著者
辻野 睦 内田 基晴 手塚 尚明 高田 宜武
出版者
公益社団法人 日本水産学会
雑誌
日本水産学会誌 (ISSN:00215392)
巻号頁・発行日
vol.86, no.3, pp.184-195, 2020-05-15 (Released:2020-05-29)
参考文献数
39
被引用文献数
2 2

全国12のアサリ漁場干潟における線虫類の分布と形態的特徴について底質環境およびマクロベントス現存量との関係を調べた。線虫類の生息密度は有機物量が多く粒径が細粒部に偏り,バクテリア生菌数が多く還元的な干潟で高いと言えた。線虫類の体長や体幅は底質の粒度組成および酸化還元電位といった物理化学的な環境と関係していることが示された。線虫類とマクロベントスの湿重量には正の相関関係があり,線虫類の現存量が高いと考えられる底質環境の干潟では,アサリを含むマクロベントス現存量も高くなる傾向が認められた。
著者
中西 哲也 井関 和夫 宮下 幸久 小池 一彦 浜口 昌巳 手塚 尚明
出版者
広島大学大学院生物圏科学研究科
雑誌
生物圏科学 (ISSN:13481371)
巻号頁・発行日
vol.49, pp.21-30, 2010

2009年の6月29日-7月2日と8月22-23日に,周防灘において水温,塩分,クロロフィルα(以下chl. α),濁度の鉛直分布を調べた。6-7月にはchl. αの亜表層極大と海底高濁度層がほぼ調査海域全体に形成されていた。8月にはchl. α の亜表層極大は弱くなり,6-7月と較べて海底高濁度層の発達が顕著で,chl. α濃度の増加も見られた。6-7月と8月の両観測期間は,それぞれ小潮と大潮の時期に相当していたことから,潮汐周期が海底高濁度層の発達に影響を及ぼしている可能性が示唆された。また,両観測期間中に,灘西部の2観測点(水深10mの浅海域と30mの沖合域)において1-3時間毎の連続観測を行って日周変動を調べた。海底高濁度層は水温・塩分(および密度)の急激な変化時に最大値を示し,濁度層の分布パターン・厚さは潮汐周期と底層の水温・塩分・密度分布によく対応していた。さらに,塩分-chl. α,塩分-濁度,chl. α-濁度の関係から,粒状懸濁物を陸(河川)起源,海底高濁度層,亜表層クロロフィル極大,異水塊に由来するものに分別することができた。During June 28 to July 2 and August 22 to 23 in 2009, we investigated the distributiosn and diurnal variations of temperature, salinity, chlorophyll a (chl.α) and turbidity in Suo-sound, Seto Inland Sea. In June to July observation, the subsurface chl.α maximum layer (SCM) and the bottom turbid layer (BTL) were found throughout the Suo-sound. In August, the SCM almost diminished but the BTL significantly developed compared to June to July observations and chl.α also showed a noticeable increase in the bottom layer. June to July and August observations corresponded with a neap and spring tides, suggesting a close relation between the development of the BTL and the tidal cycle. The turbidity values of BTL showed a maximum when temperature and salinity changed rapidly, and the distribution pattern of the BTL well-corresponded to those of temperature and salinity, particularly in spring tide in August. Particulate matter was classified into four groups such as terrigeous matter, BTL, SCM, and different water mass according to salinity-chl.α, salinity-turbidity, and chl.α-turbidity relationships.