著者
斎藤 和子
出版者
一般社団法人 日本人類学会
雑誌
Anthropological Science (Japanese Series) (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.108, no.2, pp.61-79, 2000 (Released:2008-02-26)
参考文献数
26

岩版•土版はこれまで, 石製または土製という材質の違いはあっても同一形式に属し, 連続的な変化を遂げ, 6型式に分類されるとされてきた。そして, 初現形態である第1類を見ると, 土偶と何ら形態的な関係がないと考えられ, ゆえに, 岩版•土版は土偶と形態的に無関係であるとされてきた。しかし本研究の解析の結果, 1) 岩版•土版は同一形式に属するとしても, 連続的に変化するとはいいがたいこと 2) 細別されていた従来の6型式は, 3型式に大別されること3) 第2類•第3類の岩版•土版は, 土偶の人体意匠の表現様式に影響を受けていること, を指摘した。
著者
葛城 啓彰 鈴木 安里 長曽 一成 岡村 勝文 斎藤 和子
出版者
Japanese Association for Oral Biology
雑誌
歯科基礎医学会雑誌 (ISSN:03850137)
巻号頁・発行日
vol.38, no.1, pp.57-64, 1996-02-20 (Released:2010-10-28)
参考文献数
22
被引用文献数
3 1

強酸性電解水の細胞毒性について, C3Hマウス皮下組織由来繊維芽細胞であるL929細胞を用い細胞毒性について検討した。細胞毒性は, 細胞生死判別法におけるトリパンブルー排拙試験に準じたFDA-PI二重染色法によるフローサイトメトリー法, コロニー形成法, MTTアッセイにより行った。FDA-PI二重染色法によるフローサイトメトリー法でLD50値は, 血清非存在下で25W/W%, 10%血清存在下で43W/W%であった。コロニー形成法によるLD50値は25W/W%, MTTアッセイによるLD50値は20W/W%であった。以上の結果より, 強酸性電解水は, 繊維芽細胞に対し, 細胞毒性を示し, この細胞毒性は, 5~20%血清存在下でも残存することが示された。これらの結果より, 強酸性電解水の生体応用に関しては, 外用に限定されることが望ましく, 十分な注意が必要である。
著者
荻原 和孝 加藤 千穂美 斎藤 和子
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.628-640, 1995-12-28
被引用文献数
8 6

本実験は,歯周病原性細菌に対する多形核白血球(PMN)の活性酸素産生[Chemiluninescence (CL)反応],食・殺菌能への補体・抗体の影響を明らかにすることを目的とした。PMNはカゼイン刺激マウス腹腔内から採取した。また,歯周病原性細菌としてActinobacillus actinomycetemcomitans; Aa, Porphyromonas gingivalis; Pg, Fusobacterium nucleatum; Fnを使用した。マウスに生菌免疫を施し,超音波破砕抗原に対する抗体価をELISA法で測定した。IgGがAaとPg免疫マウス,IgMがFn免疫マウスで高かった。CL反応はルミノール依存性のCL反応を測定した。食菌能は各反応液をスライドガラスに塗抹・乾燥し,メイ・グルンワルド・ギムザ染色後,顕微鏡を使用して観察した。菌の生残は,血清,抗体,PMN単独または組み合わせて反応させ,平板培地上でカウントした。CL反応の増加は,Aaが補体,Pgで補体・抗体の両方に依存したが,Fnは補体,抗体のどちらにも反応性を示さなかった。またFnはD-ガラクトース,N-アセチル-D-ガラクトサミン,マンナンによって抑制された。食菌能はAaとFnが補体,Pgが補体・抗体の両方の存在で増加した。しかし,補体,抗体,PMN単独または組み合わせによる殺菌効果は得られなかった。結論として,補体はAaのCL反応と食菌能の増加に,補体と抗体の両方がPgのCL反応と食菌能に関与した。また,FnはCL反応でレセプターの相互作用が関係したが,食菌能には補体を必要とした。しかし,補体,抗体は殺菌効果を示さなかった。
著者
鈴木 安里 葛城 啓彰 斎藤 和子
出版者
特定非営利活動法人日本歯周病学会
雑誌
日本歯周病学会会誌 (ISSN:03850110)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.179-191, 1993-03-27
被引用文献数
2

歯周病原細菌に誘導される多形核白血球(PMN)の,培養ヒト歯肉線維芽細胞(Gin-1)への傷害を観察し,歯周疾患における歯肉の傷害細胞としてのPMNの役割を明らかにしようと試みた。このため^<51>Cr標識したGin-1上で健常者PMNと,A. actinomycetemcomitans, A. viscosus, F. nucleatum, P. gingivalisを,それぞれ37℃で反応させ,Gin-1傷害の指標として細胞崩壊と細胞剥離を測定した。この結果,4時間までの反応ではどの系においても細胞崩壊は発現せず,Gin-1傷害は著明な細胞の剥離として観察された。PMN単独,P.gingivalisを除く菌単独での傷害作用はみられなかったが,菌とPMNとの混合により,細胞崩壊を伴わない著明なGin-1の剥離が発現した。この時のGin-1剥離は,反応時間の延長と,Gin-1に対するPMNの割合の増加に伴って上昇した。P. gingivalisは菌単独でも,PMNとの反応によっても1時間でほぼ同等のGin-1剥離率を示した。また,菌の浮遊液濃度が一定(1mg/ml)ならば,各菌種とPMNとの反応によるGin-1剥離率のあいだにはほとんど差はなかった。Gin-1剥離はα_1-PI, PMSF, 5%ヒト血清によって抑制されたが,酸性プロテアーゼインヒビターや活性酸素のスカベンジャーによる抑制はほとんど起らなかった。このとき,PMNから多量の活性酸素を誘導することが報告されているF. nucleatumをPMN刺激に用いると,α_1-PIによるGin-1剥離の抑制率は他の菌を用いたときと比較して有意に低いものとなった。これらの結果は,この実験におけるGin-1の剥離が,おもにPMNから放出される中性プロテアーゼによることを示している。またPMNとF. nucleatumの反応により放出される活性酸素によるプロテアーゼインヒビターの不活化作用が観察された。