著者
木下 涼 植野 真臣
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J103-D, no.4, pp.314-329, 2020-04-01

項目反応理論では異なるテストを受検した受検者を同一尺度上で評価することができる.しかし,そのためには受検者の同一母集団からの独立ランダムサンプリングを仮定し,共通項目を含む複数のテストデータをもとにリンケージと呼ばれる処理が必要である.リンケージはテスト実施に膨大な作業を伴うだけでなく,前述の仮定により理論的に最適値を得る保証はない.この問題を解決するため,本研究では深層学習を用い,受検者の母集団と独立性を仮定しないテスト理論としてItem Deep Response Theoryを提案する.提案モデルはリンケージを必要とせず,受検者が単一母集団からのランダムサンプリングでない場合にも精度の低下が抑えられ,複数の母集団からサンプリングされている場合に頑健である.ここではシミュレーション・実データ実験より,提案モデルは未知の項目への反応予測精度が高く,特に受検者が同一の母集団からランダムにサンプリングできない場合に項目反応理論に対して大きく能力推定精度と反応予測精度を向上させることを示す.
著者
木下 涼 植野 真臣
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第34回全国大会(2020)
巻号頁・発行日
pp.3Rin482, 2020 (Released:2020-06-19)

近年,人工知能分野において学習者の知識状態を動的に推定するKnowledge Tracingが注目を集めている.特に項目反応理論(IRT)と深層学習を組み合わせたDeep-IRTが提案され,高精度に学習者の反応予測が可能であることが報告されている.さらにDeep-IRTはIRTと同様に解釈可能な能力パラメータと困難度パラメータを持つ.しかし,Deep-IRTは得られる能力パラメータが解答する項目に依存しており,IRTと比較して解釈性に劣るため,適応型テストなど教育分野への応用は限られている.この問題を解決するため,本研究では測定モデルとKnowledge Tracing Modelを両立するItem Deep Response Model(IDRM)を提案する.IDRMでは,独立した学習者ネットワークと項目ネットワークから能力パラメータと困難度パラメータを推定するため,Deep-IRTよりも解釈性の高いパラメータが得られ,学習者の能力測定モデルとみなせる.さらに,実データ実験によりIDRMは既存モデルよりも高度に学習者の反応予測が可能であることが示された.