著者
工藤 昭彦
出版者
東京理科大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

今年度は主に,アンモニア水溶液の分解反応に活性を示す可視光応答性金属硫化物・酸化物粉末光触媒の開発を行った.Cu2ZnGeS4金属硫化物光触媒は570 nmに吸収端を有しており,可視光領域まで利用することができる.このCu2ZnGeS4光触媒にRu助触媒を担持し,可視光照射下におけるアンモニア水溶液の分解反応を試みた結果,水素と窒素が3:1の化学量論比で継続的に生成した.さらに,波長依存性を調べたところ,本反応がCu2ZnGeS4光触媒のバンドギャップ励起により進行していることが明らかとなった.次に,Cu2ZnGeS4光触媒の長波長応答化を目的として,同様のStannite構造を有するCu2ZnSnS4光触媒との固溶体を調製した.その結果,固溶比に応じて,吸収端を570-850 nmの範囲で制御できた.これらCu2ZnGe1-xSnxS4 (x=0~0.8)固溶体は,Ru助触媒を担持することで,可視光照射下でのアンモニア水溶液の分解反応に活性を示した.このように,Cu2ZnGeS4およびCu2ZnGe0.2Sn0.8S4金属硫化物光触媒を用いて,可視光照射下におけるアンモニア水溶液の分解を達成した.一方,水素生成反応に活性を示すIr,La共ドープBaTa2O6光触媒をアンモニア水溶液の分解反応に応用展開した.その結果,Pt助触媒を担持した光触媒が,可視光照射下においてアンモニア水溶液の分解反応に活性を示し,化学量論的に水素と窒素を継続的に生成した.このように,Ir,La共ドープBaTa2O6がアンモニア水溶液の分解反応に活性を示す新規可視光応答性金属酸化物光触媒であることを見いだした.
著者
伊藤 房雄 門間 敏幸 関野 幸二 森田 明 國分 牧衛 南条 正巳 木谷 忍 冬木 勝仁 工藤 昭彦 米澤 千夏 安江 紘幸
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究では、3.11大震災の被災地におけるボトムアップ型の農業復興モデルを構築した。具体的な成果は、農地の所有と利用を分離した農地管理手法にもとづき新たに法人化した土地利用型農業を対象に、担い手確保、収益性確保、農地保全、労働力活用、部門統廃合の5点に沿って分類し、経営が不安定になり易い法人設立時や新規事業の立ち上げ時期において求められる地域農業マネジメントの特徴と,それが地域発展に及ぼす影響を総合的に取りまとめた。
著者
甲谷 繁 宮部 豪人 吉岡 英斗 工藤 昭彦
出版者
兵庫医療大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究は、ナノ細孔構造を有する光触媒を創製し、通常の熱反応では起こり得ない新規な化学反応を光で誘起することを目指した。まず、メソポーラス型タンタル酸光触媒(m-Ta2O5)を調製し、二酸化炭素とエタノールから乳酸への一段階合成を試みた。しかし、疎水性の二酸化炭素はm-Ta2O5の親水性ナノ細孔内へ吸着されにくく、反応効率は向上しないという問題点が判明した。そこで、既報に従ってメソポーラスシリカ表面の一部をフッ素化して疎水性を持たせたナノ細孔構造体に酸化チタンを担持した光触媒を作成した。これについてUV照射下でOHラジカル発生能を検討したところ、優れた光触媒能を有することが明らかとなった。
著者
工藤 昭彦 斎藤 健二
出版者
東京理科大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

NiをドーピングしたZnS光触媒が,正孔捕捉剤存在下,可視光照射下でCO_2還元反応に活性を示す光触媒であることを初めて見いだした。NiドーピングZnS光触媒は,可視光照射下でほぼ定常的にH_2とHCOOHを生成した。一般に,光触媒反応ではPtなど助触媒が必要であるが,この反応において助触媒は不要であり,光触媒自身が活性点を有していることが特徴である。カットオフフィルターを用いたNiドーピングZnSによるHCOOH生成反応の波長依存性より,HCOOHが生成し始める波長と吸収スペクトルの立ち上がりが一致した。このことから,NiドーピングZnSによるCO_2還元反応は,Niのドナー準位から伝導帯へのエネルギーギャップ励起によって進行していることが明らかとなった。一方,(ZnGa_2S_4)-(Znln_2S_4)複合体が,正孔捕捉剤存在下,可視光照射下でのCO_2還元反応に活性な光触媒であることを初めて見いだした。主なCO_2還元生成物として,COとHCOOHの両方が得られた。CO_2還元反応の活性は用いる正孔捕捉剤の種類に大きく依存しており,NaPH_20_2を用いた場合に最も高い活性を示した。また,基盤となるZnIn_2S_4ではほとんどCO_2還元反応が進行しないが,それにGaを10%置換したZnGa_<0.2>In_<1.8><S_4>を用いた場合は,CO_2還元反応の活性が飛躍的に向上した。Znln_2S_4にGaが置換されることで,CO_2還元反応に対するドライビングフォースが増加し,活性点が形成されたため活性が飛躍的に向上したと考えられる。