著者
角田 治美 古舘 和季 日野 もえ子 落合 秀匡 太田 節雄 種山 雄一 沖本 由理
出版者
日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液・がん学会雑誌 (ISSN:2187011X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.5, pp.392-398, 2015 (Released:2016-02-06)
参考文献数
22

今回我々は,当施設(一小児専門病院として)での,最近24年間に行った思春期男性患者の精子保存の経験を報告する.2003年以前は,成人男性患者に対しても精子保存に関する全国的なガイドラインは存在しなかった.しかし我々は1990年以降思春期男児とその家族に治療関連性不妊と精子保存の説明を行い,同意が得られれば精子保存を行ってきた.現在まで精子保存の対象者は15例となり11例にはその説明を十分に行った.しかし2例は治療の緊急性により説明を行わず,2例は医師側の手違いにより説明を怠った.説明を行った11例中4例は精子保存を拒否している.保存を行った7例のうち2例が結婚し,1例は生殖補助技術により挙児を得,もう1例は妊孕性が回復し妻が自然妊娠した.1例は未婚であるが前処置軽減により造精能が回復した.現在まで精子保存を継続している患者は2例である.精子保存の本来の目的は妊孕性温存であるが,そのこと自体が精神的な励みになり,患者のQOL向上に寄与していると考えられる.良質な精子を得るためには治療前に精子を凍結保存するべきで,血液・腫瘍専門医は常にそのことを念頭に置き,患者に対して情報提供を行い他の医療者にも啓発していくことが必要である.精子保存に関する問題点として患者の適応基準,医療者側の情報提供の乏しさ,患者へのコミュニケーション不足,高い未婚率, 費用面などが挙げられ,今後我々は検討と対策を講じていかなければならない.
著者
日野 もえ子 石和田 稔彦 青木 孝浩 岡田 玲緒奈 奥主 朋子 大楠 美佐子 渡邉 哲 亀井 克彦 下条 直樹
出版者
日本小児血液・がん学会
雑誌
日本小児血液・がん学会雑誌 (ISSN:2187011X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.171-176, 2018

<p>小児がん患者では,真菌感染症が疑われる場合でも,真菌の分離同定はしばしば困難であり臨床経過により診断治療が行われることが多い.2004年1月から2014年12月までに当科で治療を受けた小児血液がん患者6人より分離同定された糸状菌2株,酵母5株に関し,薬剤感受性試験を行い,分離同定することの意義について後方視的に検討した.糸状菌はいずれも耳漏より検出された.1例では好中球抑制期間に外耳炎を繰り返し,<i>Aspergillus terreus</i>が同定された.薬剤感受性試験の結果よりミカファンギン(MCFG),ボリコナゾール(VRCZ)を併用し造血幹細胞移植を行った.酵母はすべてカンジダで,血液より分離同定された.<i>Candida tropicalis</i>分離例は治療開始後にβ-Dグルカンの上昇,脾膿瘍の悪化を認めたが感受性試験にてMCFG感受性良好であることを確認し治療遂行できた.<i>C. parapsilosis</i>,<i>C. glabrata</i>分離例はいずれもMCFG投与下のブレイクスルー感染であった.MCFG感受性良好として知られている<i>C. glabrata</i>に関しては薬剤感受性試験の結果,キャンディン系薬剤に対するMICの上昇が確認された.近年米国でもキャンディン系耐性カンジダが問題となっており,今後小児がん患者においても,治療効果が思わしくない際には薬剤感受試験を行うことが必要だろう.</p>