著者
朴木 佳緒留
出版者
一般社団法人 日本教育学会
雑誌
教育学研究 (ISSN:03873161)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.309-316, 1997-09-30 (Released:2007-12-27)

小論の目的はジェンダー・エクィティの視点から教育における価値多様化を考えることにある。ジェンダーは1960年代半ばから始まった第2波フェミニズムより生まれた概念であるが、今日では一般には、社会的、文化的につくられた性別と理解されている。日本は世界の中でも特にジェンダー・バイアスが激しい国である。例えば、男性は収入労働時間が長く、家事労働時間は短い。女性はパートタイムの仕事に就く人が多く、家事労働時間は長い。また、女子一般労働者の平均賃金は男子一般労働者の約60%であり、その格差は先進国中で最大である。ところが、多くの女性は低賃金と不安定雇用にもかかわらず、フルタイムよりもパートタイムの仕事を好む。その理由は「企業中心社会」(日本的経営)と性別役割分業をもとにした日本的な男女の愛情関係にあると思われる。また、ジェンダー・バイアスは家庭教育、学校教育を通して再生産される。したがって、ジェンダー・エクィティをめざす教育では、以下の3点が重要となる。1.女性の労働権をリアルに学ぶ 2.日本的な男女の愛情関係を見直す 3.親、教師、その他の大人たちがジェンダー・センシティブになる 確かに、今日の社会では女性の生活は多様化しているが、それは根強い性別役割分業体制のもとでの分化であり、必ずしも多様化とはいいがたいと考える。
著者
末本 誠 朴木 佳緒留 伊藤 篤 松岡 広路 津田 英二
出版者
神戸大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

<目的>本研究は、現代GPプログラムとして取り組んだ「アクションリサーチ型ESDの開発と推進」で得た成果(平成)19~21年度)を、日本国内外に普及、交流するための実践・研究的な方法の探求を課題にしている。<成果>(1)今年度は早稲田大学、東京農工大学等、日本国内でESDに取組む主要な大学を尋ね、ESD理解、カリキュラム、地域社会との関わり、ステークホルダーの役割などについての実地調査を行ったことにより、国内の主要な大学でのESDに関する具体的な取り組みの実態が把握された。また、神戸大学での取組みとの異同を議論することにより今後の実践研究的交流の基盤を構築することができた。(2)カナダモントリオール大学、同ケベック大学モントリオール校を尋ね、同上の点についての調査を行ったことにより、同上の成果を得たほか、国際的なESD研究を交流するための関係を構築した。(3)これらの調査活動で収集した資料を、データベース化した。これらは、その存在をweb上で公開し広く活用されるようにする予定である。(5)22年3月にフランスからライフヒストリーの研究者を招いて、ESDの国際シンポジウムを開催した。これにより価値観や生活態度を変えるというESDの課題に応える、具体的な教育方法論を開発する理論的な根拠を深めることができた。(6)神戸大学を会場として開かれた、平成22年9月の日本社会教育学会の研究大会において、「会場校企画」として「持続可能な社会作りと社会教育の再構成」をテーマにしたシンポジウムを開催した。これにより、大学でのESD実践・研究を社会教育の領域で展開する可能性が明らかにすることができた。