2 0 0 0 OA 睡眠物質

著者
藤谷 靖志 裏出 良博 早石 修
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.35, no.11, pp.811-816, 1998-11-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
53
被引用文献数
1 1

我々は規則正しく睡眠と覚醒のサイクルを繰り返しながら, 人生の3分の1にあたる貴重な時間を眠って過ごす. しかしながら, 睡眠に対して科学的な光があてられるようになったのは, 比較的最近のことであり, 睡眠は現代医学の中のブラックボックスであるといっても過言でない. 覚醒から睡眠への移行には, 脳内や全身においてさまざまな生理現象が多層的に関与していると考えられる. したがって睡眠に関与する物質も多種多様であり, それぞれの相互作用により睡眠を制御していると想定される.「睡眠が脳内において産生されるホルモン様の物質 (睡眠物質) により調節される」という「睡眠の液性調節」の概念は, 約1世紀前に提唱され, 現在では広く認められている. 睡眠物質 (Sleep-promoting substances) とは睡眠欲求の高まりと共に脳内や体液中に出現し, 神経活動を調節することにより, 睡眠の誘発や維持に関与する物質の総称である. 睡眠物質は自然な睡眠を誘発する内因性の物質であり, 非生理的な睡眠を起こすベンゾジアゼピン類等の睡眠薬とは異なる. その候補物質としては, プロスタグランジン類, ヌクレオシド類, サイトカイン, 生体アミン類等が挙げられている. 本稿ではこれらの代表的な睡眠物質を紹介し, これまでに明らかとなっている睡眠誘発の作用機構について解説する.

2 0 0 0 睡眠物質

著者
藤谷 靖志 裏出 良博 早石 修
出版者
The Japan Geriatrics Society
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.35, no.11, pp.811-816, 1998
被引用文献数
1

我々は規則正しく睡眠と覚醒のサイクルを繰り返しながら, 人生の3分の1にあたる貴重な時間を眠って過ごす. しかしながら, 睡眠に対して科学的な光があてられるようになったのは, 比較的最近のことであり, 睡眠は現代医学の中のブラックボックスであるといっても過言でない. 覚醒から睡眠への移行には, 脳内や全身においてさまざまな生理現象が多層的に関与していると考えられる. したがって睡眠に関与する物質も多種多様であり, それぞれの相互作用により睡眠を制御していると想定される.「睡眠が脳内において産生されるホルモン様の物質 (睡眠物質) により調節される」という「睡眠の液性調節」の概念は, 約1世紀前に提唱され, 現在では広く認められている. 睡眠物質 (Sleep-promoting substances) とは睡眠欲求の高まりと共に脳内や体液中に出現し, 神経活動を調節することにより, 睡眠の誘発や維持に関与する物質の総称である. 睡眠物質は自然な睡眠を誘発する内因性の物質であり, 非生理的な睡眠を起こすベンゾジアゼピン類等の睡眠薬とは異なる. その候補物質としては, プロスタグランジン類, ヌクレオシド類, サイトカイン, 生体アミン類等が挙げられている. 本稿ではこれらの代表的な睡眠物質を紹介し, これまでに明らかとなっている睡眠誘発の作用機構について解説する.
著者
有竹 浩介 鎌内 慎也 丸山 敏彦 星川 有美子 早石 修 永田 奈々恵
出版者
(財)大阪バイオサイエンス研究所
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

チューリヒッヒ大学睡眠研究グループと共同で、睡眠障害患者の脳脊髄液および血液中の睡眠覚醒調節に関与する物質を分析し、健常人と比較した。ナルコレプシー患者では脳脊髄液中のリポカリン型PGD合成酵素濃度が有意に減少していること、パーキンソン病患者では有意に増加していることが判明した。更に、ヒスタミンやアデシンの濃度を調べたところ、脳脊髄液中のヒスタミン濃度は、多発性硬化症患者で増加し、イノシン濃度は、全ての睡眠障害患者で高い値を示した。これらの結果から、脳脊髄液中のL-PGDS、ヒスタミン、イノシン濃度の測定と比較が睡眠障害の新たな診断マーカーになることを見出した。
著者
早石 修
出版者
日本保険医学会
雑誌
日本保険医学会誌 (ISSN:0301262X)
巻号頁・発行日
vol.85, pp.1-13, 1988-01-20

かつて,アメリカの首都ワシントンにあるジョージタウン大学の薬理学教授ピーター・ラムウェル博士は,「近い将来において,医薬品の2/3以上はプロスタグランジン,またはその類縁化合物によって占められるであろう」と予言した。多少誇張があるにしても,この言葉はプロスタグランジンの重要性を端的に物語っているものである。それではプロスタグランジンとはいったいどのような働きをする物質であろうか。一言で言えば,プロスタグランジンは生物情報伝達物質の一種であるということができる。地球上の総人口はおよそ50億といわれているが,私達は日常種々の情報伝達機構を用いて相互に情報を伝えることにより,健全な社会生活が営まれていることは衆知の通りである。特に最近はいわゆるマスコミュニケーションが発達し,通信衛星・テレビ・ラジオ・新聞・電話・ファクシミリ・その他きわめて多種類の情報伝達機構が働いており,一旦それに異常を来たすと社会には非常な混乱が起こることは私共の日常経験するところである。生物の体内でもこれと同様に多くの情報伝達機構が働いて,細胞と細胞,臓器と臓器の間の連絡をとっている。すなわち,私達の一人一人の体を考えてみると,その細胞数はほぼ地球の人口の1,000倍,すなわち50〜60兆といわれており,脳細胞だけでも150億という多数の細胞から成りたっているが,これらの異種または同種の細胞間でも時々刻々種々の情報が交換され,それによって全体としての臓器や個体の生命現象がうまく維持されているのである。このような生体内における情報伝達機構は,生命現象の基本となる重要な歯車のひとつであり,古くから神経やホルモンが遠距離の情報伝達に役立っていることが知られている。最近,近距離の情報伝達物質として,組織ホルモン・局所ホルモンと呼ばれるいくつかの物質が知られてきた。その中でも細胞を外部環境から守っている細胞膜の構成成分である"リン脂質"から作られるプロスタグランジンが注目を浴びており,1982年にはプロスタグランジンの発見や,特に著名な業績をあげたBergstrom, Samuelsson, Vaneの3人がノーベル医学賞を受賞したのもプロスタグランジンの重要性を示すものといえるであろう。本講演ではプロスタグランジン,ロイコトリエン,リボキシン等関連物質の研究について,その現状を解説し,特に最近の話題である脳神経・免疫・がんの研究について述べる。
著者
早石 修
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.42, no.6, pp.539-541, 2006-06-01