著者
木谷 忍
出版者
東北大学農学部農業経営学研究室
雑誌
農業経済研究報告 (ISSN:02886855)
巻号頁・発行日
no.40, pp.65-74, 2009-02

近年の地球環境への意識の高まりが、地域づくりといったところにも強く表れるようになった。循環型地域づくり、低炭素型社会づくりなど、文理融合を謳い文句とする様々な取り組みに政府も支援を惜しまない。さらに、地域の生活者の視点からの地域づくりも強調される。筆者もこういった動向を否定するわけでは毛頭ない。ただ、いたるところで生活者を重視するという繰り返し発言には、どうしてももどかしさを感じてしまう。それは、最近注目されている概念、「複雑系」における内部観測の理論にも通じていて、観察者として外部から地域の生活者を観た記録(エビデンス)の利用と、地域づくりにいだく私たち研究者の目的思考的価値観にそれは起因しているようだ。外部観察を通して研究者が共通に抱く生活者は依然として他者であり、他者としての生活者を基点に地域づくりを考えていこうというのは、科学的な説得力はあっても、地域の生活が見えてこない。生活者第一、生活者の目線で、といった多くの政治家の発言にみるように、地域社会で生活する人々を外部からみてその理想像を打ちたて、そこからの乖離の度合いによって社会を評価しようとする。生活者重視という言葉には、私たち研究者も避けることの難しい大きな誤謬が含まれている思いがする。文理融合の「文」は、外部観測に根を張る社会科学のことに留まっているのであろう。本稿では、地域づくりの議論での役割体験に注目し、内部観測の理論をベースに地域づくりの自由性についての評価の枠組みを構築する。すなわち、市民は当該地域づくりに関係のない役割演技者の議論を観察しながら、このシミュレーションに参加し役割演技することで、自らの地域づくり観を創発できるかどうか、そういった点を評価しようとする枠組みを提案するものである。
著者
伊藤 房雄 門間 敏幸 関野 幸二 森田 明 國分 牧衛 南条 正巳 木谷 忍 冬木 勝仁 工藤 昭彦 米澤 千夏 安江 紘幸
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、3.11大震災の被災地におけるボトムアップ型の農業復興モデルを構築した。具体的な成果は、農地の所有と利用を分離した農地管理手法にもとづき新たに法人化した土地利用型農業を対象に、担い手確保、収益性確保、農地保全、労働力活用、部門統廃合の5点に沿って分類し、経営が不安定になり易い法人設立時や新規事業の立ち上げ時期において求められる地域農業マネジメントの特徴と,それが地域発展に及ぼす影響を総合的に取りまとめた。