著者
本勝 千歳
出版者
宮崎大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究ではヒュウガナツ枝変わり系統である'西内小夏'の生殖特性を明らかにするために受粉試験、果実の形質調査、胚珠および種子成長の組織観察を行った。まず、普通系ヒュウガナツ(普通系)、'西内小夏'、ハッサク、スイートスプリングを種子親として、'西内小夏'ならびに普通系、ハッサクの花粉をそれぞれ受粉し、結実率、果実成長を調査した。その結果、'西内小夏'を花粉親として使用した場合、全ての種子親について果実が得られた。一方、'西内小夏'×普通系は受粉後10週目までにすべて生理落果を起こした。ヒュウガナツの自家不和合性が雌ずい側と花粉側の複数の因子に関係していると仮定するならば、この普通系と'西内小夏'の正逆交雑の結果から、'西内小夏'は花粉側因子に何らかの異常が発生したと考えられた。また、収穫果の含有種子についてみると、各種子親における'西内小夏'花粉受粉果は、他の花粉受粉果と比較して完全種子数は有意に減少し、しいなの数は有意に多くなった。種子親が普通系および'西内小夏'の場合、'西内小夏'花粉を受粉して得られた果実内の種子はほとんどしいなとなったのに対して、種子親がハッサクおよびスイートスプリングでは正常種子としいなが果実中に混在して確認された。特に種子親がハッサクの場合は、一つの果実内に見られる正常種子としいなの割合が、果実毎によって異なっていた。次に普通系ヒュウガナツおよび'西内小夏'の果実発育中の種子を取り出して観察したところ、種子のしいな化は受粉後8週目〜12週目の間に起こっていた。胚発生の組織観察の結果、'西内小夏'受粉果において胚の初期成長が観察されたことから、'西内小夏'花粉受粉果でも受精がおこるものと推察された。しかし、受粉後8週目〜12週目にかけて胚の異常発達や胚の消失が確認され、このことが種子のしいな化に影響していると考えられた。
著者
本勝 千歳 稲田 真梨江 湯地 健一 戸敷 正浩 黒木 重文 神崎 真哉 鉄村 琢哉
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
Journal of the Japanese Society for Horticultural Science (ISSN:18823351)
巻号頁・発行日
vol.81, no.1, pp.27-34, 2012 (Released:2012-01-20)
参考文献数
38
被引用文献数
7 9

マンゴーはこれまで偶発実生からの優良系統の選抜によって品種が育成されてきたが,望ましい形質を持った個体同士の交雑による計画的な育種が今後行われる必要がある.しかしながら,マンゴーの花は 1 cm 以下で非常に小さく,また結実率も低いため,人工受粉による十分な数の交雑後代の獲得が困難であった.そこで,日本の独特なマンゴー栽培様式(閉鎖的な温室内での栽培,ミツバチ導入による自然交配)を利用して,‘アーウィン’と‘紅キーツ’の二品種を導入した温室内で,まずミツバチにより自然交配させた後,得られた実生を SSR マーカーによって花粉親を識別することによって,効率的に交雑後代が獲得できるのではないかと考え,その検証を行った.その結果,‘アーウィン’では 239 個体の実生が得られ,そのうち 185 個体で花粉親を判別することができ,他家受粉果は 106 個体,自家受粉果は 79 個体であった.‘紅キーツ’では 20 個体の実生が得られ,そのうち 14 個体で花粉親を判別することができ,他家受粉果は 12 個体,自家受粉果は 2 個体であった.‘アーウィン’実生で判別された花粉親の比について,温室内での両品種の花房数を期待比としてカイ二乗検定を行ったところ,積極的に他家受粉が起こっていることが示された.また‘アーウィン’について判別された花粉親に基づき,花粉親が果実形質に及ぼす影響について調査したところ,‘アーウィン’自家受粉果では Brix 値が有意に高くなったが,果皮色に関するいくつかの値で他家受粉果より低い値となった.
著者
鉄村 琢哉 本勝 千歳
出版者
宮崎大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

屈曲した培養根は多数の側根を形成するというシロイヌナズナで認められた知見をもとに、バーミキュライトを添加し、ゲルライトで固化した培地を根発達培地として使用することにより、カキ栽培品種およびマンゴー実生由来のミクロ挿し穂から発生した1次根に側根を形成させることに成功した。この根発達培地は発根能力の低いニホンナシ栽培品種やマンゴー実生由来のミクロ挿し穂の発根率を向上させた。シロイヌナズナの側根形成に関わる遺伝子解析のための変異系統の作出に成功した。
著者
本勝 千歳
出版者
宮崎大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

自家不和合性であるヒュウガナツの枝変わり系統'西内小夏'の自家和合化および種子のしいな化の発生機構の知見を得るために、花粉発芽率、花粉径測定、フローサイトメトリー分析を行った。その結果、'西内小夏'の花粉に通常の花粉よりも大きな巨大花粉が見られ、また'西内小夏'×'西内小夏'で得られた正常種子由来の実生は全て四倍体であった。これらの結果は、'西内小夏'が非還元花粉を形成していることを示唆しており、これが'西内小夏'の自家和合化,種子のしいな化に関与していると考えられた。