著者
百々 幸雄 木田 雅彦 石田 肇 松村 博文
出版者
The Anthropological Society of Nippon
雑誌
人類學雜誌 (ISSN:00035505)
巻号頁・発行日
vol.99, no.4, pp.463-475, 1991 (Released:2008-02-26)
参考文献数
33

北海道東部の厚岸町下田ノ沢遺跡より,1966年,1体の擦文時代人骨が発見された。人骨は頭骨ほぼ全体と体幹•体肢骨の一部が,人類学的研究に耐え得る状態に保存されていた。年齢,性別は成年女性である。頭骨の計測値に基づいた距離計算では,アイヌよりも東北日本人にやや近いという結果が得られたが,歯の計測値に基づく距離計算と頭骨の非計測的小変異に基づく分析の結果は,本人骨が明らかにアイヌに帰属することを示した。体幹•体肢骨の計測と観察の結果もこれを支持するものであった。頭骨の非計測的小変異では,関節面を有する典型的な第3後頭顆の発現が注目された。分析結果を総合的に解釈すると,下田ノ沢擦文時代人骨の形質は,近世北海道アイヌのそれと基本的に変わるところがないと結論される。
著者
大島 直行 木田 雅彦 石田 肇 百々 幸雄
出版者
札幌医科大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

続縄文時代恵山文化の形成と展開に際しての、本州弥生文化の影響の実態と把えるため,北海道豊浦町礼文華貝塚の発掘調査を実施した。調査の結果,次の点が明らかになった。1.貝塚の規模は,約500m^2であった。貝層の堆積は、最も厚いところで1mを計。形成時期については,縄文時代晩期終末に始まり,続縄文時代恵山期と比較的長期にわたることが明らかとなった。2.遺構は,残念ながら墓の発見はなかった。ただし、立地条件や過去の調査結果などから、本遺跡の墓地としての可能性は大きく,埋葬遺構の発見も,将来的に期待される。本調査においては,イルカの埋納土壙の発見があった。全国的にも、きわめて珍らしい検出例である。土壙は、直径約100cmの円形を呈する。埋土を10cm程掘り下げた段階で,頭骨を中心とする大量のイルカの骨があらわれた。その数は12個体分だが,調査は土壙の約半分にすぎないことから、全体ではさらにその数が増すものと思われる。おそらく、「送り場」的な性格を持つ遺構と考えられ、たいへん興味深い。3.出土遺物の中で,特に注目されたものに土製紡錘車の出土がある。恵山文化期の包含層中より出土したもので,北海道出土の紡錘車としては,最も古い例となった。おそらく、本州の弥生前期〜中期段階の資料と深く関係するものと思われ、有珠10遺跡より出土した南海産貝輪とともに,北海道への弥生文化の波及を示す、興味深い資料の追加となった。
著者
鹿野 真人 高取 隆 小針 健大 佐藤 廣仁 木田 雅彦
出版者
日本喉頭科学会
雑誌
喉頭 (ISSN:09156127)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.16-23, 2016-06-01 (Released:2016-10-28)
参考文献数
24
被引用文献数
12 13

In 2007, we reported a newly-developed surgical airway-opening technique(cricoid fenestration)using a partial resection of the cricoid cartilage to form a stoma. From 2006 to 2014, a total of 57 cricoid fenestration procedures were performed at our hospital. The reasons for surgery included cervical disturbances such as low-set larynx, obesity, short neck, thyroid tumor, cervical abscess, and tortuous brachiocephalic and common carotid artery. Surgeries were also performed in high-risk patients who required long-term airway management, hemostasis, and urgent airway establishment. In this study, only one patient developed subcutaneous emphysema as an intra- or postoperative complication.Cricoid fenestration enables us to easily create a stoma at a higher level of the cricoid cartilage without transecting the thyroid gland. In addition, this technique can quickly establish a controlled airway with a low risk of intraoperative bleeding. Finally, long-term airway management can be performed easily using this technique without tube-related complications including scarring or stenosis, despite the resection of the cricoid cartilage. Cricoid fenestration is therefore considered to be a safe and effective surgical airway-opening technique.