著者
服部 佐智子
出版者
東京工業大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

本研究は、これまで申請者が取り組んできた江戸城本丸御殿大奥(以後、大奥と表記)や加加賀藩の大名屋敷の女性の空間における住宅史研究をより深化させ、大名屋敷の奥向にみられる空間構成について、部屋構成、設備空間、室内意匠、使用実態を包括的に捉えることで、大名屋敷の奥向における空間構成の原理を明らかにすることを目的としている。具体的には、近世上層武家住宅における女性の生活空間として、将軍から降嫁があった藩、なかった藩の奥向をそれぞれ取り上げ、大奥や御三家、御三卿、加賀藩の奥向に関するこれまでの研究成果を踏まえた上で、新たに史料調査で収集した各種絵図史料や文献資料を基に、分析を行っている。本年度は、世界を襲っている新型コロナウイルス感染拡大防止のため史料の所蔵先が閉館していたこと及び新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため東京都外への移動を控えたことにより、本来予定していた史料収集のための調査を実施することができなかったため、次年度以降の調査にむけて、オンラインによる、近世日本建築史研究者との研究交流、意見交換を行うとともに、次年度以降の史料調査をスムーズに実行するために、彦根藩、高田藩、米沢藩、松代藩の奥向について江戸上屋敷奥向の各種絵図史料、文献史料について、全体把握を行った。またそれぞれの江戸上屋敷奥向に関する記述史料、絵図を読み解き、それぞれの江戸上屋敷奥向の平面構成の違いに繋がる原理を見出すために、部屋構成、設備空間、室内意匠、使用実態を総合して考察し、上層武家住宅の女性の生活空間の特質について検討を進めている。
著者
服部 佐智子 篠野 志郎
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.75, no.653, pp.1735-1743, 2010-07-30 (Released:2010-09-03)

In succession to the previous article, this paper aims to clarify the transformation of the lifestyle for Shogun-family in Ohoku Goten-muki at utilizing its space, by taking notice regarding the planning idea of the toilet during Kyoho-Manen eras. As a result, after Koka era, the toilets for Shogun and Shogun-family gradually became installed on a meeting space or living space as well as increasing of its total number. These phenomena of the transformation are presumed to indicate that the “family” space where Shogun lived with his family became extended to a considerable extent within the quarters from Kyoho- to Koka-era.