著者
木下 太志
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.98, no.3, pp.317-336, 1990-07-31 (Released:2008-02-26)
参考文献数
46
被引用文献数
2 3

山形県天童市の旧山家村に残る1760年から1870年にわたる宗門改帳を使って,江戸時代における東北地方の農民の結婚と出生を分析した。結婚に関しては,男子の場合,初婚年齢,既婚率ともに経済的要因によって強く影響されるが,女子の場合にはこのことは必ずしも言えない。この理由として,男女間の社会的,経済的地位の差が考えられる。また,山家村の出生率は時代とともに増加しているが,これは主に有配偶出生率の増加に起因し,生涯未婚率の低下が補助的に出生率の増加に寄与している。出生率の増加には,労働形態の変化,雇用機会の増大,賃金の上昇等が関与しているものと考えられろ。
著者
木下 太志
出版者
社会経済史学会
雑誌
社会経済史学 (ISSN:00380113)
巻号頁・発行日
vol.66, no.4, pp.369-388,483, 2000-11-25 (Released:2017-08-14)

Although recent studies by Japanese historical demographers have enormously enriched our knowledge of the fertility and mortality of Tokugawa peasants, their migration patterns still remain poorly understood. Using the shumon aratarne-cho (religious registration records) of Yambe, a village in northeastern Japan, this article clarifies several critical aspects of migration in the Tokugawa period. The main findings can be summarized as follows : (1) The gross migration rate of Yambe was relatively high, 46 per thousand per year. But in-migration and out-migration offset each other, and thus net migration made very little impact on the village population. (2) Marriage and employment as servants (hoko) were the dominant reasons for migration. Both reveal distinct patterns as do the movements of males and females. (3) The number of migrants declined precipitously after about 1840, because servants (hoko-nin) were replaced by day laborers (hiyatoi). (4) The age profile of migration showed a sharp peak from the upper teens to the lower twenties, because marriage and hoko were concentrated in these age groups. The male profile peaked at a higher age than the female profile. (5) The average distance of migration was 4 km, and almost all migration took place within a radius of 10 km from Yambe. Villagers tended to migrate farther away for marriage than for hoko.
著者
木下 太志
出版者
日本人口学会
雑誌
人口学研究 (ISSN:03868311)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.27-39, 1999-12-01 (Released:2017-09-12)

本稿は,日本の歴史人口学において,長い間未解決であった問題を取り扱った。それは,宗門改帳における出生の過少登録に関する問題である。この問題は宗門改帳から乳児死亡率だけではなく,出生率をも正確に推計することを妨げており,日本の歴史人口学の発展のネックとなっていた。この問題を解決するため,本稿では,乳児死亡率と出生率を別々に扱い,前半部分で宗門改帳の記録から正確な乳児死亡率を推計する方法について検討し,後半部分で宗門改帳における出生の過少登録を中心に論じた。前半部分では,宗門改帳から得られる情報だけではなく,明治・大正期の人口動態統計も使い,宗門改帳から得られる乳児死亡に関する指標を「初年死亡率」と定義して,それと乳児死亡率との関係を見つけ出し,この関係を乳児死亡率の推計のために使った。後半部分では,マイクロシミュレーションを利用した。その結果,出生の過少登録のレベルは乳児死亡率のレベルと密接に関係しており,徳川時代の乳児死亡率のレベルでは,宗門改帳に記録された出生は,実際の出生よりも14パーセントから18パーセント程度過少に,日本国内の地域性を考え,少し安全側に立っても,12パーセントから18パーセント程度過少に記録されている可能性が高いことがわかった。近年の歴史人口学の研究では,このレベルを20パーセントと仮定することが多かったが,本稿の結果からすると,この仮定は過大に見積もられているという結論が導き出された。本稿では,宗門改帳の記録日によって,出生の過少登録のレベルが大きく影響されるのかどうかという問題についても検証した。この問題に対する答えは否定的なもので,宗門改帳の記録日の違いは,懸念されるほどには出生率の推計に影響を与えないことがわかった。最後に,シミュレーションを使って,異なるサイズの小集団における出生率の分散を検討した。この結果は,小集団における出生率の分散に関するひとつの指標となり,断片的な宗門改帳を扱う際の助けとなるであろう。
著者
木下 太志
出版者
比較家族史学会
雑誌
比較家族史研究 (ISSN:09135812)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.47-65, 2014-03-31 (Released:2015-03-31)
参考文献数
24
著者
木下 太志
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.98, no.3, pp.317-336, 1990
被引用文献数
3

山形県天童市の旧山家村に残る1760年から1870年にわたる宗門改帳を使って,江戸時代における東北地方の農民の結婚と出生を分析した。結婚に関しては,男子の場合,初婚年齢,既婚率ともに経済的要因によって強く影響されるが,女子の場合にはこのことは必ずしも言えない。この理由として,男女間の社会的,経済的地位の差が考えられる。また,山家村の出生率は時代とともに増加しているが,これは主に有配偶出生率の増加に起因し,生涯未婚率の低下が補助的に出生率の増加に寄与している。出生率の増加には,労働形態の変化,雇用機会の増大,賃金の上昇等が関与しているものと考えられろ。