- 著者
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高田 宜武
- 出版者
- 日本貝類学会
- 雑誌
- Venus : journal of the Malacological Society of Japan (ISSN:13482955)
- 巻号頁・発行日
- vol.60, no.3, pp.157-172, 2001-09-30
- 被引用文献数
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4
九州天草の傾斜の緩やかな転石地潮間帯において, 同所的に生息する9種類の藻食性貝類の日周期活動を観察した。観察は夏期に4回(うち2回を大潮時, 2回を小潮時に)行った。3種類の巻貝類(スガイ・アマガイ・タマキビ)では, 転石上面で移動中の個体を「活動中」, 転石上面で停止しているものを「停止中」として記録した。5種類のカサガイ類(コウダカアオガイ・クモリアオガイ・アオガイ・ホソスジアオガイ・ヒメコザラ)と1種類のヒザラガイ類(ケハダヒザラガイ)では, 移動の有無に関わらず, 転石上面に出現している個体を「活動中」として記録した。昼夜および潮汐の状態と関連して, 活動パターンの種間変異が認められた。アマガイとタマキビは, おもに夜間の干出状態で活動した。ケハダヒザラガイとアオガイ類は, おもに夜間の干出状態と波に洗われている状態で活動した。スガイとヒメコザラは夜間によく活動し, 潮汐とは無関係であった。このような活動パターンを2つに類別すると, 活動期が限定されている種(ケハダヒザラガイ・アオガイ類・タマキビ・アマガイ)では貝の排泄した糞中の無機質含有量が少なく, 活動期が広範囲な種(ヒメコザラ・スガイ, およびイシダガミガイ)では糞中の無機質含有量が多い, という関連性が見出せた。活動期が広範囲な種は, 限定されている種と比較して, 冠水中の活動時に転石上面に沈殿した無機質粒子を摂食する機会が多いものと推測される。