- 著者
-
成田 亜希
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement
- 巻号頁・発行日
- vol.2016, 2017
<p>【目的】</p><p></p><p>近年,理学療法士学生の学力や学習動機づけの低下が目立っている。このような学生の学力や学習動機づけを向上させ,国家試験合格へと導くことは教員の責務であると言える。そこで本研究では的確な学習支援を行うため,卒業生を対象に卒業時成績や卒業時の学習動機づけが入学前学力や在学時成績とどのような関係にあるのかを探索した。また成績不振者を出さないような学習指導をどのタイミングで行っていくのかを検討した。</p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>理学療法士養成校を卒業した88名を対象に調査を実施した。卒業時成績は模擬試験成績を用いた。入学前学力は高校偏差値,入試区分,入学前実力テスト(国語)の成績を用い,在学時成績は入学後初回小テスト,主要科目において毎時間行う復習テストの月集計,各学期末に行う模擬試験成績を用い,卒業時成績と比較した。自己決定理論に基づく学習動機づけに関する質問紙調査は3年次国家試験直前に実施した。その学習動機づけタイプと入学後に専門的学習を開始し初めて挑んだ小テスト成績とを比較した。</p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>卒業時成績と高校偏差値の間にやや相関がみられたが,卒業時成績と入試区分・入学前実力テストの間に相関はみられなかった。次に卒業時成績は1年次4月初回小テスト成績の間にやや相関がみられ,1年次前期各月末・1年次前期~3年次前期の各学期末成績の間にそれぞれかなりの相関がみられた。また卒業時成績と1年次基礎医学科目(解剖学・運動学・生理学)成績との間でもかなりの相関がみられた。そして卒業時に学習動機づけが外的調整の学生は1年次4月初回小テストで一番低い成績であった。また1年次4月末成績で留年・退学者のうち66.7%が平均点より標準偏差以上,下回っていた。留年・退学・国家試験不合格者のうち81.8%が基礎医学科目成績において平均点より標準偏差以上,下回っていた。</p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>入学前の学力は卒業時成績には影響しない。入学後の1年次前期成績,さらに1年次4月末成績ですでに卒業時成績とかなりの相関があり,1年次4月末には成績不振者を発見できることが示唆された。ゴールデンウィーク前には成績不振者を特定し,連休中に知識を整理し直すような課題の提示が必要である。また連休明けには補習を実施し,学習時間の確保,学習方法の指導を行うべきである。理学療法学のように基礎分野,専門基礎分野,専門分野という積み上げ型の学習では,入学直後から適切な学び方をすることが大切である。特に理学療法学の根幹である基礎医学科目ができていると卒業時にも良い成績であることが明らかとなった。また1年次4月初回小テストで成績が悪い学生は卒業時にも学習動機づけが低いことがわかった。入学当初から学習は単なる暗記ではなく理解し自分で説明できる「生きた知識」を備えることを指導し,小テストで良い成績が取れるよう導くべきである。それによって学生は有能感をもち,学習動機づけも高めていけると考える。</p>