著者
明石 達生
出版者
一般財団法人 住総研
雑誌
住宅総合研究財団研究論文集 (ISSN:18802702)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.33-43, 2010 (Released:2018-01-31)

人口減少下でも,都市は拡散を続ける。モータリゼーションが立地選択を平準化したからである。住宅需要が減っても,高層住宅の建築紛争は郊外・地方部へと拡がる。緩めに設定された容積率の規制値が,利益最大化を当然とする開発企業の達成目標値となるからである。 そうやって生じる都市空間の混乱と荒廃は,デュラビリティ(耐久性)という不動産の特性 によって長期に是正されず,時とともに助長される。だから,都市の空間形成の制御は人口減少時代であっても計画に基づく規制を手段とすることが不可欠 だ。しかし,「緩いが硬直的」なわが国の土地利用規制を「安定的だが柔軟」なものに変えるにはどうしたらよいか。この主題を考察する。
著者
明石 達生
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.525-530, 2013-10-25 (Released:2013-10-25)
参考文献数
8

本稿は、通勤鉄道の混雑緩和という現象を題材に、東京大都市圏の1990年代から2010年に至る都市構造の大局的な変化を明らかにしたものである。通勤鉄道の最混雑区間の混雑率は、近年大部分の路線で200%を十分に下回っている。東京大都市圏の従業者の分布は、この20年間において、0-20km圏で約80万人減少し、20-40km圏で約100万人増加するという量で、都心部から郊外部へシフトした。この結果、周辺地域から特別区部への流入通勤人口が約30万人減少したが、通勤混雑の緩和にはそれ以上に鉄道輸送力の増強が寄与している。一方、東京都心部では、再開発により膨大な面積の事務所床供給が行われたが、事務所で働く従業者の人数は逆に減少した。従来、事務所床の増大は通勤交通の負荷を増大させると解釈されてきたが、この事実から、近年の事務所床の大量供給は、通勤ラッシュの悪化にはつながらず、大局的には従業者1人当たり床面積の大幅な拡大を意味している。