著者
天野 完 西島 正博 新井 正夫
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.37, no.11, pp.2291-2299, 1985-11-01
被引用文献数
2

局麻剤が胎児心拍数・新生児neurobehaviorに及ぼす影響を妊娠正期正常分娩例を対象として検討し以下の結果を得た. 1.bupivacaine 35mg硬膜外投与後60分までに12.1%(12/99block)にominous patternが出現し2block後が母体低血圧に,5block後がuterine hyperactivityに起因する変化と思われた. 2.lidocaine200mg旁頚管内投与後30分までに27.7%(13/47block)にominous patternが出現したが母体低血圧に起因する変化はなく4block後30.8%の変化はuterine hyperactivityが誘因と思われた. 3.局麻剤投与後の胎児心拍数変化はいずれも一過性で変化のみられた群とみられない群で臍帯動脈血ガス分析で有意差はみられなかつた. 4.Amiel-Tison et al.のNACS(Neurologic Adaptive Capacity Scoring)による新生児neurobehaviorの評価では生後3〜6hで低スコアの傾向がみられるものの生後4日目には局麻剤投与群と無麻酔群での差はみられなかつた. bupivacaineの臍帯静脈血レベルは154.4±24.5ng/ml(UV/MV0.26)で生後4日自には71%の例で10ng/ml以下であつた. 妊娠正期正常例では局麻剤投与によりhypoxic stressが負荷され得るが一過性であり臨床的には何ら問題はない.しかしながらIUGRなどfetal reserve低下例では慎重な産科麻酔法の選択,より厳重な胎児管理が必要になるものと思われる.
著者
蔵本 博行 上坊 敏子 新井 正夫
出版者
社団法人日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.191-200, 1977-02-01

当院腫瘍外来では,昭和46年7月26日の開院以来,満3年にて登録数1,000名となつたので,これを集計し統計的考察を加えた. 1) 実登録患者977名中,30〜50歳が69.5%を占めた. 2) 悪性腫瘍患者は147名,15%と高率である.子宮頚癌は128例で,悪性腫瘍の86.4%を占めたが,C.I.S.とIa期はわずか1/3であつた.一方異形成上皮は全登録者中10.8%であつた.その他転移性癌が9例発見されている. 3) 癌患者の年代別罹患率は26〜40歳で10%以下,40〜55歳で約15%,61歳以上では50%を越える.疾患別平均年令は高度異形成上皮38.6歳,C.I.S.39.8歳,Ia期44.5歳,Ib期以上57.0歳であつた. 4) 癌患者の主訴は不正出血と血性帯下が55.9%と最多で,逆に無症状で癌検診希望は19.5%と低い. 5) 細胞診結果は陰性76.9%,疑陽性10.6%,陽性12.5%である.頚癌中偽陰性はなく,偽陽性は0.2%であつた.胃癌からの転移3例を診断している. 6) コルポ診異常を呈した頻度は正常上皮の10%(偽陽性),扁平上皮化生の50%,各異形成上皮の70%強,CISの90.9%,Ia期の89.5%,Ib期以上では97.5%である.L, F, G,の関与する頻度は異形成上皮では,軽度67.6%,中等度68.0%,高度75.0%で,またCIS 78.4%,Ia期84.2%となる.AUは単独の時40%は真ビラン,L, F, G,と合併する場合は約70%は悪性であつた. 7) CIS, Ia期とも各90%はコルポ診と細胞診との併用で診断し得ており,異形成上皮ではコルポ診の重要度が高い. 8) 狙い組織診の結果,L, F, GとAUの悪性率はそれぞれ30.9%,24.2%,26.9%,43.6%である. 9) 術前診断の正診率では,高度異形成の33.3%,CISの22.2%,Ia期の20%はそれぞれ1ランク低く診断され,初期浸潤疑性は75%がIa期であつた.
著者
田所 義晃 西島 正博 林 輝雄 根本 荘一 吉原 一 巽 英樹 島田 信宏 新井 正夫 鶴野 和則 飯島 美典 天野 広子
出版者
北里大学
雑誌
北里医学 (ISSN:03855449)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.267-274, 1988-06-30

北里大学病院における1982年1月から1985年8月までの胎児超音波計測値を用いて,胎児Biparietal Diameter (BPD),及びFemur Length (FL)の標準発育曲線を作成した。さらに妊娠期間の推定についても検討を行った。計測値は各週数ごとにまとめ,平均値,標準偏差を算出した。これを3点移動平均法で平滑化し,高次回帰曲線で近似した。BPDの平均発育は,y=(-3.45)×10^<-4>x^3+(2.34)×10^<-1>x^2+(-2.31)x+(2.73)×10となり,FLの発育はy=(-2.76)×10^<-2>x^<-2>+(3.70)x+(-3.18)×10(y: 計測値(mm), x: 過数)と示された。また同じ方法を用いて計測値から妊娠期間を推定する回帰式を作成した。BPD, FLからの平均妊娠期間の予測は,それぞれy=(0.17)x10^<-1>x^2+(5.34)×10^<-1>x+(79.7), y=(0.18)×10^<-1>x^2+(1.43)x+(82.8), (y: 妊娠期間(days), x: 計測値(mm))と示された。また±1.5SDで規定される範囲を推定の幅とすると,妊娠中期では±1週,末期では±2週程度の誤差で妊娠期間が推定されることが示された。