著者
成田 亜希 安井 稚子
出版者
一般社団法人 日本予防理学療法学会
雑誌
日本予防理学療法学会雑誌 (ISSN:24369950)
巻号頁・発行日
pp.JPTP-D-22-00014, (Released:2023-04-28)
参考文献数
11

【目的】近隣2 市の理学療法士派遣事業の活動内容から,特別支援教育における理学療法士の役割と今後の展望を示す。【方法】A 市とB 市の教育委員会が実施している地域の公立小・中学校の特別支援学級・通常学級への理学療法士巡回訪問の内容を比較する。【結果】2 市ともに,生活指導,介助方法の指導,相談業務等を行うが,2 市が大きく異なる点は,A 市が医師の指示の下,肢体不自由児に医療行為を実施するのに対し,B 市は知的障害,発達障害児も対象であり,医療行為に代わり医療機関等の紹介や補装具業者との連携を図るところである。【考察】 理学療法士は,対象者や家族,教員の思いを直接聞きながら,学校内生活をサポートできる。また,継続した支援により児童生徒の特性を理解した進路のアドバイスも可能となる。特別支援教育における理学療法は,医療の知識や肢体不自由児への理学療法に加え,学校教育の知識,知的障害・発達障害児への学習場面での環境調整・課題難易度の設定等も重要である。
著者
成田 亜希
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.33-37, 2018 (Released:2018-03-01)
参考文献数
5

〔目的〕成績不振者を出さないような的確な学習支援をどのタイミングで行うかを検討する.〔対象と方法〕理学療法士養成短期大学を卒業した88名を対象とした.卒業時の成績と入学前の学力や在学中の成績,学習動機づけとの比較を行った.〔結果〕入学前の学力は卒業時の成績には影響しないことが示唆された.入学後,1年次4月末には成績不振者を発見できることが確認できた.また基礎医学科目の成績が良いと卒業時の成績も良く,1年次4月初回の小テストで成績が悪い学生は卒業時でも学習動機づけが低いこともわかった.〔結語〕入学当初から学習は単なる暗記ではなく理解し説明できる「生きた知識」を備えることを指導し,普段の小テストから良い成績が取れるよう導くべきである.それによって学生は有能感をもち,学習動機づけも高めていける.
著者
成田 亜希
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2016, 2017

<p>【目的】</p><p></p><p>近年,理学療法士学生の学力や学習動機づけの低下が目立っている。このような学生の学力や学習動機づけを向上させ,国家試験合格へと導くことは教員の責務であると言える。そこで本研究では的確な学習支援を行うため,卒業生を対象に卒業時成績や卒業時の学習動機づけが入学前学力や在学時成績とどのような関係にあるのかを探索した。また成績不振者を出さないような学習指導をどのタイミングで行っていくのかを検討した。</p><p></p><p>【方法】</p><p></p><p>理学療法士養成校を卒業した88名を対象に調査を実施した。卒業時成績は模擬試験成績を用いた。入学前学力は高校偏差値,入試区分,入学前実力テスト(国語)の成績を用い,在学時成績は入学後初回小テスト,主要科目において毎時間行う復習テストの月集計,各学期末に行う模擬試験成績を用い,卒業時成績と比較した。自己決定理論に基づく学習動機づけに関する質問紙調査は3年次国家試験直前に実施した。その学習動機づけタイプと入学後に専門的学習を開始し初めて挑んだ小テスト成績とを比較した。</p><p></p><p>【結果】</p><p></p><p>卒業時成績と高校偏差値の間にやや相関がみられたが,卒業時成績と入試区分・入学前実力テストの間に相関はみられなかった。次に卒業時成績は1年次4月初回小テスト成績の間にやや相関がみられ,1年次前期各月末・1年次前期~3年次前期の各学期末成績の間にそれぞれかなりの相関がみられた。また卒業時成績と1年次基礎医学科目(解剖学・運動学・生理学)成績との間でもかなりの相関がみられた。そして卒業時に学習動機づけが外的調整の学生は1年次4月初回小テストで一番低い成績であった。また1年次4月末成績で留年・退学者のうち66.7%が平均点より標準偏差以上,下回っていた。留年・退学・国家試験不合格者のうち81.8%が基礎医学科目成績において平均点より標準偏差以上,下回っていた。</p><p></p><p>【結論】</p><p></p><p>入学前の学力は卒業時成績には影響しない。入学後の1年次前期成績,さらに1年次4月末成績ですでに卒業時成績とかなりの相関があり,1年次4月末には成績不振者を発見できることが示唆された。ゴールデンウィーク前には成績不振者を特定し,連休中に知識を整理し直すような課題の提示が必要である。また連休明けには補習を実施し,学習時間の確保,学習方法の指導を行うべきである。理学療法学のように基礎分野,専門基礎分野,専門分野という積み上げ型の学習では,入学直後から適切な学び方をすることが大切である。特に理学療法学の根幹である基礎医学科目ができていると卒業時にも良い成績であることが明らかとなった。また1年次4月初回小テストで成績が悪い学生は卒業時にも学習動機づけが低いことがわかった。入学当初から学習は単なる暗記ではなく理解し自分で説明できる「生きた知識」を備えることを指導し,小テストで良い成績が取れるよう導くべきである。それによって学生は有能感をもち,学習動機づけも高めていけると考える。</p>
著者
成田 亜希 阿曽 絵巳
出版者
保健医療学学会
雑誌
保健医療学雑誌 (ISSN:21850399)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.96-104, 2018-10-01 (Released:2018-10-01)
参考文献数
9
被引用文献数
1

理学療法士学生は高等学校卒業後,現役で入学する学生が多く,発達過程では青年期にある.青年期の自己像を形成する上で自尊感情,自己愛,対人恐怖心性が存在し,理学療法臨床実習においても,これらの要素が影響すると考えられる.そこで89 名の学生を対象に自尊感情・自己愛・対人恐怖心性が実習成績とどのように関係するかを調査した.各期実習において自己を肯定的に捉えている方が実習成績は良い結果であった.また最終実習でのみ,自己愛が高い学生ほど実習成績は良かった.対人恐怖心性と実習成績の間には負の関係性が示唆された.理学療法臨床実習では,社会性を身につけておくこと,かつ学生が自己に対して肯定的な感覚を持つことができるような指導をする必要がある.