著者
小林 瑠美子 小谷 スミ子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成17年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.171, 2005 (Released:2005-09-13)

【目的】旧暦の2月15日、涅槃会(お釈迦様が亡くなった日)に、佐渡地方では「やせごま(やせうま、しんこだんご)」を供えお参りする。これは団子の一種で、直径5cm、長さ15cm位の円筒形をしていて、輪切りにすると金太郎あめのように同じ模様がでる。本研究ではやせごまが作られるようになった由来、風土との関係を調べると同時に、佐渡以外の地域に見られる類似した伝統食を調べることを目的とした。【方法】佐渡在住者10名を対象に2004年11月_から_12月に聞き取り調査を行った。文献調査は、日本の食生活全集および各種資料を用いた。【結果】1.聞き取り調査の結果、「やせごま」は国仲平野の新穂(にいぼ)、畑野地区を中心に、両津、金井、佐和田地区で作られていた。羽茂(はもち)地区では「くじらもち」の名で作られており下北半島で端午の節句に作られる「べこもち(くじらもち)」との関連が伺えた。小木地区では法事にも作られていた。相川地区では寺で作るが家庭で作る習慣はなく、真野、赤泊地区ではあまり作られていなかった。2.涅槃会の供え菓子は主に北陸地方に見られた。3.長野県全般で作られている「やしょうま」、長野県に隣接する新潟県津南町の「やしょうま(みみだんご)」と岐阜県恵那市の「花くさもち」、長野から離れた福井県遠敷郡の「花くず」は「やせごま」に似た作り方であった。4.北陸地域では「涅槃会のだんごまき」をする風習が残っており、新潟県中越では「だんごまきの涅槃だんご」、富山県氷見市や魚津市では「お釈迦のだんご」、福井県では「ねはんだんご」と呼ばれる赤、白、緑、黄に彩られた大小さまざまな団子がお寺でまかれていた。能登半島の寺では「犬の子(いんのこ)」と呼ばれる団子をまく風習が残っていた。
著者
馬場 景子 中野 典子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成17年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.33, 2005 (Released:2005-09-13)

山芋(自然薯)は、日本にある在来種の代表的なものである。しかし儀礼食として捉えられることが、今までほとんどなかった。馬場・中野は、山芋がとろろ飯として調理され、正月に食べられることに着目し調査を行なってきた。 調査から、正月に食べられるとろろ飯には、日常的に食べられるとろろ飯とは異なり、ハレの食としてとろろ飯を食べる文化的な理由が明らかになってきた。正月のとろろ飯の食習の特長の一つは、地域により、付加された意味が異なっている点である。民衆を中心に行なわれてきた行事一般に言えることであるが、中心から周辺に伝播されるに従い、本来の意味が失われ、伝播の途中から別の意味が含まれることがある。正月のとろろ飯食習は、まさにこの文化伝播の代表的な例である。 しかしこの食習は単に一地域の行事食ではなく、東日本を中心に正月の行事を関わりの深い行事食として分布傾向は、東北地方、甲信越、中部にはこの食習慣が多く分布している。東高西低の分布を示している。 本発表では、次の三点に焦点をあてる。(1)分布状況(日本での分布)(2)付随する行事(3)節句としての正月料理このことを考察することにより、正月のとろろ飯研究の重要性を示唆していく。
著者
金子 真由美 後藤 雅広 岩田 聖美 三尋木 健史 長谷川 峯夫
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成17年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.118, 2005 (Released:2005-09-13)

【目的】フライ料理は人気のある献立である。しかし、最近では廃油処理のわずらわしさや環境への配慮から、とくに単身世帯、少数世帯において敬遠されがちな調理方法といえる。本研究では、マヨネーズを使って、揚げ調理の代替となる簡便な調理方法を探究することを目的とした。【方法】殻を取り除き筋切りしたエビ(中)の表面に、小麦粉、一般的な卵黄型マヨネーズ、パン粉(乾燥)を順につけ、オーブンで焼成した。外観と官能評価により適切な加熱条件を調べた。対照として、一般的な家庭での調理方法に従い、エビに小麦粉、卵、パン粉をつけ、揚げ調理したものを調製した。それぞれについて酸分解法による脂質の定量、SD法を用いた官能評価を行った。【結果】マヨネーズの添加量は、エビ1尾につき3gとし、240℃のオーブンで10分間焼成したとき、最も好ましくフライの食味が得られた。脂質の定量結果から、マヨネーズをつけて焼成したものは、揚げ調理した対照に比べ脂質が少なくなる傾向が示された。官能評価から、マヨネーズをつけて焼成したものよりも、揚げ調理をした対照の方がサクサク感があると評価されたが、ジューシー感、かたさ、好ましさでは有意な差はなかった。以上の結果から、マヨネーズを用いたフライの調理方法は、揚げ調理の簡便な代替方法になりうることが示された。
著者
魚住 惠
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成17年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.80, 2005 (Released:2005-09-13)

目的:岩手県北地域には、砕いた豆腐を加えて打つ“そば切り”(以下“そば”と記す)が伝わっている。このそばには、現在一般的につなぎとして加えられている小麦粉ややまのいもといったものは入れられず、打つときに鶏卵が加えられることがあるが、なければ豆腐と熱湯だけで打たれるそばである。この豆腐の役割はつなぎと考えられるが、現在、豆腐をそばのつなぎとして用いる例は全国的にも珍しいものであり、実際の効果についての報告は見られない。そこで、豆腐がそばのつなぎとして果たす役割を調べることを目的として実験をおこなった。方法:そば粉にペースト状にした木綿豆腐、豆乳、および豆腐とにがりを、それぞれの量を変えて水と共に添加し、容器法により水回しをおこない生地を調製した。生地を薄く延ばし、一定の厚さ、大きさに整え所定の時間茹で、流水で冷却した。生および加熱後の生地のテクスチャーを測定し、豆腐、豆乳、にがり、加熱時間が生地の物性におよぼす影響を調べた。結果:豆腐および豆乳には加熱後のそばの硬さを増加させ、そばを切れにくくさせる効果が認められた。にがり添加量は、豆乳によるつなぎ効果に影響を与えた。茹で時間により硬さは減少した。豆腐および豆乳の添加は加熱後におけるそばの水の吸収に影響を与えた。
著者
阿部 雅子 小澤 好夫 森光 康次郎
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成17年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.115, 2005 (Released:2005-09-13)

【目的】ショウガ科植物であるミョウガ(Zingiber mioga Roscoe)は特有の香りとさわやかな辛味を有し、薬味や漬物、汁の実として広く利用されてきた日本古来の香辛野菜である。これまでに演者らはミョウガの辛味関連化合物としてMiogadial(aframodial)及び新規Miogatrialを同定し、これらの化合物が抗菌活性、血小板凝集阻害活性などを有することを報告してきた。本研究ではミョウガを調理することにより、これらの化合物がどのように変動するのか精査した。【方法および結果】市販の新鮮ミョウガを洗浄後、加熱調理としてスライスしたミョウガを試料とし、茹でる・炒めるなどの調理、また非加熱調理(漬物)として2分割したミョウガを試料とし塩漬け・酢漬け・味噌漬け・糠漬け・粕漬けなどの加工を施した。漬物は60日間を貯蔵期間として、それぞれ定期的に一定量を酢酸エチルで抽出しHPLCにてMiogadial 及びMiogatrialの定量を行い、新鮮ミョウガとその含有量を比較した。加熱調理においては5分以内の短時間の加熱では茹で操作、炒め操作ともにミョウガ花蕾中におけるMiogadial 、Miogatrialは約60%残存していた。調理中のミョウガからの溶出も検討するため茹で汁、炒め油について同様に分析した結果、油中への溶出が一部認められた。非加熱調理においては60日後のMiogadial 、Miogatrialの残存率が最も高いものは酢漬けであり、著しく減少したものは糠漬け、粕漬けであった。Miogadial 及びMiogatrialの変動に及ぼす要因について、現在検討中である。
著者
米山 陽子 平尾 和子 濱西 知子 高橋 節子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成17年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.54, 2005 (Released:2005-09-13)

【目的】玄米飯ならびに玄米桜飯を家庭用炊飯器により、加水温度を変えて短時間で炊飯する方法を検討した。玄米は吸水率が低く浸漬が必要であるが、浸漬時間を短くする目的で玄米に熱湯を加えて炊飯する方法と水で1時間浸漬後炊飯する方法を比較した。また、玄米の種類ならびに加水温度の違いが物性および食味特性に及ぼす影響について検討した。【方法】試料玄米は低アミロース米「たきたて」と「あきたこまち」の2種を用いた。玄米450gを洗米水切り後、National IH炊飯器 SR-A10Fに入れ熱湯を加え直ちに炊飯する場合(熱湯法)および水に1時間浸漬した後炊飯する場合(水浸漬法)の2種について比較した。加水量は1.8倍とし、桜飯の調味料は塩、醤油および酒を炊飯直前に加えた。飯の物性は改良型テンシプレッサーによる低・高圧縮2バイト法を用いて、集団粒法にて測定を行った。官能評価は加水温度の異なる玄米2種の飯および桜飯について評点法を用いて行った。【結果】物性測定において、「あきたこまち」は熱湯法が水浸漬法に比べてこし・粘りがある飯となり、桜飯においては付着・粘りがある飯となった。「たきたて」は玄米飯、桜飯ともに加水温度による差は認められなかった。官能評価の結果から「たきたて」の玄米飯は光沢・色・粘り・のみこみやすさがあり、硬さがないと評価され、嗜好において光沢・色の項目で「あきたこまち」よりも好まれた。「たきたて」の桜飯では光沢・ねばり・のみこみやすさがあり、硬さがないと評価され、嗜好では光沢・味・硬さ・弾力・粘り・のみこみやすさおよび総合評価の7項目において好まれた。しかし、玄米飯、桜飯ともに熱湯法と水浸漬法の差は特性評価、嗜好ともに認められず、熱湯法による炊飯は時間短縮が可能と考えられた。
著者
本間 伸夫
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成17年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.188, 2005 (Released:2005-09-13)

日本の諸文化が東西に大きく分けられることは、広く認められていることであり、食文化も例外ではない。特に、「食」がその風土に強く影響を受けることを考慮すると、より顕著に東西の違いが現われるものと推察される。なぜならば、日本列島の西東はすなわち南北となるので、風土にとって重要因子である気温の影響を強く受けるからである。東西の対立の例を二つ図示する(図省略)。一つは、食文化以外のものとして「居る」方言の分布であり、次は有名な雑煮餅の形、□と○の分布である。前者の「いる」「おる」を分けるラインが新潟県あたりに位置すること、後者で庄内・佐渡・能登が○になっていることに惹き付けられた。この分布図(図省略)から、日本海上に佐渡島を持つ新潟県はかなり興味ある位置にあることにヒントを得て、主に日本海側における日本の食文化の東西という問題について調査研究を始め、現在に至っている。しかし、雑煮の餅がなぜ西が丸で東が四角であるか?納豆はなぜ東の食文化なのか?というような問題は大き過ぎて、手に負えないままである。以下、考察はできるだけ抑えながら、食文化の東西について調査の過程から得られたものに「聞き書」(農文協)という全国的データを加えた、具体的事例とその背景について紹介していきたい。例えば、正月魚としてのサケとブリ、昆布巻の芯魚、納豆、味噌、食用菊、枝豆、サルトリイバラ団子と柏餅、ナスとカブの名前など。また、日本海側に立地する新潟の立場から、日本海沿岸特有の食文化および、新潟独自の食文化についても紹介する。例えば、イゴグサの練り物、「いずし」、節句の三角粽に笹団子、「のっぺ」、新潟県・村上のサケの食文化など。
著者
小林 三智子 岡田 幸雄 戸田 一雄
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成17年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.16, 2005 (Released:2005-09-13)

【目的】利尿剤として用いられるアミロライドには、塩味抑制効果があることがマウス1)やハムスター2)では確認されている。しかし、ヒトにおいてもアミロライドに塩味抑制効果があるかは明らかにされていない。本研究では、アミロライドの塩味味覚感受性の影響について検討した。【方法】19歳から21歳の健康な非喫煙者の女性をパネルとし、測定の際には口腔内に口内炎やう歯による痛みのないこと、食後1時間以上経過していることを確認した。味覚感受性の測定には、上昇系列の全口腔法を用いた。塩味のコントロール溶液にはNaClを用い、Na+とCl-の影響を調べるために対象としてCH3COONaとLiClの検討を行なった。あわせて、5基本味の他の4味スクロース、DL-酒石酸、硫酸キニーネ及びグルタミン酸ナトリウムについても同様にアミロライドの効果を検討した。【結果】全口腔法上昇系列で求めた塩味NaClの認知閾値は、1.25mMであった。事前にアミロライドを味わった後の認知閾値は2.5mMとなり、アミロライドによる塩味抑制効果が認められた。それに対して、他の4つの基本味では、甘味・苦味・うま味ではアミロライドの抑制効果が認められなかったが、酸味には抑制効果が認められた。アミロライド処理は、ヒトにおいて、塩味と酸味の応答はともに抑制されることが認められた。1)Miyamoto,T.,Miyazaki,T.,Okada,Y.and Sato,T.:J.Neurosci.Methods,64,245-252,19962)Gilbertson,T.A.,Roper,S.D.andKinnamon,S.C.:Nesron,10,931-942,1993
著者
兒嶋 高志 志村 洋 杉江 明子 青山 忍 吉田 一也
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成17年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.141, 2005 (Released:2005-09-13)

【目的】日本における鶏卵消費量は約250万tであり、その内約半量が家庭用としてスーパーマーケット等で販売されている。一般的に生鮮物(生魚、野菜等)に対して持つイメージと同様に、鶏卵も産まれたての方が美味しく、卵料理についても同様に産まれたての鶏卵を用いた方が美味しいと思われがちであるが、科学的な根拠が示されることは少ない。そこで本研究では、低温管理における鶏卵の産卵後日数が、代表的な卵料理である茹卵と厚焼卵の物性と食味特性等に与える影響について、様々なデータを取得して検討を行い、結果を得たので報告する。【方法】産卵された鶏卵を0から10日まで10℃にて保管し、EGGマルチテスタを使用してハウ・ユニットを測定した。さらに茹卵と厚焼卵を調製してpH、破断応力、食味特性等について測定を行った。【結果】今回の試験の結果、茹卵、厚焼き玉子共に産まれたての鶏卵を用いたものより、10℃である程度保存した鶏卵を用いた場合の方が、より美味しいと評価されるものを調製することが出来た。茹卵については、経時的に鶏卵の卵白部pHが上昇し、脱殻性が向上した。また茹卵としての美味しさについても、卵白の食味(食感)が良くなる、茹卵らしい香り(硫化水素臭)が生じてくる、というような要素で評価が上がった。厚焼き玉子については、もろく離水の多い食味から経時的によりしっかりとした食感への移行が見られ、卵らしい香り(卵風味)についても経時的に評価が上がる傾向が見られた。
著者
小川 久惠 豊満 美峰子 松本 仲子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 平成17年度日本調理科学会大会
巻号頁・発行日
pp.104, 2005 (Released:2005-09-13)

[目的] 鶏卵は、抗菌性が高く、比較的保存に耐えられることは、一般にはあまり知られておらず、消費者は、生鮮食品として産卵後の時間が短いほどよしとし、生産者はそれに応じて可能な限り、産卵後時間経過の短いものを市場に提供しようと労力を費やしている。そこで鶏卵の産卵後の保存が、食味に及ぼす影響について検討を行った。[方法] 検討方法は鶏卵の性状測定と、官能評価によった。試料の鶏卵は、同一条件で産卵させたものを用い、これを冷蔵(5℃)および常温(15から20℃)で保存し、それぞれ保存日数(0.5,10,20,40日間)を変えたものを使用した。性状についてはpH、重量、ハウユニットの変化を測定した。官能評価は3種の調理(ゆで卵、卵豆腐、煎り卵)をおこない、7段階の評点法で評価した。パネルは20から60歳代の女性15名で構成し、評価を3回繰り返して行い、その平均値を採用した。[結果] pHは、保存0日では酸性を示すが、日を経るごとにアルカリ性に傾いた。重量は、経過日数ごとに暫減し、最終的に冷蔵保存で2%、常温保存で7%の減少がみられた。ハウユニットは、日数の経過に従って数値の減少がみられた。いずれも冷蔵保存に比べ、常温保存の変化が大であった。ゆで卵の官能評価は、保存0日を除いて、冷蔵、常温保存ともに保存方法、保存日数による顕著な差がなく評価されたが、保存0日では卵白の味、テクスチャーの評価が顕著に低値であった。卵豆腐、煎り卵についてはいずれも保存方法、保存日数による顕著な差がなく評価された。以上から、鶏卵は少なくとも産卵後40日までは、味覚上の変化がないといえよう。