著者
高山 直子 有吉 浩美 洲崎 好香 中村 登志子
出版者
日本健康医学会
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.20-27, 2012-04-30

近年,生活習慣病の低年齢化が進み,肥満が問題となっているが,青年期の学生の身体活動量と生活習慣について実態を明らかにするために,肥満度と平均歩数および健康意識との関連について検討した。対象の年齢は15歳から22歳で,性別は男子29人,女子4人の33人であった。肥満度はBMIにて算出し,肥満,過体重,標準,やせの判定基準を用いた。歩数測定は月曜日から7日間行い,肥満度別に平日と休日の平均歩数を検討した。結果,平日の平均歩数は6691歩で,休日の平均歩数は3187歩であった。平日より休日の平均歩数が有意に少なく,いずれも健康日本21の目標数値よりも少ないことを示した。肥満度との相関では木曜日の平均歩数と相関があった。肥満・過体重の通学生と寮生の平均歩数を比較すると,寮生の平均歩数が有意に多かった。また,調査票の結果では,健康への関心が肥満・過体重学生が標準・やせ学生より関心が低いことを示したほか,間食する生活習慣が見られた。健康への認識は運動回数と,また,平均歩数が運動継続と相関のあることが明らかになった。
著者
熊井 三治 洲崎 好香 有吉 浩美
出版者
日本健康医学会
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.10-19, 2012-04-30 (Released:2017-12-28)
参考文献数
15

近年増加し続ける糖尿病において,その心理的な発症要因を明らかにするために,多面的生活ストレス調査表を施行した。また大うつ病患者と健常者において同様の調査表を施行し,三群間でその相違を比較検討した。次に糖尿病患者が有するさまざまな精神症状,病的性格,生活満足度の低下が糖尿病の原因なのか糖尿病悪化のための二次的結果なのか調べるために,糖尿病群においてHbA1cとそれぞれの尺度の相関を調べた。さらに問診表の質問項目の中かから,その特徴的な気質及び行動パターンより,セロトニン作動神経性向尺度,ドーパミン作動神経性向尺度,ノルアドレナリン作動神経性向尺度の新尺度を作成し,それぞれの尺度において三群間の相違を調べた。同様に糖尿病群において新尺度とHbA1cとの相関を調べた。糖尿病群とうつ病群は健常者群と比較しうつ傾向など多くの病的尺度が高く,幸福度を示す生活満足度が低かった。しかし、糖尿病群は大うつ病群と異なり過剰適応型性格が低く,攻撃型性格が高かった。またこれらの二つの性格は糖尿病の重症度とは相関していなかった。新尺度における比較では糖尿病群とうつ病群は健常者群と比較し,セロトニン作動神経性向尺度とドーパミン作動神経性向尺度はともに低いものの,ノルアドレナリン作動神経性向尺度は糖尿病において高値であり,HbA1cとも相関が見られなかった。これらのことより,糖尿病の精神症状の発症や生活習慣や生活満足度の悪化とその程度は糖尿病による二次的影響と言えるが,攻撃型性格やそれに伴うノルアドレナリン作動神経系の機能亢進が,糖尿病の心理的な側面での要因と考えられる。したがって糖尿病の生活指導や心理的アプローチにあたっては,多面的な生活ストレスの調査を行いながら行動療法を中心とした,糖尿病患者の各病相に合った総合的アプローチが必要であると言える。
著者
高山 直子 雨宮 俊彦 西川 一二 吉津 潤 有吉 浩美 洲崎 好香 中村 登志子
出版者
日本健康医学会
雑誌
日本健康医学会雑誌 (ISSN:13430025)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.87-94, 2012-07-31 (Released:2017-12-28)
参考文献数
13

本研究では成人勤労者および青年期学生における,肥満におよぼす心理的要因の影響を明らかにするために,日本語版Dutch Eating Behavior Questionnaire(以後,DEBQ)を用いて食行動を調査した。DEBQはVan Strien, Frijters, Bergers, Defares(1986)によって開発された食行動尺度で,情動的摂食,抑制的摂食,外発的摂食の3尺度で構成される。体格指数(BMI)を用い,BMIとDEBQ3尺度および性差との関連について検討した。調査対象は成人勤労者602人,平均年齢は32.9(SD7.48)歳青年期学生705人,平均年齢は174(SD1.56)歳であった。因子分析の結果,日本語版DEBQの下位尺度を構成する項目は,成人勤労者群においてオリジナルと完全に一致,青年期学生群においてはほぼ一致し,情動的摂食,抑制的摂食,外発的摂食の3尺度が確認された。DEBQ3尺度とBMIとの関連では,肥満の成人勤労者群は抑制的摂食,また,肥満の青年期学生群は抑制的摂食に加え,外発的摂食では尺度値が低いことを示した。成人勤労者群および青年期学生群のBMIとDEBQの性別比較では,BMIは男性の方が高く,外発的摂食,抑制的摂食,情動的摂食は女性の方が高かった。
著者
山田 英津子 有吉 浩美 堀川 淳子 石原 逸子
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.41-62, 2005-03-01
被引用文献数
3

男女雇用機会均等法施行(1985)以降, 女性の職域は広がり女性の労働力人口は今後も増えることが予想される.一方, 旧来の性別役割の意識の存在や不十分な支援制度や保障では, 職業生活と子育ての両立が難しく出産を機に退職する女性も多い.育児期にある母親の心身の負担を軽減する為には, ソーシャル・サポート・ネットワークの存在の必要性が指摘されている.しかし, 働く母親を支えるソーシャル・サポートの詳細は不明である.本研究では, 働く母親の意識とそれを取り巻くソーシャル・サポート・ネットワークの実態を明らかにし, 仕事と家事・育児の負担軽減の支援について検討することを目的とした.18名の対象者に, 自記入式質問紙と半構成的面接法を実施した.その結果, 半数以上の母親が, やりがいや自己成長, 気分転換を働く目的とし, 仕事の継続を望んでいた.仕事と家事・育児の両立に必要なソーシャル・サポートは, 夫, 夫以外の家族, 会社や職場の理解であった.夫のサポート内容は, 物理的サポートが主であり, むしろ, 祖母の協力の方が物理的・情緒的・経験的サポートとして家事・育児に役立っていた.また, 保育所への不満や要望は強かった.これらの結果より, 男性が育児に参加できるよう職場の意識改革や労働時間の見直し, さらに, 育児支援の為の保育所や学童保育の充実の必要性が示された.