著者
内山 奈穂子 有竹 浩介 マリシェフサカヤ オリガ
出版者
国立医薬品食品衛生研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

大麻由来カンナビノイドΔ9-THC或いは合成カンナビノイド(JWH-018)を投与したマウスの脳波と自発運動量の変化を調べた.マウスにΔ9-THCを腹腔内投与すると,有意な行動量の低下が観察され,痙攣行動と痙攣脳波が誘発され,痙攣脳波は断続的に4時間以上持続して起こることが判明した.一方,JWH-018を腹腔内投与すると,Δ9-THCと比較して,行動量の抑制と痙攣がより投与から短時間に誘発されることが判明した.さらに,JWH-018によるマウスへの痙攣誘発作用が容量依存的に起こることが明らかとなった.また,CB1受容体選択的拮抗薬AM251をΔ9-THC 或いはJWH-018投与の30分前に腹腔内投与しておくと,行動量の抑制と痙攣の誘発が完全に消失することが判明した.従って,Δ9-THCやJWH-018は,CB1受容体を介してマウスに痙攣を誘発することが示された.次に,痙攣を誘発するΔ9 -THC用量の閾値を検討した結果,投与量2.5 mg/kgが痙攣を誘発する最低用量であった.さらに,脳波スペクトルの特性を視覚的に区別することができる脳波解析:スペクトログラムとエンベロープ変動係数解析を行った.さらに,Δ9-THCの反復投与により,投与3-4日後に痙攣の発生数が減少したことから,Δ9-THC連続投与により身体的な耐性が生じることが示された.また,CB1受容体拮抗薬をマウスに前投与することにより,Δ9-THCおよびJWH-018によって誘発される痙攣が抑制されたことから,これらの痙攣作用は,CB1受容体を介して起こることが示された.さらにCB1受容体KOマウスにJWH-018を腹腔投与した結果,CB1受容体KOマウスはJWH-018投与後に痙攣の脳波または痙攣行動を示さなかったことから,JWH-018の痙攣作用は,CB1受容体を介して起こることが改めて確認された.
著者
有竹 浩介 鎌内 慎也 丸山 敏彦 星川 有美子 早石 修 永田 奈々恵
出版者
(財)大阪バイオサイエンス研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

チューリヒッヒ大学睡眠研究グループと共同で、睡眠障害患者の脳脊髄液および血液中の睡眠覚醒調節に関与する物質を分析し、健常人と比較した。ナルコレプシー患者では脳脊髄液中のリポカリン型PGD合成酵素濃度が有意に減少していること、パーキンソン病患者では有意に増加していることが判明した。更に、ヒスタミンやアデシンの濃度を調べたところ、脳脊髄液中のヒスタミン濃度は、多発性硬化症患者で増加し、イノシン濃度は、全ての睡眠障害患者で高い値を示した。これらの結果から、脳脊髄液中のL-PGDS、ヒスタミン、イノシン濃度の測定と比較が睡眠障害の新たな診断マーカーになることを見出した。
著者
黄 志力 有竹 浩介
出版者
公益財団法人大阪バイオサイエンス研究所
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2013-04-01

During the last year, we clarified neuroanatomical location of dopamine D2 receptor (D2R) in maintaining wakefulness.We designed short-hairpin RNA of D2R carried by adeno-associated virus (AAV) to knockdown D2R in caudate-putamen (CPU), core of nucleus accumbens (NAc core) and shell of NAc (shell). The locomotor activity bioassay was performed using the infra sensors. EEG recordings were performed and automatically scored off-line by 10-s epochs as wakefulness, non-rapid eye movement (non-REM, NREM), and REM sleep by SleepSign. In addition, we also designed the AAV carrying human D2R gene (AAV-hD2R) to focally rescue the D2R in D2R KO mice.After knockdown of D2R in the NAc core, the mice showed decreased locomotor activity during both day and night periods under the basal conditions, compared to the control mice. For the sleep-wake profile, core D2R knockdown mice exhibited a significant decrease in wakefulness, with a concomitant increase in NREM and REM sleep. While the D2R were rescued, mice showed an increase in locomotor activity. In mice with knockdown of D2R in NAc shell in WT or rescue of D2R in the KO mice, there were no significant changes in locomotion and sleep-wake profiles.After knockdown of D2R in the CPU, the mice exhibited decreased locomotor activity, whereas there were no significant changes in sleep-wake profiles.In conclusion, D2R in the NAc core plays an essential role in the maintenance of wakefulness. However, D2R in the CPU is important in controlling movement whereas D2R in NAc shell does not mediate the arousal and locomotion.