著者
畑中 康郎 野上 達也 木下 栄一郎
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
日本生態学会誌 (ISSN:00215007)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.213-218, 2008-11-30 (Released:2016-09-17)
参考文献数
19

白山の標高2,450mのMizuyajiri調査地に永久方形区が設置され、クロユリの調査が1992年より実施された。その結果、次の事が明らかになった。1、クロユリは多くの種子をつける。2、実生はまれに出現するが、通常、実生の数は非常に少ない。3、多くの鱗茎葉により栄養繁殖が行われる。よって、白山のクロユリ集団では、集団の維持は主に栄養繁殖によって行われている。しかし、この結果は集団維持に対する実生の貢献の可能性を完全に否定するものではない。調査期間中、比較的まとまった数の実生の出現が1回起きたということは、条件が整えばクロユリ種子が発芽して集団の維持に貢献すること、の可能性を示唆する。いずれにしても、10年、20年という時間間隔のなかで一度起こる事象を検証するためには、10年程度の調査期間はあまりに短すぎる。また、12年間にわたる調査期間中に有茎個体の個体数、集団構造は大きく変動したことは、白山のクロユリ集団が現在も刻々変化していることを示している。温暖化などによる地球環境の変化が高山帯の植物や植生にどのような影響を与えるかは今のところ定かではないし、その変化を予想することは難しい。したがって、白山のクロユリ集団の変化と気温等の変化の関係を明らかにすることは極めて重要であり、定点での継続観察が必要である。
著者
鯨 幸夫 前野 寿有 山口 順司 寺沢 なお子 木下 栄一郎
出版者
日本作物学会
雑誌
北陸作物学会報 (ISSN:03888061)
巻号頁・発行日
no.47, pp.113-118, 2012-03-31

栽培環境を異にするヤブツルアズキを材料に用いて,土壌硬度や施肥量を変化させた栽培試験を行い栽培品種(大納言)と比較した.土壌硬度を高め3.5kg-NPK/10aの施肥を行うと成育量は増大した.成育地を異にするヤブツルアズキのITS領域およびrbcL領域のDNA解析を行った結果,葉身形状,茎の色等,地上部形態に明らかな差異が認められても遺伝子情報は全く同じであった.種子のポリフェノール含有量は栽培種よりヤブツルアズキの方が多い傾向が認められ,これは種皮比率が高い事が原因と考えられた.