著者
木方 真理子 向江 亮 行実 洋一
出版者
一般社団法人 社会情報学会
雑誌
社会情報学 (ISSN:21872775)
巻号頁・発行日
vol.8, no.3, pp.65-80, 2020-07-01 (Released:2020-08-27)
参考文献数
28

東日本大震災により,関東地方に主に電力供給をしていた東京電力は,社会に多大な迷惑をかけたことにより,社員の働きがいが大幅に低下し,その後,改善はあまりみられていない。福島復興への責任を担い,電力の安定供給を果たすべき社員の離職も震災後数年は多かった。本論文では,「働きがい」や「離職」と関連の高い「会社の誇り」に着目し,2002年からの社員意識調査の経年データをもとに過去のメディア報道が,対象組織に属する社員に与えた心理的影響を明らかにする。東日本大震災後7年たった現在も,東京電力に関する報道は,東日本大震災前の数倍あり,そうした報道は6年以上の長期に蓄積して,社員の意識に影響することが分かった。特に過去1年と6~8年の新聞報道蓄積量から高い精度でその影響は予測され,予測値とのずれから,会社の誇りの回復には,ビジョンの提示,顧客サービス向上などが有効であることが示唆された。こうした視点からインフラ事業など公共性が高い企業や社会貢献を理念としている会社においても,同様の施策が有効と考えられる。
著者
向江 亮 木方 真理子 小林 和幸 坂本 大樹
出版者
一般社団法人 日本エネルギー学会
雑誌
日本エネルギー学会誌 (ISSN:09168753)
巻号頁・発行日
vol.99, no.3, pp.28-40, 2020-03-20 (Released:2020-03-31)
参考文献数
13

本研究の目的は,人々の冷暖房などのエネルギー利用に対する態度や省エネルギー行動が,熱中症やヒートショックの健康への影響についての認識や対策の実施とどのように関連しているかについて検討を行うことであった。本研究では,2018年2月に実施した旧東京電力供給エリア内の住民を対象としたライフスタイルに関する調査に回答した3066名を対象として二次分析を行った。ロジスティック回帰分析の結果,住宅の建築年や健康への態度・行動,冷暖房への態度・行動,省エネ行動が,熱中症やヒートショックの健康への影響の認識や対策実施と関連することが示された。また,熱中症とヒートショックでは,関連の仕方に違いが見られることも示された。一方で,利用できるデータの限界によって,その検討は十分なものではなかった。今後は,項目や方法を洗練させ,より具体的な検討ができるように研究を発展させていくとともに,生活者の行動促進に向けた具体的な施策の立案とその検証が求められる。