るような信頼性の高い研究が行われるようになってきた。本講演では,UCBTを対象とするHLA適合性と移植成績に関してのわが国における最新の研究成果を紹介するとともに,その中で得られた知見に基づいたさい帯ユニット選択指針の試案を提示する。
著者
鶴田 未季 西村 泰治
出版者
日本組織適合性学会
雑誌
日本組織適合性学会誌 (ISSN:21869995)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.40-49, 2018 (Released:2018-04-27)
参考文献数
34

がん抗原ワクチン療法は,腫瘍関連抗原(TAA)由来のペプチド,蛋白質,DNA/RNAなどの種々の形状のTAAをがん患者に投与して,がん細胞に特異的な細胞傷害性T細胞やヘルパーT細胞などの免疫細胞の誘導と活性化を促し,腫瘍縮小効果や延命効果を期待する治療法である。現在,様々な悪性腫瘍に対してTAAワクチン療法の臨床試験が進行中である。最近は,がん細胞に生じた遺伝子変異に由来するネオ抗原を標的とするワクチン療法や,免疫チェックポイント阻害療法との併用などのより個別化され,かつ複合的ながん抗原ワクチン療法に注目が集まっている。
著者
土屋 尚之 川﨑 綾 岡 笑美 古川 宏
出版者
日本組織適合性学会
雑誌
日本組織適合性学会誌 (ISSN:21869995)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.74-83, 2015 (Released:2015-08-11)
参考文献数
51
被引用文献数
4

1973年の強直性脊椎炎とHLA-B27の関連の発見以来,40年以上にわたり,HLA遺伝子群は,リウマチ・膠原病において最も確立した病因的因子であり続けている。これまで,多くの関連研究や分子機構を探る研究が積み重ねられ,その時代の先端的解析法を駆使して,多くの知見が明らかになるとともに,それ以上の新たな疑問が産み出されてきた。本稿では,代表的なリウマチ性疾患・膠原病および類縁疾患について,日本人集団を中心に関連研究の成果をまとめるとともに,リウマチ性疾患に関するHLA研究の最近の進歩について概説する。
著者
湯沢 賢治
出版者
日本組織適合性学会
雑誌
日本組織適合性学会誌 (ISSN:21869995)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.105-118, 2014 (Released:2014-08-11)
参考文献数
4

腎移植の成績は,免疫抑制剤の進歩により,格段に良くなった。それまでは,拒絶反応を少しでも少なくするために組織適合性HLAの一致が求められ,適合者が選択されてきた。しかし,免疫抑制剤の進歩により,HLAの適合度が腎移植成績に与える効果は低くなった。その後,高感度の抗HLA抗体検査が可能となり,組織適合性検査の重要性が見直されてきている。腎移植における組織適合性検査の重要性を認識できるよう,腎移植の現況を解説し,組織適合性検査の関わりの詳細を解説する。また,現在の組織適合性検査の問題点,今後の展望を述べた。
著者
中野 浩美 川井 信太郎 柏瀬 貢一 小川 篤子 石川 善英 徳永 勝士 赤座 達也 十字 猛夫 山根 明男
出版者
日本組織適合性学会
雑誌
日本組織適合性学会誌 (ISSN:21869995)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.205-212, 1997 (Released:2017-03-31)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

我々はHLAの多検体のルーチン検査に適したDNAタイピング法として, Polymerase Chain Reaction-based Microtiter Plate Hybridization(PCR-MPH)法を用い, HLA-DRB1やDQB1遺伝子のタイピング法をすでに確立した. 今回, 従来の血清学的方法ではダイビングが困難なHLA-A2, A26およびB61遺伝子のアリルタイピングをPCR-MPH法で検討した. それぞれのグループに特異的なプライマーを用いてPCRを行い, A2は日本人に報告されている5種類のアリル(A* 0201, * 0203, * 0206, * 0207, * 0210)を10プローブが固定されたマイクロタイタープレートを用いてタイピングした. 同様にA26は3種類(A* 2601, * 2602, * 2603)を5プローブで, B61は4種類(B* 4002, * 4003, * 4004, * 4006)を6プローブでタイピングした. 本法を用いてアリルタイピングを行った結果, PCR-SSO法などの結果と一致した. 本法はPCRが約3時間, MPHが約2時間の計5時間で終了する. さらに今回報告したHLA-A2, A26およびB61遺伝子タイピングのMPH操作は, HLA-DRB1やDQB1のタイピングと同じ条件なので, これら全てのタイピングを同時に行うことができる.
著者
奥山 正明 烏谷 竜哉 竹内 潤子 井上 博雄
出版者
日本組織適合性学会
雑誌
日本組織適合性学会誌 (ISSN:21869995)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.17-24, 2004 (Released:2017-03-30)
参考文献数
22

愛媛県に住む228組680人のHLA家系調査により, HLA-A, -B, -DRB1, -DQB1の4座位の抗原, アリル頻度を分析した. 血清学的検査法によりA座の8抗原, B座の23抗原を, 遺伝子検査法によりDRB1座の26アリル, DQB1座の13アリルを特定し, 合計757例の4座位のハプロタイプを得た. B-DRB1の2座位間においてB13-DRB1*1202, B37-DRB1*1001, B44-DRB1*1302, B46-DRB1*0803, B51-DRB1*1403, B52-DRB1*1502, B59-DRB1*0405, B62-DRB1*1406, B7-DRB1*0101などは強い相関を示した. DRB1-DQB1の2座位間はほぼ1対1の対応であったが, DRB1*0802, *1201, *1401は2つの異なるDQB1アリルと強い相関を示した. 稀なアリルとされるDRB1*0809は3家系から検出され, そのハプロタイプはA24-B60-DRB1*0809-DQB1*0402が2例, A24-B-54-DRB1*0809-DQB1*0402が1例であった. 1例検出されたDRB1*1402のハプロタイプは, A26-B62-DRB1*1402-DQB1*0301であった. HLA-A-B-DRB1-DQB1のハプロタイプで頻度2%以上を示した6タイプは, A24-B52-DRB1*1502-DQB1*0601(7.7%), A24-B7-DRBl*0101-DQB1*0501(3.3%), A24-B54-DRB1*0405-DQB1*0401(3.2%), A2-B46-DRB1*0803-DQB1*0601(3.0%), A33-B44-DRB1*1302-DQB1*0604/09(2.6%), A2-B61-DRB1*0901-DQB1*0303(2.5%)であった. 愛媛でのHLA頻度を関東地方都市部と比較すると, A33, B44, B48, DRB1*0803, DRB1*1405, DRB1*1501, DQB1*0601, DQB1*0602などに地域差があることが示された.
著者
阿藤 みや子 小林 賢 鈴木 洋司 鈴木 由美 金子 朋江 松崎 雄三 石上 園子 福田 安子 玉井 誠一
出版者
日本組織適合性学会
雑誌
日本組織適合性学会誌 (ISSN:21869995)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.67-77, 2003 (Released:2017-03-30)
参考文献数
29
被引用文献数
1

血液型検査においてキメラが疑われた症例が見出されたので, HLA-A, B, CとHLA-DRB1のDNAタイピング, マイクロサテライト解析およびフローサイトメトリー解析を用いた確認試験により双生児キメラであることが示唆された. 本症例は, 37歳の男性で, 二卵性双生児の弟がいる. 平成14年9月左橈骨遠位端骨折のため越谷市立病院に入院したが, 輸血歴はない. この症例の末梢血を用いてABO血液型のフローサイトメトリー解析ならびにヨウ化カリウム法で末梢血からDNAを抽出し, マイクロサテライト解析, ABO血液型遺伝子タイピングおよびHLA遺伝子タイピングを実施した. フローサイトメトリー解析の結果, B型血球とAB型血球が90.04%と9.96%の比率で混在していた. すべての遺伝子検査で3種類ないし4種類のアリルが検出された. これらのことから, この症例が双生児キメラであることが示唆された.

1 0 0 0 OA ペンギン

著者
津田 とみ 猪子 英俊
出版者
日本組織適合性学会
雑誌
日本組織適合性学会誌 (ISSN:21869995)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.47-52, 2001 (Released:2017-03-30)
参考文献数
14

鳥類でのDNA研究はシブリーらによるDNA-DNAハイブリダイゼーションによる解析を経てその後多くはミトコンドリアDNAによる研究がすすめられてきた. 第4回の国際ペンギン会議(2000年9月, チリ)での演題も多くはペンギンの行動生理学や繁殖保護に関するものであり, DNAの分析の手法を用いた発表は, ミトコンドリアDNA, マイクロサテライトと私たちのペンギンMHC(Major Histocompatibility Complex主要組織適合抗原複合体, MHCと略す)の3件であった. いずれも参加者から高い関心と期待を寄せられた. MHC解析の有用性が関心を呼んだのだろうか, MHC分析をしてみたいとのいくつもの申し出があった. ペンギン研究の舞台へのMHCの初登場は成功をおさめたようである. 本稿では, MHCの舞台でペンギンとペンギンMHCを含めたペンギンDNA研究の現況を披露したいと思う.
著者
河田 寿子 成瀬 妙子 能勢 義介 安藤 麻子 猪子 英俊
出版者
日本組織適合性学会
雑誌
日本組織適合性学会誌 (ISSN:21869995)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.10-15, 1995 (Released:2017-03-31)
参考文献数
9

HLA-DM遺伝子は, HLA-DQ,DP間に存在することが報告された新しいクラスII遺伝子であり, クラスII分子による抗原提示の過程, すなわち外来抗原ペプチドとの結合に重要な機能を担っていることが示唆されている. 本論文では, 日本人のDMB遺伝子の多型性の解析と, 他のクラスII抗原遺伝子との相関について検討した結果, 日本人においてDMB* 0101, * 0102, * 0103が確認され, さらに新対立遺伝子595newが存在することが明らかとなった. また, PCR-RFLP法での日本人一般集団の解析において, 白人とは異なる遺伝子頻度が観察された. また, 他のクラスII遺伝子との相関解析より, DMB* 0101とDPB1* 0402およびDRB1* 1502に連鎖不平衡が認められた. DMB遺伝子多型性解析は, クラスII分子が細胞膜上に発現して賦与される, いわゆる抗原提示能の解析に有用であると考えられ, また, 今後の移植医療や, HLAに相関する疾患のさらなる発症機構の究明に役立つものと期待される. HLA-DQ,DP間に存在の報告された新しいクラスII遺伝子であるHLA-DM遺伝子は, 他のクラスII遺伝子と同様にα鎖, β鎖のヘテロダイマーより形成され, mRNAでの発現は認められているものの, タンパクレベルでの同定がなされておらず, その機能は不明であった(1). しかしながら最近, DM遺伝子の欠損により, クラスII分子による抗原提示能の低下した突然変異細胞にDM遺伝子を導入すると, 抗原提示能が回復したという報告から, DM遺伝子それ自身が他のクラスII分子による抗原提示に重要な機能を担っていることが明らかにされた(2,3). DM遺伝子の多型性は, 他のクラスII遺伝子と異なり, DMA,DMB遺伝子ともに主として第3エキソンに存在する. 白人の解析ではDMA*0101〜串0104, DMB* 0101〜* 0104のそれぞれ4種の対立遺伝子の存在が報告されているが(4), 日本人での解析は行われていない. そこで我々は, 日本人HLA-DMB遺伝子について, その多型性の解析と, 他のクラスII抗原遺伝子との相関を検討したので報告する.