著者
日比野 英子 萩尾 藤江 タミー 木村 楠本 健司
出版者
大阪樟蔭女子大学
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集 (ISSN:18807887)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.105-117, 2010-01-29

本研究では、唇裂口蓋裂の女性のよりよい社会適応を目標としたプロジェクトの先駆けとなる、実践的活動の検討を行う。医師・臨床心理士・メーキャッパ-からなる治療チームを編成し、対象者に個別的な化粧施術と化粧指導を行ったが、その前後に、自分の顔・医療・化粧に関する質問紙および面接による調査を行った。その結果、対象者は医療や形成手術に満足していると表明したものの、顔の疾患部位である鼻と唇が気になっている人が多く、化粧については抵抗感があることが見いだされた。化粧意識に関しては、本チームでの化粧施術を体験する前は、化粧の否定的・消極的な対人的効果を語る人が多く、体験後は、肯定的かつ積極的な対自己効果を挙げる人が多かった。このような意識の変化から、この体験が、化粧への抵抗感を弱めて、化粧を通して自身の顔と向きあい、積極的に自分の顔を受容していく契機となりうる可能性が示唆された。また、化粧された新しい顔を他者に示すことが、より健康的なペルソナの構築にも役立つ可能性があると考えられ、対象者の社会生活がより適応的なものになり得るものと考察される。