著者
木野田 典保
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.97-104, 2008 (Released:2008-04-05)
参考文献数
19
被引用文献数
2 2

本研究の目的は脳卒中片麻痺例において,どのようなボディイメージがみられるかを確認することである。脳卒中片麻痺7例に対し半構造化面接を実施し,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した。得られたインタビューデータより定義付け,概念化を試みると「身体の不明瞭な感覚」,「感じられる異常感覚」,「動作の拠りどころとなる感覚」,「動作上達の要件」という4項目があがった。また,生成した概念とカテゴリーの関係を検討して結果図を作成し,分析における全体像を表した。結果,脳卒中片麻痺例にみられるボディイメージの障害構造の一端を表している可能性を示唆した。今後,ボディイメージに関する評価を確立する上でも質的研究が大きな役割を果たすものと期待される。
著者
山下 誠 木野田 典保 角谷 一徳 八木 朋代 石濱 裕規 都丸 哲也
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2010, pp.EcOF2097-EcOF2097, 2011

【目的】<BR> 当院では、医師をはじめ、義肢装具士、理学療法士、作業療法士が一同に介して、装具に関する診察(以下:装具診)を週2回行っている。入院中に作成した装具が、退院後の環境の異なる在宅生活において、うまく適合しているのか、また、どのように活用されているかについて、不明確な点が多い。そこで、適切な装具の処方が行われているかを確かめる目的で、入院中に下肢装具を作製し在宅退院された障害者に対して、満足度及び装具使用状況に関する追跡調査を実施した。<BR><BR><BR>【方法】<BR> 対象は、2008年4月から2010年3月までに当院入院されていた脳血管障害者のうち短下肢装具を作製し、自宅退院となった29名であった。調査方法は、アンケート用紙郵送形式とした。内容は、満足度及び装具使用状況調査からなるものであった。満足度の評価には、福祉用具満足度評価を使用した。これは、福祉用具使用者の満足度を評価するためにLouise Demersらにより、開発された効果測定の指標であり、満足度を8項目の福祉用具特性と4項目の関連サービスの観点から評価するものである。福祉用具の下位項目は、1大きさ2重さ3調節しやすさ4安全性5耐久性6使い心地7期待した効果8着脱しやすさであり、サービスの下位項目は、1作製の時期や手続き2修理とメンテナンス3専門家の指導・助言4アフターサービスである。これら各項目を1「非常に不満」から5「非常に満足」の5段階で評定する。装具使用状況調査の質問項目は、選択・記入方式とした。内容は、1使用期間2装着自立度3転倒回数4着用時転倒回数5使用頻度と使用場所6修理の必要性7修理の有無8修理の認知度9相談相手の有無10退院後の身体的変化であった。<BR><BR>【説明と同意】<BR> 対象者には当院入院時に担当療法士から、電話にて調査目的の説明を行い同意を得た方にのみ、アンケート用紙を郵送した。<BR><BR>【結果】<BR> 回収率は、29件中20件(68.9%)であり、有効回答19件を分析対象とした。対象者は、男性13名、女性6名、平均年齢58.15歳。疾患は、脳出血9名、脳梗塞8名、その他2名。装具の種類はオルトップ2名、プラスチック製短下肢装具12名、金属支柱付短下肢装具5名であった。また、FIM平均点は、入院時総得点58.22点、退院時総得点87.77点、退院時の移動項目平均点は、歩行6.00点(6名)車いす5.5点(14名)、階段昇降3.6点(19名)であった。満足度評価の算出方法は、福祉用具、サービス共に無効回答の項目以外の得点を加算して、有効回答数で除したものとした。そして、これら2つの合計を総合点とした。総合点平均13.4点であった。内訳として福祉用具平均3.4点、サービス平均3.4点であった。さらに、装具処方における不満足の要因となる項目を検討するために、総合点により、高満足群(n=10平均17.2点)と低満足群(n=9平均9.2点)で2群化(中央値13.7)し比較した。その結果、福祉用具特性では、「重さ」「調節しやすさ」「使い心地」サービスについては、「修理とメンテナンス」「専門家の指導・助言」「アフターサービス」の項目で差がみられ、高満足群が低満足群に比べ優位に得点が高かった(Mann-WhitneyのU検定p<0.05)。使用状況調査の各項目に関しても、高満足群、低満足群間で比較した結果、有意差はみられなかったものの、「使用頻度」「修理の必要性」の2項目で、高満足群が低満足群より使用頻度が高く、修理の必要性も高い傾向がみられた。自宅退院後の転倒者数は10名(52.6%)おり、「使用頻度」ではいつも使用者9名(47.3%)、時々使用している者7名(36.8%)、使用していない者3名(17.7%)であった。「修理の必要性」の有無では、あり12名(63.1%)なし6名(31.5%)であった。<BR><BR>【考察】<BR> 今回の研究では、福祉用具満足度評価に基づいて、不満足の要因を検討し、さらに高満足群と低満足群の間で、使用状況調査にどのような違いがあるのか検討した。その結果、装具処方時に、退院後においても高い満足度を得る装具を処方するには、福祉用具特性では「大きさ」「調節しやすさ」「使い心地」に配慮し、サービス面では「修理とメンテナンス」「専門家の指導・助言」「アフターサービス」に配慮する必要がある。使用状況調査において低満足群では、使用頻度が低い傾向がみられたことから、「重さ」「調節しやすさ」「使い心地」への不満が示唆された。<BR>修理の必要性ありと回答した方の方が、より満足している傾向から、定期的なフォローアップがなされる装具処方に満足していると考察する。<BR><BR><BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>満足できる装具処方をするための着目点が示された。「使われる装具」を処方するためには我々が伝えねばならないものは、機能面に限られないことが本調査から示唆された。今後も家族や利用サービスなどの視点も含め、追跡調査として継続・発展させていきたいと思う。