- 著者
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木村 汎
- 出版者
- 国際日本文化研究センター
- 雑誌
- 基盤研究(B)
- 巻号頁・発行日
- 1997
ロシアの体制転換は、難航している。1991年8月のクーデター未遂事件後、新生ロシアは、共産主義体制から訣別し、民主主義と市場経済の体制への移行を宣言した。ところが、以後既に8年。一方においてはたしかに、もはや共産主義体制へと復帰する可能性はない。しかし他方、西側流の体制へスムーズに転換すると楽観論は、ほぼ完全に消滅した。だからといって、金融危機に陥ったアジア諸国をモデルとして掲げる訳にもいかない。結果として、ロシア独自の道を模索する姿勢を益々強めるにいたった。「ロシア独自の道」とは、一体なにか。この肝心の問いにたいする回答が、未だ見出されていない。完璧なモデルを他に求めることの不毛性への自覚。その探求努力からの疲労。明日はわが身がどうなるか定かでない、その日暮らしの連続。-これらが、現ロシアがおかれている精神状況である。研究代表者は、ロシアの金融(そして政治)危機が発生した丁度98年8月から米国に海外出張し、米国人およびロシア人の研究者たちと本テーマについて討論を交える機会に恵まれた。自身と全く同一のテーマと関心で書かれたJames Moltz,“Commonwealth Economics in Perspective:Lessons from the East Asian Model"に接したことも有益だった。自身は、“Japanese Civilization,Challenge to the Western Civilization?-Some Russian Japanologists'View"を、執筆・発表した。