著者
鯨 幸夫 前野 寿有 山口 順司 寺沢 なお子 木下 栄一郎
出版者
日本作物学会
雑誌
北陸作物学会報 (ISSN:03888061)
巻号頁・発行日
no.47, pp.113-118, 2012-03-31

栽培環境を異にするヤブツルアズキを材料に用いて,土壌硬度や施肥量を変化させた栽培試験を行い栽培品種(大納言)と比較した.土壌硬度を高め3.5kg-NPK/10aの施肥を行うと成育量は増大した.成育地を異にするヤブツルアズキのITS領域およびrbcL領域のDNA解析を行った結果,葉身形状,茎の色等,地上部形態に明らかな差異が認められても遺伝子情報は全く同じであった.種子のポリフェノール含有量は栽培種よりヤブツルアズキの方が多い傾向が認められ,これは種皮比率が高い事が原因と考えられた.
著者
鯨 幸夫
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究では、水田の環境を保全しながら水稲の超多収を実現させる戦略について検討した。得られた結果の概要は以下の通りである。1)1992年に998kg/10aの超多収を示した長野県伊那市の農家水田で生育するコシヒカリを調査し解析した。伊那コシヒカリの超多収性は、総根重、土壌表層根重の多さ、根の生理活性の高さに支えられた高い光合成速度と蒸散速度が背景にある。また、低水温の農業用水と土壌中の気相割合の多さも関係している。2)有機資材の連用により土壌中の腐植含有量は増加し、超多収を示した伊那コシヒカリと類似した根系形態を示すようになった。また、根の生理活性も高いことから、土壌への有機物連用は地力維持と環境保全への近道であると考えられた。3)コスト削減と外部環境に及ぼす影響を軽減するには、不耕起直播栽培や土中打込み点播方式も効果的である。また、LP肥料を用いたF1水稲品種の乾田不耕起直播栽培も北陸では有効であると考えられた。4)慣行的に施用されてきたN,R,K施肥の意味について、三要素継続試験から検討すると、三要素区、無P区、無K区での収量、根重、根の活力に有意な差が認められないことから、慣行的な施肥法を再考する必要性があることが明確となった。5)水稲の無農薬有機栽培の可能性について、コシヒカリBLを用いて検討した。再生紙マルチを用いて水稲を有機栽培すると575kg/10aの収量を示した。根系生育および根の生理活性は、超多収を示した伊那市のコシヒカリに近似していたことから、有機資材を用いて多収を実現することの可能性が示唆された。なお、畦畔にはアジュカ、イワダレソウを埴栽した。また、植物資材を利用した除草効果を検討したところ、米糠の利用が現実的であると判断された。6)2002年の伊那市の超多収コシヒカリの収量は800kg/10a以上を示した。