著者
有馬 道久
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

教職1年目の小学校教師の頭部にアイカメラを装着し、その教師の視点から2回の授業を録画した。その映像を見ながらその教員と指導教員が視線の向け方についてリフレクションを行った。その結果、指導教員から、全く視線を向けない場所があること、視線の移動が多いこと、子どもの方を見ているが一人ひとりの学習状態を把握できていないことなどが指摘された。2回目の授業とリフレクションから、1回目に指摘された課題は少し改善されたが、まだ残された課題は多いこと、また、授業力を上げるためには新たな課題があることが指摘された。
著者
山本 淳子 大久保 智生 藤井 浩史 辻 幸治 横山 新二 有馬 道久
出版者
香川大学
雑誌
香川大学教育実践総合研究 (ISSN:1345708X)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.41-47, 2007

本研究では,少人数学級や複数担任による少人数指導という物理的措置(学級規模)が,保護者の学校生活認知と子育て不安とに及ぼす影響について検討することを目的とした。研究1では,小学校1年生〜3年生の保護者339名を対象に質問紙調査を実施し,「保護者用学校生活認知尺度」および「子育て不安尺度」を作成した。研究2では,小学校1年生〜3年生の保護者556名を対象に,作成した尺度を用いて質問紙調査を実施した。結果から,少人数学級に在籍する子どもをもつ保護者の「対教師認知」の平均値が通常学級の保護者に比較して高いこと,逆に「子育て不安」の平均値は最も低いことが明らかとなった。少人数学級編制の導入は,保護者の教師に対するポジティブな認知と情緒の安定にプラスの影響を及ぼすのではないかと考察された。
著者
大久保 智生 山本 淳子 藤井 浩史 辻 幸治 横山 新二 有馬 道久
出版者
香川大学
雑誌
香川大学教育実践総合研究 (ISSN:1345708X)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.33-39, 2007

本研究では,少人数学級や複数担任による少人数指導という学級規模が児童の学級適応に及ぼす影響について検討することを目的とした。附属高松小学校の1年生112名,2年生99名,3年生119名と附属坂出小学校の1年生75名,2年生78名,3年生80名の計563名を対象に教師の指導行動に対する認知尺度と学級適応測定尺度を実施した。少人数学級,複数担任学級,通常学級における教師の指導行動および児童の学級適応の比較を行った結果,概して,30名の少人数学級と40名の複数担任学級の児童のほうが40名の通常学級の児童よりも教師の指導行動を肯定的に認知しており,学級へ適応していることが明らかになった。最後に学級規模とその教育効果についての今後の研究の方向性について示された。
著者
有馬 道久
出版者
香川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2000

本研究では,小学校に入学した児童が,潜在的カリキュラムをどのようにして習得していくのかについて検討した。2000年度は,小学校1年生のあるクラスについて,4月,6月,11月,翌年の3月に計36日間,計58時間の授業を観察,録画し,カテゴリー分析と事例分析を行った。このクラスには40名(男女同数)の児童が在籍し,担任教師は教歴17年の39歳の男性であった。その結果,児童は,潜在的カリキュラムの1つである教室ルールとして,「適切な姿勢のとり方」,「発表の仕方」,「号令の掛け方」などを学習することがわかった。教師は,入学直後は「説明する」という方略を用いるが,しだいに「ほめる」,「注意する」,「待つ」という方略を多用するようになることがわかった。2001年度は,1年生の別のクラスについて,4月,11月,翌年の2月に計32日間の朝の会と48時間の授業を観察,録画した。このクラスには35名(男子20名,女子15名)の児童が在籍し,担任教師は教歴32年の54歳の女性であった。ADHD(注意欠陥/多動性障害)児と集団保育未経験児の2人の児童に焦点を当てて,事例分析を行った。その結果,教師は,この2人の児童に対してかなり長時間の個別対応を行い,社会的スキルを指導していることがわかった。そして,この相互作用を通じて,クラスのすべての児童に「我慢すること(教師の指示に従うこと,順番や時期を待つこと,課題に集中すること)」という潜在的カリキュラムを教えていることが明らかになった。