著者
服部 勝憲 齋藤 昇 秋田 美代
出版者
鳴門教育大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

学部学生の算数科カリキュラムのとらえ方は,「各学校の算数科教育計画・指導計画」が31.8%,「算数教育の計画,授業,評価の総体」が30.8%,「学習指導要領に示された算数科の内容」が15.6%,「算数科の授業内容の全体」が14.2%である。以下「算数教育により子ども達が身につけたもののすべて」3.3%,「算数科の教科書に示された内容」1.9%と続く。また開発したカリキュラム編成の重点に関する尺度,評価実施の場面と時間に関する尺度,編成段階の評価と改善に関する尺度の評価尺度得点において,学部学生の得点が現職教員より高い結果が出ているが,単純に学部学生の方の認識が高いとは考えられない。今後これらの調査項目に対する理解の広さ・深さ,さらに学校現場におけるそれらの実施の困難さ等についての検討が必要である。さらに授業観を評価する10個の調査項目を用いて,授業観についての3つのタイプ,(1)教師主導・説明練習評価尺度得点が高いType-A,(2)2つの評価尺度得点がともに平均的な位置にあるType-B,(3)生徒主体・活動支援評価尺度得点が高いType-Cを抽出した。これらの観点から考察すると,小学校教員の場合は39.4%が,中学校教員の場合は,36.9%がType-A, B, Cとして抽出された。それに対して学部学生の場合は28.4%(全211名中)とかなり少なく,タイプとして見られるような明瞭な授業観を持つに至っていないといえる。また学部学生の場合,現職教員の場合に比べて,拡散的である。特に評価の場面や時間,及び評価の改善に関する評価尺度では現職教員の場合に比べて,かなり高い得点を示している。このことから評価とそれによる改善に関しての可能性についての期待を示している。このことからも,教員養成系学部において,望ましいカリキュラム観や授業観を育てていくための考え方やその展開のための教員養成カリキュラム(教育計画・シラバス)の開発とともに,一貫性のある教科カリキュラムに関する教育のあり方が重要なものになる。