著者
小林 三智子 岡田 幸雄 戸田 一雄
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 創立40周年日本調理科学会平成19年度大会
巻号頁・発行日
pp.11, 2007 (Released:2007-08-30)

【目的】 味覚感受性と月経周期との明確な関連性の報告は少ない。我々は、規則的な月経周期の場合には、月経期には電気味覚感受性が有意に低くなることを報告した(1)。本研究では、不規則な月経周期の場合の電気味覚閾値と、認知閾値の変化について検討した。【方法】 19~23歳の健康な女性25名を対象とし、婦人体温計を用いて3ヶ月間基礎体温を記録させた。そのうち、不規則な月経周期をもつ者12名について報告する。味覚感受性の測定には、電気味覚計とろ紙ディスク法を用いた。測定時期は、月経期(月経期間中)・黄体期(月経開始前1週間)・卵胞期(月経終了後1週間)の3期とし、それぞれの期に各1日測定を実施し、3回の平均値を閾値とした。5基本味は、甘味(スクロース)、塩味(塩化ナトリウム)、酸味(酒石酸)、苦味(硫酸キニーネ)及びうま味(グルタミン酸ナトリウム)を用いた。【結果】 電気味覚閾値では、舌尖部の茸状乳頭刺激、舌縁後方の葉状乳頭刺激ともに、月経期は黄体期と卵胞期に比べ高い値となり、月経期には電気味覚感受性が低いことが認められた。一方、ろ紙ディスク法により求めた認知閾値は、甘味・塩味及び苦味では月経周期による有意差は認められなかった。しかし、酸味では茸状乳頭において、月経期 (19.6mM)は黄体期(10.4mM)・卵胞期(14.2mM)に比べ有意に高い値を示し、味覚感受性が低いことが認められた。また、うま味では茸状乳頭において、月経期には黄体期に比べ有意に味覚感受性が高いことが認められた。 (1)小林三智子、岡田幸雄、戸田一雄:日本家政学会第59回大会研究発表要旨集(2007)
著者
小林 三智子 岡田 幸雄 戸田 一雄
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.16, pp.136, 2004

【目的】味覚感受性の測定にはその目的によって種々の方法が用いられるが、臨床の場では電気味覚計を用いた検査と、ろ紙ディスク法の検査が多く使用される。本報告では、両者の測定法を用い、若年女性の味覚感受性を測定することを目的とした。<br>【方法】健康な19歳から21歳の女子学生を対象とし、口腔内には口内炎やう歯による痛みのないこと、食後1時間以上経過していること、非喫煙者であることを確認した。電気味覚検査は電気味覚計(TR-06)を用い、刺激部位は、舌尖より2cmの茸状乳頭領域の左右舌縁(茸状左・茸状右)、舌縁後方葉状乳頭領域の舌根に近い左右(葉状左・葉状右)の部位の計4箇所とした。ろ紙ディスク法検査には直径6mmの円形ろ紙を用い、試料溶液はスクロース、塩化ナトリウム、DL-酒石酸、硫酸キニーネ及びグルタミン酸ナトリウムの五味とした。刺激部位は、舌尖より2cmの左舌縁とした。<br>【結果】電気味覚検査の結果は、茸状左-1.38dBおよび茸状右-1.59dB、葉状左0.4dB、葉状右0.2dBであった。葉状乳頭と茸状乳頭のそれぞれ同じ部位において、左右の差は認められなかった。しかし、部位が異なると、茸状乳頭と葉状乳頭の左右ともに、舌尖部の茸状乳頭のほうが有意に低い値を示し、味覚感受性が高いことが示された。一方、ろ紙ディスク法により求めた五味の閾値はそれぞれ、甘味(スクロース)160mM、塩味(塩化ナトリウム)320mM、酸味(DL-酒石酸)40mM、苦味(硫酸キニーネ)0.625mM及びうま味(グルタミン酸ナトリウム)160mMであった。
著者
小林 三智子 岡田 幸雄 戸田 一雄
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成17年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.16, 2005 (Released:2005-09-13)

【目的】利尿剤として用いられるアミロライドには、塩味抑制効果があることがマウス1)やハムスター2)では確認されている。しかし、ヒトにおいてもアミロライドに塩味抑制効果があるかは明らかにされていない。本研究では、アミロライドの塩味味覚感受性の影響について検討した。【方法】19歳から21歳の健康な非喫煙者の女性をパネルとし、測定の際には口腔内に口内炎やう歯による痛みのないこと、食後1時間以上経過していることを確認した。味覚感受性の測定には、上昇系列の全口腔法を用いた。塩味のコントロール溶液にはNaClを用い、Na+とCl-の影響を調べるために対象としてCH3COONaとLiClの検討を行なった。あわせて、5基本味の他の4味スクロース、DL-酒石酸、硫酸キニーネ及びグルタミン酸ナトリウムについても同様にアミロライドの効果を検討した。【結果】全口腔法上昇系列で求めた塩味NaClの認知閾値は、1.25mMであった。事前にアミロライドを味わった後の認知閾値は2.5mMとなり、アミロライドによる塩味抑制効果が認められた。それに対して、他の4つの基本味では、甘味・苦味・うま味ではアミロライドの抑制効果が認められなかったが、酸味には抑制効果が認められた。アミロライド処理は、ヒトにおいて、塩味と酸味の応答はともに抑制されることが認められた。1)Miyamoto,T.,Miyazaki,T.,Okada,Y.and Sato,T.:J.Neurosci.Methods,64,245-252,19962)Gilbertson,T.A.,Roper,S.D.andKinnamon,S.C.:Nesron,10,931-942,1993
著者
佐々木 啓真 藤田 幸弘 戸田 一雄 相馬 邦道
出版者
日本顎口腔機能学会
雑誌
日本顎口腔機能学会雑誌 (ISSN:13409085)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.1-10, 1996-06-30

口唇の表面麻酔による咀嚼運動の変化を筋電図学的に検討する目的で, 成人男子8名を被験者とし, 麻酔の前後で咀嚼時の咬筋, 顎二腹筋筋活動に変化が見られるか否かを検討した.記録は麻酔前から麻酔40分後の6ステージにかけて行い, 各ステージにおいてガム咀嚼運動を30ストロークずつ行わせ, その際の下顎運動をMKG(Model K-5)を用いて記録すると同時に, 咬筋, 顎二腹筋前腹より表面筋電図を記録した.解析方法は, 各ステージにおける10ストロークの咬筋, 顎二腹筋の筋放電持続時間, 積分値, ならびに下顎運動と筋活動との時間的対応関係に関してそれぞれ計測を行い, 10ストロークの平均値を求めた.そして, ステージの時間的推移に伴うこれらの平均値の変化に関して比較, 検討した.その結果, 咬筋の筋放電持続時間および積分値については, 変化の認められないものが多く, 一方顎二腹筋の筋放電持続時間および積分値については, 麻酔により減少するものが多く認められた.また, 下顎運動と筋活動との時間的対応関係については, 咬筋に関しては閉口相開始から筋活動開始までの時間が減少するものが6名と多く認められ, 顎二腹筋に関しては咬合相開始から筋活動開始までの時間が麻酔により延長しているものが7名と多く認められた.従って, ヒトの咀嚼運動に口唇からの触覚・圧覚といった体性感覚入力が関与し, その関与は, 閉口運動より開口運動に対して大きい可能性が示唆された.